幕間Ⅲ
核の応酬を生き残ってすでに回復した別の大陸の帝国が海を越える準備を進めている。
そのさらに向こうの海に――もうひとつの大陸があった。
表向きは中立を宣言し、どの大陸とも接触を持たず、戦火に巻き込まれることなく静かに秩序を保ち続けた「南の大陸の統一帝国」、別名:沈黙帝国とよばれる国がある大陸であった。
だが、沈黙の裏では、世界の通信網を裏から操る情報帝国としての顔を持っていた。
彼らの支配は、軍でも経済でもなく――情報だった。
各大陸の崩壊後に散らばった通信衛星、無線中継網、断片。
それらを独自の技術で再接続し、いまやこの帝国は世界中の電波の「影」を読むことができる。
各地で囁かれる噂、軍の命令、取引の暗号、核兵器の起動信号――
そのすべてが、沈黙の帝国の中枢「情報院」に集められていた。
情報院院の上層では、別の大陸の帝国の動きを逐一監視していた。
彼らはその帝国が“作戦”を立案し、主人公の国への上陸を計画していることをすでに知っている。
だが、介入するつもりはなかった。
――むしろ、それを利用しようとしていた。
「奴らが海を渡る。ならば我らは風を送るだけだ。」
帝国の執政官は微笑んだ。
沈黙の帝国は、世界のどの勢力よりも強力な「兵」を有していた。
それらにより情報の流れを歪め、命令を遅らせ、誤報を混ぜることで戦局を変えられる。
すでにその帝国の統合作戦ネットワークに、微弱なノイズが送り込まれていた。
同時に、主人公の国の防衛システムにも別系統の通信が届いていた。
差出人不明の暗号文。内容は断片的な座標と、灰の艦隊に関する未確認データ。
その発信源は、海のさらに向こう――沈黙の帝国。
しかしその情報の信憑性は、誰にも判断できなかった。
人々にとってそれは奇妙にも思えた。
沈黙の帝国は、動かない。
だが彼らは、“戦争が始まる前に結果を決める”術を知っていた。
その帝国の上陸作戦と、主人公の国の迎撃網。
その両者がぶつかり合う瞬間、沈黙の帝国の望む“新たな秩序”が形を得る。
彼らにとって、勝者が誰であるかは問題ではなかった。
ただ、世界が再び動くこと――それこそが、彼らの目的だったのだ。
といってもその沈黙の帝国も自分の大陸の制圧にてこずってたんですよね。