帰宅部
帰宅部(きたくぶ)とは、クラブ活動(部活動)が強制されていない学校で、どの部活動にも所属していない児童・生徒を意味する俗語[1]。
概要
[編集]放課後の部活動が「強制」でなく「任意」とされている学校で、どの部にも所属せず、放課後に部活動をせずに帰宅するため、「帰宅部」と呼称される[1]。
何らかの部に所属しない理由として、
- アルバイトをするため[2][3][4]。
- 塾や予備校に通うため[2][3][5]。
- 学業に専念するため。
- 学校外での活動に参加するため[4]。
- 希望する部活動が学校にないため[5]。
- 校外のスポーツクラブ、クラブチームで活動したいため[5][6]。
- 家庭の事情[7]を優先するため。
- 様々な理由により、部活動をする意欲を喪失したため。
- 部活動に興味・関心が無いため。
などが挙げられる。
部活動に参加しないことで自由時間が増えることから、過剰な教育志向からの塾通いや[5][8]、生徒が非行に走ることを懸念する意見が出ているが、非部活参加者の非行や過度の教育問題との具体的な関連性は示されておらず、主観的意見に留まっている。そのような理由から、ほとんどの中学・高校で帰宅部を一切認めず、校則で何かしらの部活への参加を強制している(ブラック部活)。
また、少子化による生徒数の減少や[4][6]、生徒の意識の変化[6]、指導する教師の忙しさや指導者不足[6]が背景にあるとする報道もある。教員からは帰宅部の増加を歓迎する声もある[9]。
中学校では約7割の生徒が何らかの部活動に参加して[10][11](受験期の中3を除外すると約9割[11])いるが、この部活動の参加が校則で「強制」されているため不本意で参加しているのか、生徒自身の「希望」で参加しているのか内訳が明示されていない。
「帰宅部」にはそれに参加しない者という揶揄あるいは自嘲の意味合いもあるとされる[12]。1989年(平成元年)の学習指導要領改訂以降、部活動がカリキュラム内に組み込まれたため、ほぼ「必修」に近い形となっており[13]、多くの学校で部活動加入が強制となっている実情があるとされている[12]。一方で、2021年のスポーツ庁「全国体力・運動能力、運動習慣等調査」によれば、何らかの部活に所属していない生徒の割合は、中学2年生男子が16.5%、中学2年生女子で12.6%にのぼる[14]。ただし、部活動に所属していない男子の5割程度、女子の2割程度は、地域のスポーツクラブに所属している[9]。
「帰宅部」という言葉は1980年代後半から使用例が見られ[8][15]、読売新聞の解説記事では1986年(昭和61年)における流行語の一つとして「帰宅部」を挙げている[8]。また、1996年(平成8年)の産経新聞の記事では「『帰宅部』は死語になった」とも報じられている[16]。
学園漫画やドラマなどのフィクション作品では、中学・高校の部活動が強制でない場合もあるため、「帰宅部」が題材として用いられることもある(→#使用例)。
使用例
[編集]小説
[編集]- 『帰宅部ボーイズ』(はらだみずき)
- 『帰宅部のエースくん。』(ハセガワケイスケ)
- 『帰宅部!GO HOME』(川嶋一洋)
- 『この部室は帰宅しない部が占拠しました。』(おかざき登)[注 1]
- 『ミカグラ学園組曲』(Last Note.)
漫画
[編集]ゲーム・アニメ
[編集]脚注
[編集]注釈
[編集]出典
[編集]- ^ a b "帰宅部(キタクブ)". デジタル大辞泉/大辞林第3版(コトバンク). 小学館/三省堂(朝日新聞社). 2015年4月30日閲覧。
- ^ a b “目耳録 若者気質” (日本語). 中日新聞(夕刊、社会面) (中日新聞社): p. 11. (1992年4月14日) - G-Searchにて2015年4月30日閲覧。
- ^ a b “高校生活 様変わり(2の1)*かつては野球 今ではサッカーにスノーボード*熱血指導なお健在*簿記、ワープロは激減(道北ワイド)” (日本語). 北海道新聞(朝刊地方、旭B) (北海道新聞社): p. 21. (2002年4月13日) - G-Searchにて2015年4月30日閲覧。
- ^ a b c “いきいき学習NIE 高校生の部活動 "帰宅部"員増加 生徒数の減少 "球児の夏"を横目に 坂井農業高では部員集めに懸命 部員不足 運動部の微減つづく県内 全国平均を上回る 部活動加入率” (日本語). 中日新聞(朝刊、福井総合版) (中日新聞社): p. 21. (1997年7月19日) - G-Searchにて2015年4月30日閲覧。
- ^ a b c d “断面/中学の部活、自由参加に/新要領前倒し、仙台でも導入増加/延びる放課後、親は心配/"帰宅部"わずか、学校安堵” (日本語). 河北新報 (河北新報社): p. ページ数不明. (2000年5月25日) - G-Searchにて2015年4月30日閲覧。
- ^ a b c d “EYE/揺れる中学部活動(下)/指導教員不足、自主性尊重/地域クラブ、サークル広がる脱「部」の動き/生徒の気持ち複雑” (日本語). 河北新報 (河北新報社): p. ページ数不明. (2005年5月1日) - G-Searchにて2015年4月30日閲覧。
- ^ 経済的な負担、家族に傷病者が居る、など。
- ^ a b c 吉川正義 (1986年12月31日). “流行語でつづる「'86プッツン回顧」(解説)” (日本語). 読売新聞(東京朝刊) (読売新聞社): p. 9 - G-Searchにて2015年4月30日閲覧。
- ^ a b “令和の部活事情「帰宅部が1番人気って本当?」「部活でサッカーやるのはカッコ悪い」イマドキ中学生の本音(沼澤典史)”. Number Web - ナンバー. 2022年11月25日閲覧。
- ^ “運動部活動の在り方に関する調査研究報告(中学生・高校生のスポーツ活動に関する調査研究協力者会議)” (日本語). 審議会情報. 文部科学省 (1997年12月). 2018年4月4日閲覧。
- ^ a b “3.小・中・高校生の特徴的な生活時間 (3)部活動の時間” (日本語). 第1回 放課後の生活時間調査-子どもたちの時間の使い方[意識と実態]. ベネッセ教育総合研究所. p. 14 (2008年). 2018年4月4日閲覧。
- ^ a b 武田砂鉄 (2017年8月28日). “「帰宅部は堂々と帰宅すればいい」ことを教えてくれる一冊” (日本語). 現代ビジネス. 講談社. 2018年4月4日閲覧。
- ^ 大塚玲子 (2015年9月22日). “なぜ中高の「部活動」は"強制"になったのか? 子どもたちも先生も疲弊している!” (日本語). 東洋経済オンライン. 東洋経済新報社. 2017年3月12日閲覧。
- ^ “<くらしの中から考える>部活動:東京新聞 TOKYO Web”. 東京新聞 TOKYO Web. 2022年11月25日閲覧。
- ^ 山岸駿介 (1986年9月11日). “高校新聞様変わり 「怒り」古びて「優しさ」 「反戦」は健在” (日本語). 朝日新聞(東京夕刊、らうんじ) (朝日新聞社): p. 3 - G-Searchにて2015年4月30日閲覧。
- ^ “日刊じゅく〜る 338号 様変わりする中・高部活事情” (日本語). 産経新聞(東京夕刊、塾2面) (産業経済新聞社): p. 6. (1996年8月20日) - G-Searchにて2015年4月30日閲覧。