瓦礫の上の進軍
閃光が止んだ大陸には、ただ静寂だけが残った。
通信は断たれ、衛星網は途絶し、
誰も次の命令を発する者がいなかった。
だが、沈黙を破ったのは、主人公の国の旗だった。
まず、北の旧大国の”領”から進軍が始まった。
核の直撃を免れた渓谷と高原地帯を縫うように、
装甲部隊と無人機が展開し、無抵抗となった補給拠点を次々に制圧していく。
抵抗はほとんどなかった。
西の大国は報復の傷跡から再建の見込みすら立たず、
二重帝国は中枢がいじされたものの首都圏が焼かれ、司令体系は崩壊していた。
そして主人公の国の軍勢は、戦略衛星の残存データを解析し、
計算された核の降下範囲を正確に避けながら進撃経路を定めていた。
それは、冷酷でありながらも完璧な進軍だった。
廃墟となった都市の縁を通過し、放射線の影響が少ない平野部を縦断し、短期間で二重帝国の中枢領域を制圧した。
西の大国も同様に、荒れ果てた前線を越えてわずかな抵抗を残すのみとなり、旧貴族層が降伏を宣言したとき、すでに主人公の国の旗はその首都の塔に翻っていた。
――大陸は、ついにひとつの手に落ちた
だが、征服の終わりは再建の始まりでもあった。
核の落ちた都市では、核汚染の回復作業が始まりかつ同時に瓦礫の下に残る構造物が調査され、
地下施設から再利用可能な資源が掘り出された。
復興部隊は軍の直轄下で組織され、各地の労働力を再配置し、
数か月のうちに主要都市の通信網と交通網が再接続された。
一方、軌道上の迎撃システム――防衛網も再建が進められた。
破壊された衛星の残骸を回収し、旧敵国の技術を解析、
統合することで、前よりも堅牢な防衛圏が築かれていった。
王は再建途中の指令塔から、復興都市の光を見下ろしていた。
かつての焦土には、再び灯がともり始めている。
その光は、勝利の証ではなく、支配の安定の象徴として燃えていた。
そして彼は、参謀に静かに告げた。
「これでようやく、真の統一が成った。だが慢心してはならない」
こうして大陸は、一度はどん底に沈みながらも、再び立ち上がった。