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終末ゾンビと最強勇者の青春  作者: 緑豆空
第二章 東京
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第77話 盗賊のアジト

 俺はバイクをマンションに置き、船が着いた方角へ向かって走る。身体強化と脚力強化を施し、屋根と屋根を飛んで急いだ。バイクで道を行くより速く、バイクの音で悟られるのを避けるためだ。大きな建物の屋根に降り立ち縁まで走るとその先に港が見え、ゆっくりと船が接岸される所だった。


 海から来るとはな。俺が一人で見張っていたら見逃すところだった。タケルを連れて来た事は正解だったと思う。恐らく船の連中も暗い方が安全だと考えて夜を選んでいるようだ。


 岸には大型のトラックが停められており、周囲に銃を持った人間が見張っている。


 気配遮断、隠形。


 俺は闇に溶け込みトラックの側へ近寄る。すると男達の声が聞こえた。


「ようやく食糧が到着したな」


「馬鹿、あんま大きな声を出すな。ゾンビが来るだろ」


「ここいらはある程度片付けたろうよ」


「周辺のビルとかから出てきたらどうすんだ」


「ま、確かにそうか」


 そういって男二人がこちらを振り向くが、俺は気配遮断と隠形を使って闇に隠れているために見つからない。そのままトラックの周りを確認すると全部で七人の男達がいて、四人が周囲を警戒し三人が船の接岸の手伝いをしている。


「よーし綱をなげろ!」


 バッと綱が投げられて、男がそれを受けビットに括り付ける。船が固定されると、船の上から次々と頭陀袋が投げられて岸に落ちて来た。その間に階段が降ろされて男が三人降りて来た。


「うっす!」

「「「うっす!」」」」


 一人が腰に手を組んで頭を下げると、他の奴らも船から降りて来た男達に深く頭を下げた。


「馬鹿野郎。声がでけえだろ、殺すぞ!」


 男達はその言葉に縮みあがる。そいつの声の方がデカい。


「やめとけ孝臣たかおみ


「へい!」


 俺が着ている物より派手なスーツを着た男が、怒鳴った男を諫めた。


「孝臣! 京崎きょうざきさんの言うとおりだ。そもそもおめえの教育がなってねえからだろ!」


 もう一人の筋肉隆々でシャツ一枚を着た男が、怒鳴った男の頭を叩いた。


「すいやせん」


「まあ、牛頭ごずこいつらも一生懸命なんだろ。その辺にしてやれ、お前がぶっ叩いたら首の骨が折れちまうぞ)


「はは、孝臣も鍛えてますから」


「まあいい。とにかく急げ、アイツらが寄って来るといけねえ」


 そして男達が次々と船から荷物を降ろし、それをトラックの荷台に積み込んでいくのだった。船から降りて来た三人の男達は、トラックの前に停めてあった車に乗っていく。それは俺達が回収したようなリムジンのような車だった。そして俺は落とされた荷物を見る。


 あれは米か、あとは食糧が積まれているようだ。


 船からの荷物があらかた降ろされたのか、綱が外されて船はそのまま岸を離れていく。


 なに? …もう行くのか。船を追いたいところだが、まずはトラックの行先を突き止めるか。


 一人の男が言う。


「ゾンビが来ねえうちに行くぞ」


「「「「「おう!」」」」」


 男達がトラックと荷台に乗り込み扉が閉まる。すると前に停めてあるリムジンが出発した。それに続いてトラックが出たので、俺はそっとそのトラックの天井に降り立つ。


 かなり訓練されているな。ゾンビの襲撃を避けるように船が接岸しているのは一瞬だった。荷物を投げおろせるように、袋に何かを詰め込んでいるようだ。


 そして俺はトラックの天井に耳をつけて、内部の男達の会話を聞く。


「結構な物資があったな。また、どっかの拠点でも潰したのかね?」


「そんなの知るわけねえだろ!」


「そうだな、俺達下っ端が知る必要もねえしな」


「ああ、ゾンビ回収班よりずっといい仕事をさせてもらってんだからよ」


「まあ、いつそっちに回されるかも分からねえけどな」


 なるほど、どうやら役割分担が決められているらしい。ゾンビ回収犯は下っ端の仕事と言う事だろう。


「だけどよ。何人か帰って来てねえって話だぜ」


「ああ聞いた。そっちの人員が居なくなると俺達がかり出されるかもしれねえからな、勘弁してほしいぜ」


「ちげえねえ。しかし二班も帰ってこねえってのはめずらしいよな? 東京のゾンビが増えたりしたんだろうか?」


「ばーか。増えるっつったら生きてる人間がいるつー事だろ」


「そうか」


 なるほど。俺が始末した奴らの情報は、まだ伝わっていないらしい。今の口ぶりからすると、恐らく組織全体が把握していないようだ。伝達の手段が無いからか、そもそも俺が殺した奴らは使い捨てで調べてもいないか。そんなところだろう。


「しっかし恐ろしいよな。平和な暮らしをしてるやつらをゾンビに襲わせるなんてよ」


「馬鹿。良いんだよ! それで俺達が生きられてんだからよ! 弱肉強食つー言葉知ってっか?」


「だけどよぅ。もしかしたら、自分の知り合いとかがやられてるかも知れねえんだぞ」


「そんなのこうなったら誰も分かんねえよ。それによ、逆らったらゾンビの餌にされちまうぜ」


「だな。とにかく素直に従っておくしかねえんだ」


 その時一人の男の腹の虫が鳴った。


「しかしよ。腹減ったな」


「目の前にこんなに食料があんのによ。俺達が食えるのは微々たるもんだ」


「あー、ここで思いっきり食えたらな」


「止めとけ。殺されるのがおちだ」


「分かってるよ!」


 こいつらの食糧事情もだいぶひっ迫してると言う事だ。恐らく食糧確保の為、ゾンビに人間を襲わせる事を思いついたのだろう。だがとうてい許せる事ではない。それならば俺達のように、命を賭けて東京に回収に行けばいいのだ。あれだけ銃を持っているのなら、なんとかできるはずだ。


 車が進む先で、ちかちかと光が輝いた。それに対しこちらの車もちかちかとライトを動かす。どうやらバリケードを作って道路を封鎖しているらしい。砦のようなものを作って上からも見ているようなので、俺はすぐにトラックの下にへばりついた。


「お疲れ様です!」


 バリケードで待っていた奴が、前の車に声をかけている。そしてバリケードは開かれ、車は中に通された。建物に到着すると、建物の前には大勢の人が待っていた。


「お疲れ様です!」


「ご苦労」


 男達の列が左右に分かれて、車を降りた三人が建物の中に入って行ったようだ。俺はすぐさまトラックの下から出て暗闇に紛れる。この建物は円形状になっているようで大きかった。俺はその大きな建物に向かって忍び寄り、一気に一番上まで壁をよじ登った。


 ここはなんだ? 闘技場か?


 天井に上りきり中を見渡すと、空洞になっておりその中に車が何台も置いてある。気配探知で内部を探るとそこそこの数の人間がいるようだ。俺がその屋根の上をぐるりと走っていくと、反対側は海になっているようだ。


 こんなところを拠点にしているのか?


その建物の周りにはゾンビはおらず、どうやら道を封鎖してゾンビを中に入れ込まないようにしているらしい。


 さて。


 そして俺はすぐさまその円形の建物に進入していく。気配遮断と隠形を発動させているので、恐らくは誰も気が付く事はないだろう。その建物は俺達の拠点とは違っていた。なんと灯りが点いている部屋があったのだ。


 なぜだ?


 それも確かめなければならないだろう。


 灯りが点いている部屋の中には人間がいるようで、そいつらが何やら話をしていた。外に出て来る気配がしたので、俺は暗闇に体を隠す。


「京崎さん、着いたんだよな?」


「早く迎えに行かねえと!」


「だって、飯の準備をしておかねえと!」


「ちっと遅くなっちまった!」


「マズいぞ」


 そして男達は慌てて通路を向こうへと走って行った。まだ部屋の中に二人ほどいるようだ。部屋の中から何らかの料理の匂いが漂って来る。俺はすぐさま部屋の中に侵入した。すると二人が料理をしている所だった。


「早くしろよ。京崎さんが来ているのに準備が出来てねえとヤベエ」


「あと五分くらい煮込んだら終わるんだけどな」


「下で時間稼ぎしてくれねえかな?」


 俺はすぐさま一人に近寄り首をぐるりと後ろに回す。そいつの顔が俺を一瞬見て驚いたようだったが、すぐに絶命した。


 「なっ」


 もう一人が声を出す前に、そいつの首を蹴り飛ばす。首がへし折れ肩からぶら下がった。俺は二人を掴みすぐさま部屋を出て屋根の上へと飛んだ。そのまま屋根に死体を置いてさっきの部屋に戻る。すると通路の向こうから声が聞こえて来た。俺はその近くの暗がりに身を隠した。


「はい! もう出来てます」


「酒もあるからな」


「はい。ぜひゆっくりして行ってください」


「ああ」


 そいつらが部屋の中に入って行った。俺が入り口で聞き耳を立てる。


「あれ? あいつらどこ行った?」


「本当だ! すんません! アイツらには後できつく言っておきます!」


 するとキョウザキと呼ばれていた男が言った。


「いいじゃねえか。良い匂いだな。今日はなんだ?」


「はい! フリーズドライのすき焼きを用意してます」


「すき焼きか! 久しぶりだな!」


 するとゴズと呼ばれた男が言う。


「いい酒も手に入りましたしね。京崎さんの為に頑張ったなお前達」


「「へい!」」


 そして三人の男達は席に座り、下っ端が料理の準備をし始めた。どうやらこいつらがこの場所で一番偉い奴ららしい。俺は一度その場を離れて、この館内を全て掌握する事にするのだった。

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