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捨てられる予定の皇妃ですが、皇帝が前世の推しだと気づいたのでこの状況を楽しみます! 関連話  作者: 池中織奈


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「ヴィー様、学園都市の方と会合する場には私も一緒に居てもいいんですよね?」―制服デート編③―

「皇帝夫妻が学園都市に来る……なんてどういうことなのだ。今まで陛下は配下の者をよこすことはあっても、直接赴くことはなかっただろう。まさか、学園都市は陛下の不興を買ってしまったのだろうか……!」

「陛下がこの学園都市に来るなんて……、精一杯おもてなしをしなければ!!」



 帝国には学園都市と呼ばれる場所がある。



 それは帝国内の教育機関が集まっている場所であり、その中には国内外の王侯貴族たちが通う学園というものもある。その学園都市は王侯貴族以外にも学びの場を与えることも目的としているため、他の機関も多くある。




 さて、その学園都市にヴィツィオは皇帝になってから訪れたことはほぼなかった。配下の者たちからの報告で事足りているからである。

 そういうわけで、皇帝夫妻が学園都市を訪れると聞いたそれぞれの学園や学校の長たちは会議をしていた。この学園都市、治めている貴族は一応いるのだが、教育機関の長たちの発言力もそれなりに強い。彼らはこの学園都市をよくしていくためにと会議を行っている。




「そのように気を張る必要はありません。陛下がこの学園都市に来るのは、皇妃様のお願いを叶えるのにちょうどよかったからだけです」

「……皇妃様のお願いを叶えるのにちょうどよかった?」



 報せを持ってきた騎士の言葉に、一人の学園長が不思議そうな顔をする。


 この学園都市にも皇帝が皇妃を溺愛しているという噂は入ってきている。しかし彼らは実際にその様子を見たことがあるわけではない。本当に噂に聞く『暴君皇帝』が一人の少女を溺愛しているということがあるのだろうか……? と若干の疑問は感じているのだろう。




「はい。お忍びのような形で陛下たちは来られるので、過度なおもてなしは要らないとのことです」

「かしこまりました」



 皇帝の意向は、その場に居る学園長や校長たちでは判断がつかなかったので、恭しく頷く。

 ……しかし、お忍びでやってきて皇妃様のお願いを叶えるためなどといっている皇帝の目的が彼らには分からなかった。


 まさか皇妃であるマドロールが「制服デートしたい!」などというお願いをしたために、ちょうどよいからと学園都市にまで来るとは思わないだろう。

 あとはマドロールが「学園都市なんてものがあるんですね! 面白そうです」と行きたがったためというのもある。ヴィツィオは本当にマドロールに甘い。




「本当に噂の通り、陛下が皇妃様を溺愛しているというのならば皇妃様を怒らせないようにしなければ。どのような方なのだろうか?」

「結局噂しかこちらには入ってきていないので、実際の性格が分からないな。優しいだとか、陛下を大変愛していらっしゃるとか、そういう良い噂は出回っているが……、皇妃という地位を持っているのならばそんな風に噂を操作するなんて造作もないだろう」



 報せを持ってきた騎士が去った後、彼らはそんな会話を交わす。



 マドロールはまだ皇妃という地位についてそこまで時間が経っていない。

 そんな短い間でヴィツィオの心をつかんだことも信じられないのも無理はない。それでいて良い噂しか出回っていないが、それが本当に真実なのかは判断もつかない。



 権力者の中には自分の良い噂だけを流し続けるといった者もいる。噂ではどれだけ立派な貴族でも、本当の姿は全くそうではない……というのはそれなりによくある話である。

 だからこそ、その場に居る者たちも本当に皇妃マドロールが噂通りの人物なのかは分からなかった。




「……本当に皇妃様がどういった方なのか分からないので、細心の注意を払うべきだろう。本当に陛下が皇妃様のことをそれだけ大切にされているのならば、何かあれば学園都市は只では済まないだろう」



 皇帝であるヴィツィオがどういう人間かは、この帝国の人々はみなが把握していることである。

 ヴィツィオは決して甘い人間ではなく、その怒りを買った人がどうなってきたかというのは噂で沢山流れている。

 だからこそ、マドロールの気分を害してはいけないのである。




「過度なおもてなしは要らないとのことだが……、ある程度のおもてなしは必要だろう。皇妃様の好みなどもきちんと把握しておかなければ」

「そのあたりは調べておいた方がいいだろうな。こちらでも調べておこう」



 過度なおもてなしはしなくていい――それを言葉通り受け取っていいものか、彼らには判断がつかない。

 ヴィツィオはマドロールが楽しければそれでいいのだが、そんな私情を彼らが知る故もない。

 そういうわけで学園都市は皇帝夫妻の来訪を聞いてバタバタと忙しくすることになるのだった。









「ヴィー様、学園都市の方と会合する場には私も一緒に居てもいいんですよね?」

「ああ。マドロールが行って駄目な場所などない」



 当の皇帝夫妻たちは、学園都市の人々が大変あわただしくしているのも知らずに、学園都市に行くことを楽しみにしてそんな会話を交わしている。



「ヴィー様との制服デートも本当に楽しみですし、本当にワクワクしますね!!」


 マドロールはヴィツィオとの制服デートのことしか頭にないのであった。



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