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終末ゾンビと最強勇者の青春  作者: 緑豆空
第二章 東京
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第96話 消えてしまった仲間

 頑丈そうな車を探して道を歩いていると大きな建物が見えて来た。今までの経験上はこれは恐らくスーパーマーケットという店だ。駐車場に車は無いので、今は物資回収などせずに先を急ぐ。そして恐らく街の雰囲気を見た限りでは、ここは東京ではないと思う。高い建物も無くゾンビの数も遥かに少なかった。


「皆が待っているから、とにかく急がないと」


 太陽の位置からすると方角はこっちで間違いないが、どのくらいの距離を来てしまったのだろう。俺が歩いていると、もぞもぞとゾンビ達が動き出す。


 シュッ! 見える範囲のゾンビを飛空円斬で切り裂いた。


「あれはガソリンスタンドか」


 俺は身体強化と脚力強化を施して、瞬時にガソリンスタンドにたどり着く。だがそこにめぼしい車は無かった。俺はふと道の反対側を見る。


「おっ」


 トラックの荷台に何か柱のようなものが乗っている物があった。あの荷台の柱が何なのかは知らないが、なんとなく頑丈そうなので行ってみる。すると建物の中からウロウロとゾンビが出て来た。それを無視してトラックのドアを引くが開かない。


「中か」


 俺はそのまま建物に向かっていく。ゾンビを斬り落としながら進んでいくと、建物のドアは開いていた。中にも三体ほどのゾンビの気配があるが、無造作に扉を開けて中に入った。中は暗く、その暗がりからゾンビが顔を出す。ゾンビの首を落としつつ、中に進んで部屋を見ていくが金庫のようなものが見当たらなかった。


 探している俺の後ろからゾンビが来たので、刺突閃で脳天を撃ち抜いた。


「隣りか?」


 もう一体のゾンビを始末して隣りの部屋に入る。


「あった」


 鍵が壁際にぶら下げられている。どれがどれか分からないので、俺はそのカギを全部手にもっていく。今までの経験上、この名札に記されている番号と同じものがあるはずだった。


 外に出て鍵を合わせると、一つ同じ番号の物がある。それをドアのカギ穴に差し込んで回すとドアが開いた。他の鍵は不要なので全て捨てる。


 きゅきゅきゅきゅ


 かからない。だがヤマザキ達は何回もやっていた。俺は彼らと同じようにアクセルを踏んで鍵を回す。何度かやっているとエンジンがかかった。俺が鍵を回す音につられてゾンビが来たが、俺はそれを無視してギアを入れる。


 ぎぃーっと変な音がした。


 どう言う事だ? ギアが入らないぞ。


 それからしばらく試行錯誤していると、恐らくバイクの構造と一緒で動力を一度切り離す必要がありそうだ。あれやこれやとやって分かったのは、左足を大きく踏むとどうやらギアが入りそうだった。


 ゴクン!


「はいった!」


 そして俺はアクセルを目いっぱいに踏み込む。うーんとうなりを上げてトラックが急発進して、ゾンビ達を踏み潰していく。


 なんだ?


 トラックは唸るばかりで全然速度が上がらない。アクセルをべたりとつくまで踏むが、唸る音が上がるだけノロノロだった。


 きっとバイクみたいにギアをあげないとだめだ。俺が左の手元のギアをみる。


 えーっと。とりあえず動力を切って。


 ドガン!


「うおっ!」


 トラックは道の真ん中の盛り上がりの所に乗り上げてしまった。気がつけばエンジンが止まっている。俺は再び鍵を回した。すぐにエンジンがかかり俺はギアを入れてアクセルを踏む。


 ウウーーーーン! トラックは前に進まなかった。俺がトラックを降りると、トラックの車輪が空に浮いて空回りしている。


「乗り上げたか」


 俺はトラックの後に行って手をかけて引っ張った。するとトラックは中央の盛り上がりから外れ道路に降りた。


 しかし…


 俺は考えた。こんなに手こずるなら他の車が良い。頑丈そうではあるが、これに慣れるまでに日が暮れてしまう。俺はトラックを諦めて再び車を探し始めた。マンションらしき建物の前にも車はあるが、鍵を探していたら時間がかかる。


 道に散乱している車はボロボロで動きそうなものはない。それでも俺は一台一台見ていく事にした。十台ほど見た時それほど損傷の無い車があった。中にゾンビはおらず、鍵は着けたままになっている。俺がそのカギを回すが、うんともすんとも言わない。


「ダメか…」


 そしてそこから五百メートルほど歩いた時。


 神は舞い降りた。


「これは…」

 

 道の左側にバイクが並んだ店があった。俺は自分の運に、そして神に感謝しつつ、その店に入って行く。中にゾンビはいないようだった。


「よし」

 

 一階がしまっているので二階から侵入し、すぐさま下の階に降りてバイクを物色する。俺は既に一台に決めていた。だがそのバイクに鍵が刺さっていない。


 俺はその建物の中をくまなく探しまくった。外は陽が暮れてきており、夕日が建物の中をさす。とにかく急がねば皆が心配だ。


 金庫がありそれを破壊すると、中に鍵がぶら下がっていた。しかし番号が書いておらず、何かの記号のようなものが書いてあった。


「タケルがいたなら」


 仕方がないので、その金庫の中にある鍵を全て取り出した。さっきのバイクの所に戻ってひとつひとつ鍵を差し込んでいく。


「よし!」


 ようやく合うものがあった。それを回すとバイクは軽快にエンジンを回した。ドルンドルンという音と共に後ろから煙がでる。俺はすぐさまバイクにまたがってアクセルを全開にした。ガラスに向かって走っていき、俺は推撃でガラスを割って外に出る。


「待っててくれよ」


 俺は沈む太陽を右にしながら道路をひた走る。どんどん建物が増えて来た事からも、東京に入ったことが分かった。そのまま真っすぐに進んで行くと、ようやく俺が高速道路に入った道を見つけた。その十字路をそのまま左に曲がり、皆が待つマンションを目指すのだった。


 そしてニ十分後、俺達が乗って来たバスを見つける。すっかり暗くなってしまったので俺は急いでバイクを降り、皆が待っているマンションの階段を駆け上がる。最上階の皆が隠れている部屋にたどり着いてドアをノックした。


 しかし反応がない。俺が気配感知で部屋の中を探るが人の気配がない。


「なんだと…」


 俺は慌てて扉の鍵を破壊し部屋の中に入る。だがそこには誰も居なかった。


「そんな…」


 部屋の中を見回すが何処にもいない。


「バスはあったが…他の車で出たのか?」


 襲撃されたような気配も無く、間違いなく自主的に出たのだと思われた。この部屋の鍵を見つけて鍵をかけて出た? もしかしたら盗賊から見つかって連れていかれたのか!


 俺が窓に近づいて押してみると、からからとドアが横にずれた。


 気配感知。


「俺は…どうかしてたな…」


 どうやら…俺は、仲間がいなくなったことで焦りすぎていたようだ。皆の気配が隣の隣りの部屋から感じる。よく見るとベランダを遮る壁が破られていた。ベランダ伝いに隣に行くと、そこに銃で撃たれたゾンビが倒れていた。恐らくは隣の部屋にいたゾンビだろう。そしてその部屋のベランダを通過すると、次の遮る壁も壊れていた。


 俺がその部屋の前に行き、窓ガラスをノックして中に声をかける。


「俺だ! ヒカルだ! 皆無事か?」


 カラカラカラ! と窓が開いて、アオイが飛び出て俺にしがみついた。


「お兄ちゃん!」


「ああ。待たせたな」


 すると後ろからミオが出て来て涙目で言う。


「戻ってこないから何か起きたのかと思った!」


「ヒカル! 心配させやがって!」


 俺が部屋の中に入って行くと、暗い部屋の中で皆がこっちを見ている。


「すまん。手こずってしまった。ヘリコプターが二機もいてな」


 するとヤマザキが聞いて来た。


「なんだって? 怪我はないか?」


「問題ない。二機のヘリコプターは落とした」


「へっ?」

「何言ってんだよ。どうやってヘリを落とすんだよ」


 ヤマザキが呆けた顔をし、タケルがいぶかしげな顔で言う。俺は事の経緯を皆にゆっくりと聞かせるのだった。

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