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【書籍化・コミカライズ2巻4/16発売】ハズレ姫は意外と愛されている?  作者: gacchi(がっち)


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「なんであんたがこんなところにいるのよ!

 字も読めないくせに生意気なのよ!」


「…なんで?」


「何よ。言い返す気?」


「…なんでイライザがここにいるの?」


本を取り上げられたことよりも、イライザが王宮にいることに驚いた。

転がされた床から立ち上がると、すぐにつき飛ばされる。

後ろ向きに転んだせいでお尻を強く打った。

あまりの痛みに涙が出そうになる。


「は?私がここにいる理由?そんなのいらないわよ。

 私はちゃんとお祖父様に愛されている姫なの。

 ここは全部私のものになるんだから!」


甲高い声でイライザが叫ぶけれど、その内容には首をかしげたくなる。

王位継承権はないってお祖父様にはっきり言われたというのに、

まだあきらめていなかったようだ。

叔父様が継ぐことも無いのに、ましてや公爵令嬢のイライザが継ぐわけがない。


でも、そういえば使用人たちが噂していた。

お父様の養女にして、イライザが女王になるって。

…私がダメだったとしても、第二王子である叔父様の息子がいるというのに。

どう考えてもイライザが継ぐというのは無理だとしか思えない。


「イライザは王族じゃないわ。無理よ。」


「そんなのどうでもいいのよ!」


「だって、王族じゃないってお祖父様に言われてたのに。

 どうして自分のものになるなんて思ってるの?」


再度言い返したのが気に入らないのか、今度は座っていた状態から蹴り倒された。

イライザの靴は硬くて、蹴られたふとももがひどく痛む。

床に倒れたまま起き上がれないでいると、イライザ以外の声がした。



「あらあら。みっともないわねぇ。

 こんなできそこないのハズレが王女だなんて、ありないわ。

 ねぇ、イライザ様?」


「ええ、ありえないわ。私が王族じゃないのに、こんなハズレが王族だなんて。

 早くこいつをどうにかしてよ!」


「大丈夫です。そんなに心配なさらないで?

 陛下だってすぐにイライザ様のほうが優秀だとわかります。

 こーんなハズレ姫なんてどうでもよいでしょうから。」


この嫌味な口調はと思って顔を上げたら、やはり女官長だった。

ぽっちゃりとした身体をゆらして、こちらへ向かってくる。

使用人から報告を受けて図書室へ来たということなのだろうけど、

イライザと一緒にいるのは偶然なのだろうか。


女官長が来てくれたらいいと思っていたが、イライザまで来るとは思わなかった。

だけど、これなら叔父様の指示で私を虐げていたことの証言もとれるかもしれない。


二人ともちょうどよく罠にかかったとは思ったが、

あまりの痛さに起き上がるのは無理そうだった。

床に転がったまま女官長をにらみつけてみたが、あまり効果は無さそうだ。

ツンとした表情のまま見下ろされている。


「…女官長、あなたそんなことを言っていいと思っているの?

 私は王女なのよ?王女にこんなことしてただで済むと思っているの?

 イライザの暴力を見ていて止めないの?」


「あら。王女様なら王女様らしくしたらどうなのかしら。

 そんな風にみじめに床に這いつくばって、みっともない。

 どうせ、あなたなんてすぐにいらなくなるのよ。

 選ばれるのはイライザ様なのですから。」


「王女である私よりも公爵令嬢のイライザを選ぶの?

 女官長も処罰されてもいいというのね?」


最後の確認、と思って告げたら、大笑いで返される。


「あなたの証言なんて誰も聞かないわ。

 私は女官長として陛下の信頼を勝ち取っているのだから。

 

 それに、何があったとしても公爵様がうまくごまかしてくれるわ。

 今までだってこの王宮は公爵様が動かしてきたのだから。 

 ハズレ王女が死んだところで事故で終わるの。

 ほらほら。みっともなく命乞いしたらどう?」


これだけ証拠を取れたなら、もういいだろう。

いい加減、痛みで意識を保つのも難しくなってきた。

女官長が私の身体を踏みつけようと足をあげたのがわかった。

イライザでもこれだけ痛かったのに、女官長に踏まれたら折れるかもしれない。


もうこれ以上は無理だと思い、かすれた声で助けを呼んだ。



「…監視人さん、助けて……。」


その言葉で天井や図書室の奥から人が流れ込んできた。

数人はそのまま女官長とイライザに向かって行く。

急に現れた者たちに驚いた二人は、

慌てて逃げるように図書室の外に出ようとしたが取り押さえられる。


図書室の奥から現れたうちの一人、覚えのある魔力が私に近づいてくる。

転がったまま動けない私のところに跪いたと思ったら、

優しく包むように抱き上げてくれる。


「姫…もう、大丈夫ですよ。」


予想していたよりも若く、少年のような声がした。

…過保護な監視人さん、ちゃんと私を助けてくれた…そう思いながら、気を失った。



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