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Aleo創設者が語る「プライベートスマートコントラクト」の将来性と日本市場への期待|CoinPostインタビュー

画像はShutterstockのライセンス許諾により使用

プライバシー保護とコンプライアンスを両立する革新的ブロックチェーンプラットフォーム「Aleo」。その創設者であるハワード・ウー(Howard Wu)氏に、ゼロ知識証明技術の可能性と未来について聞いた。

「Aleoの最大の利点は、ゼロ知識証明技術を用いてプライベートスマートコントラクトをサポートした最初のブロックチェーンであることだ」──創設者ウー氏はそう語り、既存のプライバシーチェーンにはない新たな可能性を強調した。

自己紹介

ハワード・ウー(Howard Wu)
Aleoの創設者

ハワード・ウー(Howard Wu)はAleoの創設者。Aleoはデフォルトでプライベートなパーミッションレス・ブロックチェーンである。

ハワードは暗号学者としての訓練を受けており、検証可能計算、コンピューターセキュリティ、プライバシー保護技術を研究分野としている。ハワードは新型コロナウイルス感染症のパンデミックの開始時にAleoを設立した。その使命は、開発者にとって直感的で高性能、かつコンプライアンスに対応したプライベート・スマートコントラクトを実現することである。ハワードはプライベート決済に情熱を注いでおり、インターネット通貨のUI/UXの改善を目指している。

Aleoとは何か、既存のプライバシーチェーンとの違い

──まず、Aleoについて簡単に教えてください。

Aleoはゼロ知識証明を使用してコンプライアンス機能付きのプライベートアプリケーションを可能にするレイヤー1ブロックチェーンです。

──他のプライバシーチェーンとは根本的にどう違うのでしょうか?

Aleoの主要な利点は、ZK(Zero-Knowledge Proof/ゼロ知識証明)を使用してプライベートスマートコントラクトをサポートする最初のブロックチェーンであることです。

ブロックチェーンは「プログラマビリティ」と「プライバシー」の2つの軸で評価できます。ビットコインは両方とも低く、イーサリアムは高プログラマビリティを実現し、ジーキャッシュ(Zcash)やモネロ(Monero)は高プライバシーを提供しました。

しかし、これまで高プログラマビリティと高プライバシーの両方を兼ね備えたチェーンは欠けていました。第一世代のプライバシーコインは、資産自体しか持たず、ステーブルコインの発行機能や汎用コンプライアンス規則定義ができません。

Aleoの大きな利点は、このチェーン上でカスタム資産を発行できる点にあります。そしてプライバシーを備えているため、ある程度のコンプライアンスが必須となります。さらに管轄ごとにコンプライアンスの扱いは異なります。例えば、日本の金融庁(JFSA)、米国のSEC、ドバイのVAR、シンガポールのMAS、香港のHKMAといった規制当局では、それぞれ異なる基準を設けています。そのため「一律で通用する解決策」は存在しません。

しかし、ジーキャッシュやモネロのような設計は実質的に「ワンサイズフィッツオール」でした。これに対してAleoは、開発者がカスタムルールを定義できる仕組みを提供している点が大きな強みです。

ゼロ知識証明技術

──ZKについて、一般の方にもわかりやすく説明していただけますか?

「ウォーリーを探せ」という世界的に人気の絵本を例に説明しましょう。いろんな格好や服装の人でいっぱいの地図から1人のウォーリーを見つけるゲームです。

ゼロ知識証明とは、「地図上でウォーリーを見つけたことを証明したいが、どこに居るかは秘密にしたい」という状況です。地図より大きな紙に穴を開け、ウォーリーの上に穴がくるように配置すれば、相手はウォーリーを確認できますが、位置はわかりません。

これと同じように、ブロックチェーン上で「お金を送った」ことを証明しながら、送金者、受取人、金額を秘匿できます。さらに、新しいお金を勝手に作っていない、お金を破壊していない、コンプライアンスに従っていることも数学的に証明できるのです。

──3〜5年後のZK技術の普及をどう予測していますか?

ZK技術の活用は今後3〜5年で急速に広がると見込まれています。技術そのものはまだ若い段階にありますが、ゼロ知識証明の生成速度は2〜3年ごとに倍増しており、年々大きく進化しています。

おそらく3〜5年後には、ほとんどの人がスマートフォンでタップすると同時にKYC(身元証明)が済むようになるでしょう。

プライベートステーブルコインの必要性

──ステーブルコインとプライバシー技術の関係について教えてください。

現在、誰もがステーブルコインについて語っていますが、「プライベートステーブルコイン」について語る人はいません。

現状では、ステーブルコイン取引の99%が完全に透明であり、金額や送信者、受取人まですべてが見えてしまいます。コーヒーショップでの支払いなら、バリスタが私のアドレスを知り、金融履歴のすべてを把握できてしまいます。逆に店舗側も、顧客に月次収益を知られてしまい、競合情報の観点から大きな問題になります。

過去1年間で各地域の数百の金融機関と話しましたが、すべて「プライバシーとコンプライアンスがなければWeb3決済を導入できない」と述べています。 こうした課題を踏まえ、私は大胆な予測をしています。2030年までに、全ステーブルコイン決済の99%がエンドツーエンド暗号化されるでしょう。

これは、インターネットセキュリティの大幅向上につながった「HTTP」から「HTTPS」への移行と同じような根本的変化です。20年前、ウェブ上の全てが透明で、消費者はクレジットカード情報の入力を躊躇していました。HTTPSがeコマースの大きなブレークスルーとなったように、プライバシー技術の発展はWeb3の重要な転換点になるでしょう。

プライバシー技術への誤解

──プライバシーチェーンは違法行為に使われるという懸念についてはいかがですか?

ZKは実際にコンプライアンスと説明責任の大きな推進力になると強く信じています。

新しい技術には善良な行為者と悪意のある行為者がいます。初期インターネットでは、Napsterがシステムを回避して無料で音楽を配布したのに対し、Spotifyは音楽業界と統合して有料モデルを採用しました。結果、どちらが生き残ったかは明らかです──Spotifyは持続的な価値を生み出しました。

同様にトルネード・キャッシュ(Tornado Cash、仮想通貨取引を匿名化するミキシングサービス)とAleoでは、前者がZKを犯罪者の資金洗浄に使われる一方、Aleoは金融機関と統合して実際のビジネスが安全かつプライベートに取引できるようにしています。

これは、人々がこの技術をどう捉えるかという二分法を示しています。新しい技術を善に使うのか悪に使うのかという点が重要であり、私たちが取っているアプローチこそが時の試練に耐えるものだと確信しています。

規制当局との積極的な協力

──規制当局との協力はAleoにとって重要ですか?

Aleoを構築する際に政策立案者や規制当局を教育することが極めて重要だと考えています。

例えば、現在、英米を中心にウェブサイトでの年齢確認が厳格化され、多くの州や国では運転免許証の写真など過剰な個人情報の提出が求められています。 しかし、実際に必要なのは「18歳以上かどうか」だけです。こうした仕組みは巨大な個人情報データベースを生み出し、ハッキングによる流出リスクというハニーポット問題を抱えています。

ゼロ知識証明を使えば、ユーザーは免許証などの情報を自分のデバイス上に保持したまま、「18歳以上である」「制裁対象国の出身ではない」「米国市民である」といった必要条件だけを証明できます。

既存の仕組みよりも高い説明責任とコンプライアンスを可能にするものであり、規制当局はまだこの可能性を十分理解していません。我々は規制当局への教育を通じて、この技術がもたらす利点を広く伝えようとしています。

実際に、ワシントンの規制当局からは「あなたたちがZKとプライバシーのプレイブックを書いている」とのフィードバックを受けています。

トルネード・キャッシュのようにシステムを回避するアプローチではなく、金融機関と当局と統合するアプローチを取るなら、全ての主要ステークホルダーを議論に巻き込む正しい方法で行うことが重要です。

現在、技術は進歩していますが、法律は旧来のままで大きなギャップがあります。例えば、KYCでは新しい技術により全情報を収集せずに身元確認できるようになったのに、法律は依然として全情報収集を要求しています。立法者に法律を現実に合わせて更新してもらう必要があります。

Aleoが注力する三つの分野

──現在、Aleoが特に注力している領域について教えてください。

Aleoが今年注力しているのは、大きく三つの分野です。第一にウォレットです。Aleoは昨年9月にローンチした新しいチェーンであり、ユーザーが異なるブロックチェーン環境でも容易に利用できるよう、より多くのウォレットとの統合が必要です。

第二にステーブルコインです。特に「プライベートステーブルコイン」とプライベート決済に焦点を当てています。これは従来ほとんど議論されてこなかった新しい概念であり、私たちは8月28日に米国大手発行者Paxosの「グローバルドルネットワーク」に参加することを発表しました。ロビンフッドやクラーケンをはじめとする暗号資産・非暗号資産双方の金融機関と並び、プライバシー保護型のレイヤー1として初めての参加となります。

第三にブリッジです。Ethereum、Solana、Base、Polygonといった既存のチェーンはいずれもプライバシーをサポートしていません。そのため、資産をシールドしたい場合にはAleoのようなチェーンが必要です。私たちは競合ではなく補完的な存在であり、他のチェーンが持たない機能を提供しているのです。

実用事例

──すでにAleoを活用した具体的な事例にはどのようなものがありますか。

Aleoはすでに複数の実用例を持っています。直近ではネオバンクのRevolutやRequest Financeと統合し、給与支払い(Payroll)など具体的な場面での活用が始まっています。従業員がステーブルコインで賃金を受け取る場合、従来のチェーンではブロックエクスプローラーを通じて同僚や上司の給与やボーナスまで確認できてしまい、企業にとって大きなリスクとなります。

さらに、Aleoは3秒ごとにブロックを生成し、日常の決済で即時精算を可能にしています。10分以上の承認を必要とするビットコインとは対照的であり、価格変動の激しさにも左右されません。これにより、安定した資産をエンドツーエンドで暗号化して利用でき、従来のZcashやMoneroが実現できなかったプライベートステーブルコインの発行も可能になっています。

また、Aleoはすでに100種類以上の資産をサポートしています。EthereumやUSDCに加え、BitcoinやSolanaなど主要資産も「機密資産」として扱えるようになる見込みで、現在はHyperlaneといったブリッジとの連携も進んでいます。これにより、既存のチェーン資産をAleo上でより高速かつプライベートに利用できる環境が整いつつあります。

日本市場での展開と期待

──日本での活動について聞かせてください。

財団の人間が日系ということもあり、実際に日本・金融庁とこのトピックについて会話を行っています。今年3月に開催された金融庁主催の「Japan FinTech Week」では各国の政策立案者と会議の機会を持ちました。

そこで学んだのは、ゼロ知識証明についての教育や認識が不足していることです。ZK初心者向けガイドのような教育資料の作成を検討しており、この技術が何を可能にするかを理解してもらいたいと考えています。

──日本市場への期待を聞かせてください。

日本は新技術採用の最前線にいる主要市場の一つで、プライバシーを真に理解している市場です。これはAPACの多くの地域で常にそうとは限りません。

2つの分野で大きな機会を見ています。1つ目はステーブルコインです。JPYCがあり、日本銀行もステーブルコイン発行を検討する議論があります。中央銀行発行の新しいステーブルコインにプライバシー概念がないのは考えられません。

2つ目は資本形成です。日本は常に資本形成のハブで、新しいアイデアへの強い推進力があります。RWA(現実世界資産)が市場を捉える機会が大きく、実際の金融機関が前向きな思考を受け入れるには、銀行レベルのプライバシーを含むコンプライアンスが必要です。これは既存のブロックチェーンでは不可能ですが、Aleoなら実現できます。

米国における戦略の意味

──多くのWeb3プロジェクトがオフショアで設立される中、なぜ米国での設立にこだわったのですか?

財団と研究所の両方が米国事業体で、私と初期チームは全て米国市民です。Aleoの研究は国立科学財団(NSF)の助成金でも一部資金提供されました。

バイデン前政権時代、SECが暗号資産プロジェクトに敵対的だった頃にこの決定を下し、多くの人に「クレイジーだ」と言われました。しかし現在、米国は暗号資産に極めて好意的なトランプ政権へと代わり、私たちは政策立案者が指摘する主要例の一つになっています。

米国のルーツにより、上院議員や議員との対話の扉が開かれました。彼らは米国の自国技術育成に関心があるのです。

そして、先日成立したジーニアス法案やクラリティ法案のような法案により、例え次の政権が変わっても暗号資産への姿勢を大きく変更することは困難になっています。

創業の哲学:完璧を求めての再出発

──過去にAleoをゼロから再スタートしたと聞きましたが、その判断について教えてください。

「Japan FinTech Week」でも説明しましたが、これは創設者として学んだ大事な教訓です。何かが十分良くないと感じた時、妥協せずに自分の信念に従って技術を再構築することが重要です。

チームは「既存のソリューションを捨ててゼロからやり直すなんて信じられない」と言われましたが、振り返ると正しい決定でした。現在、多くのプロトコルが私が3〜5年前に犯した過ちと同じようなことに遭遇しており、それらを克服する唯一の方法は思い切って再スタートすることです。

妥協せずに正しい設計を追い求めたことが、競合他社との真の差別化要因になっています。

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