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終末ゾンビと最強勇者の青春  作者: 緑豆空
第一章 違う世界
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第23話 空港脱出

 建物から外に出ると敷地内のゾンビはまだ大量にいた。何度も轢かれてめちゃくちゃになった奴もいれば、体が破損しても歩いているのもいる。何故か三台のトレーラーは止まっていて、そこにゾンビがまとわりついていた。


「ちっ!」


 俺は舌打ちをしつつ、ジュウでゾンビの頭を殴り飛ばしながらトレーラーに近づいて行く。このまま俺が剣技を発動してしまえば、後ろのトレーラーの中にいる人まで巻き込んでしまう。その為一つ一つ潰していかねばならない。俺はスゥっと息を吐いてゾンビの群れに向かって叫んだ。


「おい! こっちだ! 向かってこい!」


 するとゾンビがノロノロと俺に向かって歩き出す。俺に呼ばれたゾンビが歩き出すと他のゾンビ達もまとまり始めた。だが奥にいるゾンビ達は、まだトレーラーにまとわりついて離れようとしない。俺は仕方なく向かってきたゾンビから順番に頭を潰す事にした。


 ボゴォ! バグゥ! ガゴン! と頭の骨を飛び散らせながら、次々に倒れていくゾンビ達。

だが包丁よりはかなり効率が良かった。


「やっぱりゾンビを直接攻撃するなら鈍器の方が良いって事だな。俺は剣ばかりを使って来たから忘れてたわ」


 包丁でやっていた時よりも殲滅速度が速い。両方の手でジュウを振り回しながら、ドンドン撲滅していくのだった。そして俺はゾンビの中へと飛び込んで、円を描くように倒し始める。このジュウと言う武器はそこそこ重さがあってゾンビを倒しやすい。


「無事か…?」


 俺はいちばん大量にゾンビが群がっていたトレーラーに近づいて行く。


「くそ!」


 だが…その一台は窓ガラスが破られていたのだった。ゾンビが積み重なり、その高さまで到達したらしい。俺がそのトレーラーによじ登って中を覗いてみると、ドウジマが血だらけになって倒れていた。どうやら全身を噛まれてしまっているようだ。


「ドウジマ…」


 俺はトレーラーのドアを取り去って、ドウジマの足を掴み外にひきずりだした。そしてそのまま天井によじ登りドウジマを屋根の上に横たわらせる。


「うっ、うう…」


 血まみれになりながらも、ドウジマにはまだ意識があった。


「おい! 大丈夫か?」


 そして振り返ったドウジマの瞳は…すでに変化し始めていた。


「お…遅かったじゃないか…」


「すまない。中に賊がいたんだ」


「くっ…、破られたか…まさか…人間の仕業とはな…」


「もうしゃべるな」


「ヒカル、お前凄い技使えるんだってな…ゴフッ」


「待ってろ!」


 そして俺は回復魔法でドウジマの傷を治していく。だが俺には浄化魔法は使えずゾンビ化までは止める事が出来なかった。


「最後の最後に少し楽になった。不思議な力だよな…」


「だが…すまん」


「ああ、分かってる。だんだん正気を失いかけている…、俺はゾンビになるんだな」


「すまん…」


「ならば、ひと思いに殺してくれ。俺はあんな風になりたくないんだ。人間のまま死なせてほしい」


「わかった。恐らく変化までもう時間が無い」


 するとその前にドウジマが気を振り絞って言葉を発した。


「空港の皆は! 皆は無事だったか?」


 ……空港の人間はほとんど盗賊にやられていたが…


「ああ、無事だ。お前に会えなくて残念がるだろう」


「そうか…よかった。本当に…」


 ドウジマが穏やかな表情になり、俺はドウジマに告げた。

 

「目をつぶれ」


 ドウジマが目を瞑ったので、俺はそこに立ち上がる。次の瞬間、一瞬でドウジマの頭を吹き飛ばしてやった。一瞬も恐怖を感じる事は無かっただろう。俺はすぐにトレーラーから飛び降りて、更に奥のトレーラーへと向かって進み始める。そしてさっきと同じように、トレーラーに群がるゾンビに声をかけようとした時だった。


 プッ!プーーー!


 後ろからけたたましい音が鳴る。後ろにはミオたちのトレーラーが来ていた。そしてその音につられて止まったトレーラーに群がっているゾンビ達が、一斉にミオたちの乗るトレーラーの方に向かってくれた。


「いい仕事をしてくれるな」


 そして俺は再びゾンビの群れの中に踊り出るのだった。ドウジマの最後の言葉を受けて、俺は軽い怒りを感じていた。もちろん自分に対してと建物の中にいた盗賊に対してだ。アイツらが居なければ、ドウジマも空港内の民も死ぬことは無かっただろう。俺がゾンビを削りながら進むと、トレーラーの窓から二人が手を振っていた。


「ヤマザキ! マナ!」


 俺はゾンビを破壊しつつトレーラーに近づいて行く。よく見るとトレーラーのガラスは破られていないようだった。二人は窓を何かで守っていたようで、両側に別れていた。


「なるほど。ドウジマは一人だったからな、両側を守る事は出来なかったのか…」


 そしてヤマザキ達のトレーラーに近づいて声をかける。


「大丈夫か!」


 するとヤマザキとマナが両手で丸を作った。恐らく無事と言っているのだろう。俺はミオたちが乗るトレーラーに向かって手招きをした。するとそれに気が付いたトレーラーは、ゾンビを踏み潰しながらこちらに近づいて来る。俺は向かってきたトレーラーに向かって言った。


「ドウジマはもうダメだった! ヤマザキ達を乗せろ!」


 すると窓を開けてミオが言う。


「これ以上は乗れないの!」


「なら屋根の上に乗せろ!」


「わかった!」


 そしてヤマザキ達のトレーラーに脇付けすると、ヤマザキとマナは窓を足掛かりにしてトレーラーによじ登った。


「ゾンビに群がられないように動き回れ!」


 俺が言うとミオ達のトレーラーは、ゾンビを回避するように周り始める。


「さて、もう一台は…」


 すると少し離れた所にもう一台がいた。さっきミオのトレーラーが発した音で、そのトレーラーからは既にゾンビが離れていたのだった。俺が周りのゾンビ達を一つづつ潰しながら近づいて行くと、そのトレーラーの中の二人が手を振った。タケルとユミだ。


「無事か!」


「ああ! 燃料が切れたんだ!」


「そうか! あの音は鳴らせるか?」


「あの音?」


「ぷーっていうやつ」


「おお、任せろ!」


 タケルがそのトレーラーからその音を発すると、ゾンビ達がこちらに向かって来た。後方にミオのトレーラーは無い、これなら思いっきり剣技を発動させても問題はないだろう。そして腰を落とした俺が剣技を発動させようとした時だった。タケルが俺に叫ぶ。


「銃じゃねえか!」


「あ、ああ。空港内の盗賊から奪った」


「おまえ、なんで撃たねえんだ?」


 いや今、剣技を発動させようとしていたけど…


「撃つ?」


「一つ貸せ」


 タケルがそう言うので、俺はトレーラーの窓から手を伸ばしたタケルにジュウを渡す。すると中でユミとタケルがジュウに何かをしているようだ。するとタケルはジュウを肩にかけて、一本の腕でトレーラーの上によじ登った。そしてタケルは腰だめにジュウを構えた。


 ダダダダダダダダダダダ!


 いきなりだった。タケルの持っていたジュウから火がでて、ゾンビ達がバタバタと倒れていく。


「えっ…」


 これってそうやって使う物だったんだ…。俺はてっきり鈍器の類なんだと思っていた。俺も見よう見まねでジュウを構えて魔力を注いでみる。


「あれ?」


 魔道具だと思って魔力を注いでみるも、タケルがやっているように火が出ない。


「なにやってんだよ! ゾンビが来てるぞ!」


 タケルが言うので、俺は魔道具の使用を諦めさっきと同じようにゾンビを殴り飛ばしていく。そんな事をしているうちに、ミオ達のトレーラーがタケルのトレーラーに横付けされた。


「乗れ!」


 ヤマザキが二人に声をかけると、二人はミオたちが乗っているトレーラーの天井に乗り移った。


「ヒカルも来い!」


 ヤマザキが俺にも声をかけていたので、俺もジャンプして一気にトレーラーの天井に飛び乗る。するとタケルがぽつりと言った。


「へっ? なんつうジャンプ力だよ」


 ヤマザキとマナとユミも驚いた顔をしている。そして思い出したようにヤマザキが言った。


「空港の話は美桜に聞いた! とにかくここを離れよう!」


「ああ」


 そしてトレーラーは入って来た入り口に向かって走り出す。ゾンビ達はトレーラーに追いつけるはずも無く、群がられる事も無く無事に空港を後にする事が出来たのだった。

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