表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
22/40

焦土

帝国軍が森を越えたのは春の終わりだった。

 花の咲く季節に、火薬の匂いが混ざった。


 森の国は小国ながら地形を活かした防衛線を築き、

 一時は侵攻軍を押し返す勢いを見せた。

 だが、帝国は兵の数を惜しまなかった。

 主都陥落まで三週間――それが抵抗の限界だった。


 森の陥落は大陸全体に衝撃を与えた。

 主人公の国は「国際秩序の破壊」として非難声明を発し、

 西の勢力は“共同防衛条約”の名目で軍を動かした。


 主人公の国もまた、表向きは傍観を装いつつ、

 背後では難民を受け入れ、情報を整理していた。

 「中立は崩れた」と、王国議会の誰もが口にした。


 戦争は広がる。

 森の周囲は焦土と化し、またたくまに二方向からの軍勢が入り乱れた。

 そして主人公の国の軍勢も調停のために進軍した。

 しかし、どの勢力も決定打を放てず、戦線はやがて膠着する。


 疲弊が極まり、停戦協定が結ばれたのは約2年後のことだった。

 森の国は名目上の「緩衝地帯」とされたが、実際には三国の軍が交錯する監視線上に置かれた。


 その混乱の最中、数多の中小国が「保護」「友好」「通商支援」の名の下に

 三大勢力のどれかへと吸収されていった。


 そして大陸は、静かに――確実に、三国均衡の構造へと収束していった。

 王国連合、東の帝国、そして南西に拡張した二重帝国。

 人々はそれを「平和」と呼んだ。

 だが、それは血と灰で築かれた静寂にすぎなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ