表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

うちのクランにはやばいメンバーしかいない

作者: ロクハチ

 うちのクランには人が来ない。

 別にこのVRMMOが過疎ってて人口が足りないとかいうわけじゃない。


 来ない理由は簡単、うちのクランは総じてクソであるからだ。




★★★




「……誰も来ない」


 おかしい。今日は一応みんなで決めたクラン内会議の日なのだが、誰も来る気配がない。


 時計を確認する、22時10分だ。


 メッセージを確認する、22時集合だ。


 示し合わせたかのように連絡もなし、10分は遅れるうちに入らないぜ★って言いたいのかあいつら?

 前回は全員集まるのに30分かかったのでまじでその可能性がある。

 そんなことを考えていると、プレイヤーの入室音を知らせるログイン音が鳴る。


「やっと来たか、セツナ」


「『このプレイヤーは規約違反により一定期間の自由発言を禁止されています。』」


「今まで何してたんだ?」


「『このプレイヤーは規約違反により一定期間の自由発言を禁止されています。』」


「何言ってるかわかんないから定型文を打ってくれ」


「『わかりました。』」


 うちのクランのメンバーの1人、刀武器の達人で特攻隊長、セツナ。


 刀みたいに暴言の切れ味が抜群な彼女は、ほぼ常に発言禁止ペナルティを受けるマナーキラーだ。

 ペナルティが解除されても、名前に恥じない刹那の速度で他のプレイヤーに暴言を吐いて再ペナルティへ直行するので、こいつの地声を聴くことは月に1回あればいい方だろう。

 ちなみに気づいたらポージングを巧みに使って煽り行為をするカスのエキスパートになっていたが、そっちの方向への執念は何なんだと叫びたくなる。


「チクショウ、2人に増えたのに結局会話できないんだが?」


「『どんまいです!』、『このプレイヤーは規約違反により一定期間の自由発言を禁止されています。』」


「絶対暴言吐いただろ今」


「『いいえ』」


「そびえ立ってる中指の自己主張が隠せてねぇんだよ、てか普通出来ないハズだろそれ」




 ここでログイン音が再び会議室に響く。


「……よくきたスズリ」


「あーはいはい、リーダーくんとセツナちゃんだけと……こりゃいいタイミングで来た」


「貸さんぞ」


「ログアウトされたくなきゃお金貸してください」


「話を聞け」


 こいつもメンバーの1人で、銃や弓など飛び道具ならなんでもござれのオールラウンダー、スズリ。


 ギャンブルをこよなく愛する令和版賭博黙示録の主人公である彼女は、ことあるごとにゲーム内通貨を借りることに繋げようとしてくる。もちろん返ってくることには期待しない方がいい。

 純粋な初心者プレイヤーが「なけなしの金をむしり取られた」と泣く事件が有名イベントになってきている様を見ていると、まさに害虫という言葉がふさわしいと思う。


「ちなみにいくらだ」


「うん?えっとね、実はソシャゲで溶かしすぎちゃって……現ナマ2万かな」


「ゲームの通貨じゃねぇのかよ」


「『このプレイヤーは規約違反により一定期間の自由発言を禁止されています。』」


「でも流石に現金を借りるのは罪悪感あるし……うん、絶対に倍にして返すよ」


「一回鉄骨渡りでもしてみたらどうだ?」




 その時、三度目のログイン音が鳴る。

 うちのクランは4人なのでこれで全員集合ということになる。


「モチ、ただいま参上しました!」


「……一応聞くが、何で遅れたんだ?」


「教団の勧誘に行ってました!」


「ありがとうもういいです」


「リーダーなら同クランのよしみで教団の幹部第1号にしますよ」


「いいです」


 バフや回復が得意なサポート能力に秀でた魔法使い、モチ。


 よくわからん新興のカルト宗教の自称教祖で、うちのクランを足場にこのゲームでも信仰拡大を狙ってるとドヤ顔で言いのけた危険人物。

 マジで勘弁してほしいので何度も追い出そうとしたがこの女、賢い頭をフル回転させて、床についたガムみたいにここにへばりついてくるので手に負えない。


 ……気づいたら乗っ取られてるとかないよな?


「セツナとスズリもモチのもちもちオムレツ教に入りましょうよ」


「『いいえ』、『このプレイヤーは規約違反により一定期間の自由発言を禁止されています。』」


「モチちゃんとこの金庫番ならいいよ」


「セツナもスズリも信仰がないのですね。天罰が来るようにオム神様にお祈りしておきますね」


「それって能動的に起こすものなの?」




 これがうちのクランに人が集まらない理由だ。煽り厨にギャンブル中毒、新興宗教教祖と見事にメンバーが終わり散らかしている。


「てか、人が来ない理由はリーダーにもあるからね」


「ナチュラルに心を読むな」


「モチちゃんの言うことも分かるかも。マスターくんの格好って……なんか漫画の裏ボスみたいなんだよね」


「『はい』、『"スズリ"に同意します。』」


 3人に責められ、自分の姿を改めて確認する。

 棘がこれでもかとトッピングされた鎧に、顔面に鬼のお面をつけた全身真っ黒の不審者……


「……うん、男らしくてかっこいいじゃん」


「『いいえ』、『このプレイヤーは規約違反により一定期間の自由発言を禁止されています。』」


「リーダーくん、あまりにも無理のある感想だと思うよ」


「すごいですリーダー!完全にヤバイ奴らを従える悪の親玉ですよ!」


「うるさい仕方ないだろ!なんか気づいたら勝手にこうされてて、しかも何故か脱げねーんだもん!」


 そりゃそうだわ、まるで巣を攻撃された蜂みたいに悪評がまとわりついてる3人をまとめるクランリーダーが、いかにも「世界滅ぼしてみたで(そうろう)!」って格好してる男だったら当然誰も来ないわな。

 正直こちらで改善のしようがない以上、下手したらあの3人よりも絶望的な状況だろう。


「……もういいや、とりあえず今日の議題を確認しようか」


「よし任せてリーダーくん!今日は……あ、【どうすればこのクランに人が来るか】だね。確認だけどこれって司会のお給料は現」


「はい無理、解散!」





こういうのって実際にいたらBANになるのかな

よければ評価や感想、誤字脱字報告くれると喜びます

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ