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再生可能エネルギーを地産地消している地域を訪れる「Audi Sustainable Future Tour」。
メディア向けのツアーとして5回目の開催となる今回の行先は、北海道北部だ。
稚内から旭川までの約300キロメートルのロングドライブを通じ、電気自動車の乗り心地を体感しながら、風力発電所や変電所などを巡った。
滑るような走りが印象的
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今回のロングドライブのお供は、アウディの電気自動車 e-tronシリーズだ。
私も数種類の車種に試乗したが、走行中の音や振動が少なく、滑るような走りが印象的だった。
EVというと充電が気になるもの。しかしツアー1日目に約300キロメートルを走った際も、充電が心配になるような場面は全くなかった。
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ツアー中には日本最北端のアウディ正規販売店である、Audi旭川店で急速充電を体験。設置されているのは「プレミアム チャージングアライアンス」という設備だ。
充電中のインストルメントパネルの様子
撮影:市川みさき
専用アプリを起動し、ハブを車に差し込むとチャージが進む。
今回乗車したQ8は、10パーセントから80パーセントまでの充電が、約30分で完了。これはツアー初日に走った約300キロメートルを走破できる電力に相当する。ドライブの休憩程度の時間でスピーディーに充電ができるのは驚きだった。
実際に、ツアー初日のドライブ中、一度も充電をせずに約300キロメートルを走り切っていた。
道北部は風力発電の“一大産地”
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今回訪れた北海道北部は日本海に面し、強い風が吹く広大な土地が広がり、再生可能エネルギーの一つである風力発電に適した土地だ。
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e-tronで北海道の地を駆け抜けていると、大自然の中に大きな風車が見えてくる。
北海道随一のドライビングルート「オロロンライン」のランドマークになっているのは、「オトンルイ風力発電所」だ。
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3キロメートルにわたり、28基もの風車が立ち並ぶ姿は、まさに圧巻。
高さがおよそ100メートルある風車のふもとに向かうと、ブレードが風を切る音が響く。
観光客が多く集まる名スポットだが、来年には風車建て替えの予定があり、この風景を見ることができる時間は、残念ながら残りわずかだ。
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日本海側から1年中吹き付ける風により、風車は年間5000万キロワットを発電する。これは、一般家庭が1年間で消費する電力の1万2000世帯分に相当する量だ。
石油火力発電所との比較では、年間約70万トンものCO2排出削減効果があるという。
道北の風にはこれだけの電力を生むポテンシャルがありながら、北海道には電気を運ぶための送電・系統設備や、発電した電気を貯めておくための蓄電設備が不足しており、そのポテンシャルを最大限活用できていない現状がある。
北海道の風力発電量は全国トップ3に
北豊富変電所の全景
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風力発電のポテンシャルを最大限に活かすために、北海道は民間事業者と手を組んで、2013年に送電線の整備に着手した。
さらに2023年には、日本最大・世界トップクラスの蓄電池システムを有する「北豊富変電所」の稼働がスタート。それに伴い、風力発電所の建設ラッシュが起きている
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今回のツアーでは、普段立ち入りができない「北豊富変電所」の敷地内を見学。
蓄電池の設置面積は東京ドーム2個分と広大。展望台から眺める全景に圧倒された。
残念ながら変電所内部の写真は公開できないが、内部のシステムが、風力発電された電気を調整し、出力を安定させる働きをしている。蓄電量はe-tron8000台分に相当するというから驚きだ。
変電所職員によれば、電力の安定供給のためには設備を整えるのみならず、「電力を使う側の需要を高めることも大切」ということだった。
この変電所の稼働開始により、北海道の風力発電量は、以後3年で全国トップ3に躍り出る見込みだ。
本州への送電が鍵
未来共創ミーティングは「CoCoDe旭川」で開催された
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ツアー2日目には、産学で北海道の再生可能エネルギーの現状と未来を語り合う「未来共創ミーティング」が開催された。
ミーティングには、北海道で日本初の市民出資型の風力発電事業を行っている鈴木亨氏、北星学園大学 経済学部の専任講師である藤井康平氏、また藤井氏の教え子である大学生・大学院生が登壇した。
会の冒頭では、アウディ ジャパン ブランド ディレクターのマティアス シェーパース氏が、2050年までに全社をあげてカーボンニュートラルを達成する「Mission:Zero(ミッションゼロ)」のビジョンを伝え、再生エネルギーが果たす役割の重要性について述べた。
北海道で地域活性化につながる再生可能エネルギーの導入支援を行う鈴木亨氏
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北海道の再生可能エネルギーとサステナブルな取り組みをテーマにしたパネルディスカッションでは、鈴木氏より北海道の風力発電のポテンシャルの高さと現状の問題点が述べられた。
北海道北部には潤沢な風資源があり、電力を作ることができるものの、道内の人口は決して多くなく、電力消費量も多くない。現状のままだと供給量が過剰になり、需要との均衡が保てなくなることが予想されるという。
「今後は、送電線の容量を上げ、人口が多く必要とする電力も大きい本州に送電をすることが、風力発電をより活用するためのカギ」と鈴木氏は語った。
アウディ ジャパン ブランド ディレクター・マティアス シェーパース氏
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それに対し、シェーパース氏は「再生可能エネルギーというと、作り出す量が少ないことが問題だと捉えられてきた。しかし、現実は逆。需要と供給のバランスをとるためにも、エネルギーの地産地消の取り組みを、より伸ばしていけたらと思う。その一環として、EVの普及が進むことを願う」と述べた。
実は北海道のEV導入率は、全国最下位。
寒さに弱いといわれるEVは、冬の北海道の寒冷な気候との相性があまりよくないと思われていることが、導入が進まない理由の一つと考えられている。
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学生からは「政策として、EVの普及を進めるのが良いのではないか」という意見も。
シェーパース氏は「ノルウェーのような寒冷な地域でも、実はEVは普及している。この例を踏まえると北海道でもEVが普及する可能性は大いにある。より多く利用してもらうためには、チャージャーへのアクセスなどを整えることが急務」と述べた。
また「屋久島には無料のチャージ施設が多く設置されている。同様のことが北海道でも出来たら、エネルギーの地産地消が進むだろう」と語った。