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【書籍化・コミカライズ2巻4/16発売】ハズレ姫は意外と愛されている?  作者: gacchi(がっち)


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「ソフィア様、今日は昼すぎに侍女見習いが挨拶に来る予定です。」


「新しい侍女見習い?」


「はい。」



私はリサとユナがいてくれればいいんだけど、

王太子の仕事もしている私の侍女が二人だけというのは、どう考えても少なすぎる。

リサとユナが有能だから今まで何とかなってきたのだろうけど、

さすがに学園に入るようになると手が足りなくなるのかもしれない。


侍女見習いか…最初から敵意が無い人だといいな。

本宮でも東宮でも、何度か会っていれば敵意は無くなっていくのだけれど、

最初にハズレ姫かっていう蔑みを隠すように顔を作られるのが、

何度経験しても嫌な気持ちになる。


そこまでして無理に私のお世話をしなくてもいいよって思ってしまって、

専属侍女を増やすことなく過ごしてきた。

ため息をつくとカイルとクリスが心配するから、それ以上は考えるのをやめた。

まずは会ってみて判断しよう。




昼過ぎになって、紹介された侍女見習いを見て、一瞬動きが止まる。

柔らかそうな栗色の髪に琥珀色の目。見慣れた色…。



「リサ、ユナ、この子は身内?」


「そうです。姪のルリです。ルリ、自分で挨拶しなさい。」


「はい!ルリ・クレメントです。

 ソフィア様と一緒に学園に通い、侍女見習いとしてつくことになります。」


「一緒に学園に?」


「はい!」


元気よく答え、にっこり笑う顔はリサとユナにそっくりだ。

もっとも年齢が違うので間違えるようなことはないけれど、

母娘だと言われても納得するくらい似ている。


「クレメント一族はクレメント侯爵とクレメント伯爵がいるのよね?

 ルリはどちらの家の子?」


「ルリは弟のクレメント伯爵の娘です。」


そういえばクレメント侯爵とクレメント伯爵は四兄弟だった。

リサとユナはクレメント兄弟の真ん中の双子の姉妹だ。

クレメント一族は領地なしの貴族で、

王宮に仕えるために爵位を持っていると言ってもいい。

透き通るような琥珀色の目が一族の色なのだが、

この国の民は茶色であることが多い。

それほど目立たない差ではあるが、お日様のような色でとても綺麗だと思う。


リサとユナの母はお祖父様付きの侍女だが、お父様たち三兄弟の乳母でもある。

その息子であるクレメント兄弟も文官としてお祖父様の下で働いているはずだ。

ルリが私の学友として選ばれるのもわかる。


「学園に護衛騎士は連れていけますが、私たちがついていくのは難しく、

 学生であるルリであれば授業中もお側にいることができます。

 今は見習いですが、卒業後はそのまま専属侍女として雇う予定です。」


「そっか。学園にリサとユナを連れて行くわけにはいかないんだね。

 わかった。ルリ、学園ではよろしくね?」


「かしこまりました。」


にっこり笑ってお辞儀するルリに嫌悪感は見えない。

少なくともハズレ姫だと思われていることは無さそうでほっとする。


もっとも、リサとユナの身内であればしっかりと教育されているはずだ。

カイルとクリスは護衛としてついてくるだろうけど、

教室内で一緒に授業を受けることはできない。

今まで他の貴族と関わっていないため、一人でいることになると思っていたけれど、

ルリが一緒にいてくれるのであればその心配も無くなった。



初日、カイルとクリス、そしてルリを一緒の馬車に乗せて学園に向かう。

今日は午前中の授業だけで終わる予定だ。

緊張して馬車から降りると、あちこちから視線を感じる。


銀髪は日に当たるときらめいて目立ってしまう。

王女だということがわからなくても、高位貴族なのはわかる。


…嫌な感じがする。

目をそらされた後、ちらちらとこちらを窺う視線。

どう考えても歓迎されていない。


ため息をつきそうになったら、クリスの舌打ちが聞こえた。


「…クリス。」


「失礼しました、予想しておくべきだったと反省を。」


「いいわ。」


予想しておくべきだったとは、この状況をだろうか。

まぁ、ハズレ姫の評判はかなり広まっているだろうし、

学生たちがそれを信じていてもおかしくない。

ルリがいるから孤独になることも無いし、

特別に他の令嬢と交流が必要だというわけでもない。


気持ちを切り替えて教室へと向かう。

ルリの案内で教室に入ると、中には木の机と椅子が綺麗に置かれている。

三人ずつ横並びにされ、それが四列。この教室は十二人のようだ。


「入学前の試験の結果で、成績順に教室は分けられています。

 このA教室は十二人、B教室とC教室は十五人です。

 ソフィア様は次席でしたので、この席になります。」


ルリに示された席に座ると、すぐ右隣にルリが座る。

ん?と思って見たら、ルリはいたずらが成功したような顔で笑う。


「頑張って三席を勝ち取りました!

 リサ姉様とユナ姉様が優秀なソフィア様につくのであれば、

 成績上位でなければならないと言うものですから…。」


「そんなこと言ってたの?まぁ、確かに教室が違ったら大変よね?」


違う教室から休み時間ごとお世話しに来るのはさすがに大変だろうと思う。

それでも、伯爵令嬢のルリが、

令息たちを押しのけて三席を取るというのは並大抵のことでは無い。

リサとユナも優秀だからルリも優秀なんだろうとは思ってはいたが、

ここまでとは思っていなかった。


「三年間ソフィア様の隣を目指します!…といいたいところですが、

 首席と次席のお二人とはずいぶん点差があったようです。

 三席を死守するということで許してください。」


「ん?そうなの?首席の子はまだ来ていないようね。あぁ、あの子かな。」



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