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終末ゾンビと最強勇者の青春  作者: 緑豆空
第二章 東京
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第64話 渋谷で食料品回収

 東京に拠点を構えた俺達は、第一目的であった食料品の回収計画を立てる。これほどゾンビが密集している場所ならば、日本人が絶対に立ち寄る事はないだろう。皆が一室に集まって会議をしていたのだった。


 そして俺が発言する。


「食料の回収は俺一人で行う」


 それに対してタケルが異議を唱えた。他の女達もざわざわとしている。


「いや。ヒカル一人じゃ場所とか分かんねえじゃん」


 皆がそういうタケルを見るが、ヤマザキがそれを否定する。


「いやタケル。流石に千葉や茨木とは違うんだ。東京のど真ん中でぞろぞろと動くわけにはいかんだろう。もちろん俺は自分の保身の為に言ってるんじゃない。ヒカルの言うとおりだと言う事だ」


「店とかよ、何処に何があるか分かんねえだろうよ」


 するとユリナがそれに反論する。


「渋谷周辺なら、私達の記憶でなんとかなりそうだけど?」


「つーと?」


「渋谷に遊びに来た事くらいあると思うし、ウロウロした事ある人いるよね?」


 ユミが言った。


「私は結構遊んだかな」


 マナも言う。


「私も」


 ツバサとミナミはそれほど訪れたことが無いと言い、ミオも違うようだ。


「私もあんまり知らないんだ。マルキューには来たことあるけど」


 それに対しユミが驚いたように言う。


「えー、JKだったのに?」


「うん。そんなに詳しくない。むしろ原宿の方が詳しいかも知れないけど」


「そっかそっか、そっち系か」


「うん、でもそんなに東京には来なかった」


 ちょっと分からなかったので、俺がユミに質問する。


「そっち系とはなんだ?」


「あー、なんてゆーか。渋谷か原宿かでファッションが違うつーか。そんな感じ?」


 聞いてみたものの良く分からなかった。話を中断したことを詫びる。


「すまん。続けてくれ」


 するとミナミが手をあげる。


「地図を書いてあげたらいいんじゃない? ヒカル、渋谷の駅にはタケルと二人で行ったんでしょ?」


「あー、なるほどね」


 俺とタケルは渋谷駅でゾンビを燃やした。その時に周囲の地理はだいたい覚える事が出来た。渋谷駅中心に地図を書いてもらえれば分かりやすいだろう。


「紙とペンもってくる」


「お願い」


 ミナミが紙とペンを持って来て机の上に広げた。そこに渋谷駅の位置をかいて、その周辺の道のおおよその線を書きだした。そしてミナミは言う。


「えっとね。駅からそんなに遠くは無いんだけど、駅から通じている出口にこんな形の石像があるの」


「ふむ」


「モヤイ像って言うんだけどね」


 ミナミは人の顔の形の像を描く。


「なかなか上手じゃない」


 ユリナがそれを見て言った。


「まあ、上手かどうかは別にして、その右手に道路の上を通っている建物があって、そこの前の道を渡るの。そうするとそのビルの地下に食材があるスーパーがあったはず」


 俺は頭の中で位置関係を掴んでいた。タケルと登った屋上のある建物の道向かいにそこはあるらしい。


「わかった。地上から入るかどうかは行って判断する。とりあえず初回の行動となるからな、荒らさないよう余り動き回らない」


 するとタケルが言った。


「まあ俺は行けねえから、東〇ハ〇ズで取って来た登山用の馬鹿デカいリュックを持って行ったらいいぜ」


「そうする」


 ミオが心配そうな顔で俺に言った。


「大丈夫? 結構ゾンビがいっぱいいたんでしょ?」


「問題ない。それに俺はタケルにゾンビを集める技を教わったからな」


 もちろん今回は使わないが、俺がにやけながら言うとタケルはばつが悪そうに言う。


「技って言うほどの事じゃねえけどな。ありゃどっちかってーと悪い事だ」


「なら、行って来る」


 俺が大きなリュックを背負って立ち上がると、皆も一緒に立ち上がって心配そうにしている。


「なんだ? 問題ないぞ。あそこにはゾンビしかいなかった。安全な場所だ」


「あ、安全って…」


「問題は銃を持っている盗賊だ。だがアイツらがここに現れる事はないだろう?」


「そう言う意味か…」


「じゃあ待っていてくれ」


 最後にヤマザキが言った。


「ヒカル、本当にお前が居なくなると俺達はかなりマズい状況になる。俺達は東京のど真ん中から脱出しなければならなくなるからな」


 何か分かりやすく説明する方法が無いかと考える。すると分かりやすい例えが思い浮かんだ。


「アブラムシがたくさんいたら、ヤマザキは危険なのか?」


「いや。そんな事はない」


「感覚としてはそれと同じだ。任せろ」


「アブラムシ…」


 ヤマザキがポツリと言うと皆が呆れたように顔を見合わせた。


「じゃあ行って来る」


 すぐに部屋を出て一気に拠点のビルの二階に降り、ガラスをくりぬいた場所から地面に飛びおりる。最近周辺のゾンビは片付けたと思ったが、まだうろうろとうろつき始めていた。視界に入ったゾンビを瞬殺し、一気にミナミが書いてくれた地図の場所に走るのだった。そして人間の顔の形をしている石像を確認する。


「これか、しかしここはゾンビが多いな」


 俺はわざわざゾンビを破壊することなく進んだ。襲い掛かってきたらその時何とかすればいい。地図に記された場所に行くと、教えられた場所に地下に潜る階段があった。


 地下にもゾンビはいるがむしろ地上よりいい。俺が暴れてもゾンビは集まって来ないからな。


 そんな事を考えながら一気に地下に降りていく。地下にもゾンビはうろついていたが、俺に気づいて近づいて来るゾンビからバールで頭を吹き飛ばす。俺はすっかりバールを使いこなせるようになってきたが、やはりどこかで剣を入手したかった。


 こっちか?


 更に奥へ向かっていく。すると、ミナミが書いてくれた文字と同じ看板を見つけた。


 あった。しぶちかFOODSHOWと書いてある。ここで間違いないが…店内にもゾンビが入り込んでいるようだ。一度店内を片付ける事にするか。


 俺は店内を走り回りゾンビの頭を吹き飛ばしていく。腐った血が商品にかからないように、バールの尖った場所で脳を突き刺すようにした。店のゾンビをあらかた片付け、改めて周囲を見ると食料品がありそうな雰囲気だ。


 しかも臭いがする。恐らく何かが腐ってしまった臭いだ。ゾンビの匂いに混ざってそれらの匂いが混ざり合っていた。陳列されている物を見ると、干からびた肉や魚や果物があった。


「生ものは無理か」


 俺は保存食糧が置いてある場所へと足を向ける。すると箱や袋に入った物が所狭しと並んでいた。若干散乱しているところはあるが、恐らくゾンビがぶつかったり揉み合って落ちたのだろう。俺は陳列された箱を持ち上げてみる。


「これはなんだ?」


 食べ物じゃないものを持って帰っても申し訳ない。そう考えて一つの箱を開けてみることにした。中に黒い粒が並んでいる。それを一つ口に放り込んでみた。


 これは菓子か…


 甘い中にも仄かな苦みがあり、口に入れるとスッと溶けてしまった。俺はすぐさまそれをリュックに五個入れる。そしてその下の段には何か板のような物が置いてある。それを取り上げてみると包みに包まれていた。包みを剥いてみると黒い板のようなものが出て来る。


「さっきのと同じか?」


 口に入れてみると甘く、先ほどと同じように口の中で解けた。いろんな種類がある中で三種類を詰め込む。


「これはなんだ?」


 隣りの棚にカラフルな瓶づめが並んでいる。それを取って蓋を開けて舐めてみた。


「ジャムか。ここはジャムがあるのか」


 それも数種類ずつ詰め込んでいく。


「菓子ばかりではもうしわけないな」


 そう思いあたりをうろついてみると、袋に入った茶色いものがあった。すぐにその袋を開けて食ってみると、今まで食った事の無い物のだった。缶詰に近いが、それともまた違う。


「肉? 干し肉にしては柔らかく味が濃い」


 とりあえずそれも放り込んだ。次にぐるりと回り込んでみると、そこに黒い瓶が並んでいる。


「なんだ? コーラか?」


 だがペットボトルのような蓋では無く頑丈に封がしてあった。俺はそのうちの一本の頭を斬り落として飲んでみる。


「おお! 酒だ! 美味いぞ」


 たくさんあるが、余り詰め込むと他の食料が持っていけない。俺は自重して四本をリュックに詰め込んだ。瓶と瓶があたって割れないように、そこらへんにあった食いものと思しき袋を挟みこんでいく。ふと気づいたらさっき開けた一本を飲み干していた。体が温まる。


 更に他の場所に周る。そこにビッチリと袋に詰まっているのがあった。俺はそれを取り上げて袋を斬ってみる。


「肉…か?」


 臭いをかいでみるがおかしな匂いはしない。それをぺろりと舐めてみると、どうやら何かのソースのようだ。冷えてはいるが美味い。そして塊の部分をかじってみる。


「美味い。これは肉か? 随分柔らかいがまだ食えるな」


 俺はそこにある袋を全てをリュックに詰めた。更にぐるりと回り込むと、色鮮やかな袋が並んでいる。それを開けて食ってみると、ポリポリとしてしょっぱいものだった。恐らく菓子の類だと思うが美味い。それも数種類詰め込む。次にその棚の反対側に周ってみると、薄い箱や袋に入った物が並んでいる。その袋には見覚えのあるものが写っていた。


「米?」


 その写真が貼ってある袋を開けてみる。だが想像に反し、米は入っていなかった。その代わりに茶色い液体が入っている。袋を開けたとたんに食欲をそそる臭いがたちこめた。


 これは、米にかけて食うらしいな。


 想像しながら口に入れてみると、それは凄く美味かった。腐ってはいないようで、これはかなりいいものだと分かる。それも大量にリュックに入れていく。それから手当たり次第にあれやこれや食べられる物を詰め込んでいった。リュックがパンパンになってしまったので一旦手をとめる。


「今日また来よう」


 そう言って俺は店を出ようとした。だが…その前に。


 ちょっとだけ。


 俺は再び酒の瓶が並んでいるところに行き、一本の酒瓶の頭を斬って飲んだ。一本を一気に飲むと体がほてってくる。


 じゃあ、戻るか。


 東京に来たのは正解だ。千葉や茨木の食料品店は荒らされており全く無かったのだが、ここには大量に置いてあったのだ。


 俺が店から出ようとすると、ゾンビがまとめて店の中に入ってくるところだった。どうやら俺が物色して酒を飲んでいたのに気が付いて、一気に雪崩れ込んで来たらしい。周辺の店にいたゾンビもあらかた抹殺したと思ったが、何処から湧いて来たのか分からなかった。


「悪いが、これは俺達の食糧庫だ。お前達には必要ないだろ?」


 そう言って、シュッとゾンビの間を抜ける。すると俺の後で細切れになったゾンビ達が床にばらけた。


 さて。


 ゾンビが集まらないうちに、すぐさま地上に出る。地上にはウロウロとゾンビがいるが、地下に潜る前と何ら変わりは無いようだ。無視しながらすぐさま拠点の方に走る。身体強化を施し車より早く走れるため、ゾンビはついて来れなかった。目の前に現れるゾンビを抹消しながらも拠点ビルに到着する。


「もう周りにいるのか」


 するとビルの周りには既にゾンビがうろついている。ビルに入るのをゾンビから目撃されると、そこに集まって来る可能性がある為、入り口周辺のゾンビをあらかた始末した。そして地面から一気に二階のガラスに開けた穴に飛びあがった。一旦先にリュックを穴から中に押し込み、次に体を入れる。ビルの中は静かで出る前と同じ状態のようだ。


「よし、襲われてはいないな」


 俺は再びパンパンのリュックを背負い、すぐさま最上階へ向けて走り出すのだった。

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