10.EXステージ その1
『EXシナリオは各ステージで完全達成した場合にのみ発生します
ステージは各シナリオのステージと同一で、隠しアイテム等はございません
成功、失敗にかかわらず挑戦できるのは一回のみとなります
EXシナリオに挑戦しますか?』
へぇー、一回だけの特別ステージね。
そういうのもあるのか。
「そりゃ、やらないって選択はないだろ」
一回だけの挑戦ステージとかすっげーワクワクするじゃんか。
当然、イエスを選択する。
『EXシナリオを解放します』
『メインストーリー1 EX『真の襲撃者』
クリア条件 モンスターの撃破
成功報酬 ポイント+100、よく斬れるナイフ、20,000イェン』
おいおい、成功報酬のポイント十倍だと?
それにポイント交換でポイントが高かったアイテムに高額な賞金。
「……難易度は相当なものと見るべきだろうな」
光が収まると、再び俺は先ほどと同じ場所に立っていた。
「ギギィ?」
「ギィ?」
「ギギャァ……?」
すぐ側にはゴブリン達まで居る。
困惑した様子でキョロキョロと周囲を見回している。
「クリア条件のモンスターの撃破って、まさかこいつらのことじゃないよな?」
マップを確認すると、俺とゴブリン達のアイコンマークは緑。
敵のマークは赤色なので、ゴブリン達は先ほど同様、傭兵扱いってことで良いみたいだ。
「敵のマークはまだないな……」
ゴブリン達も最初はマークがなかった。
しばらくしてから現れるってことか?
ひとまず最初から出てこないならその方が良い。
「念のためフィールドも再確認しておくか」
アナウンスではステージは同一って言ってたけど念のためだ。
「ゴブリン、手伝ってくれ」
「ギィ」
リーダー格のゴブリンが頷き、残りの二匹も動き出す。
ゴブリン達と共にフィールドを探索したが、特に変化はなかった。
先ほどと同じ。強いて言えば、俺達が獲得したアイテムが『無い』状態になっていたくらいか。アナウンスの通りだ。
「おかしいな、静かすぎる……」
そろそろ何か出てきても良いだろうに。
モンスターの出現に何か条件でもあるのか?
するとフィールドの外で一斉に鳥たちが飛び立つのが見えた。
「……ギッ!?」
鳥たちの羽ばたきに呼応するように、ゴブリン達が急に慌てだした。
ともすれば怯えているようにも見える。
「どうした?」
その瞬間、異変に気付く。
カタカタと、地面が揺れていた。
その揺れは次第に大きくなってゆく。
カタカタ。カタカタ。カタ、カタ……カタ。
……揺れが収まった。
「……」
一瞬の静寂。
そして次の瞬間――ズドォンッ! と遠くの木が噴水のように打ち上げられた。
「なっ……!?」
なんだ? 何が起こった?
ズドォンッ! ズドォンッ! ズドォンッ! と。
木が打ち上げられるたびに、地鳴りは強く響き、何かの気配が伝わってくる。
何かがフィールドに現れたのだ。
いったい何が? 決まっている『モンスター』だ。
だがこの感じるプレッシャーはなんだ?
ゴブリンの比じゃない。背筋がゾクゾクと、冷や汗が止まらない。
「ッ……!」
反射的に、俺は横に飛んだ。
「ギィ!」
ゴブリンもそれに倣って横へ飛ぶ。
しかし後続のゴブリン二体は反応が遅れてしまった。
「ギ……ギャピッ!?」
「ギキャ……!」
遅れたゴブリン達は何かにぶつかって弾けた。
それは弾丸のように俺達の居た場所を通過し、背後にあった岩すらも軽々と砕いた。
見えなかった。ただ巨大な何かが猛スピードで通り過ぎた。
そうとしか思えなかった。
「ブモォォォォ……」
土煙が晴れる。
爛々と赤い瞳を輝かせ、ソレは俺達の前に姿を現した。
マップにもソレが対象モンスターであることを示す赤いアイコンが表示されている。
「なんだありゃ……?」
ソレは自動車ほどの大きさもある巨大な猪だった。
表面は金属の鎧に覆われ、鼻の横からはマンモスのような角が生えている。
明らかにゴブリンとは格が違うであろうことは容易に想像できた。
ピロンと頭の中に響く効果音。
『モンスター図鑑が更新されました』
「更新……?」
このタイミングで?
だが今は少しでも情報が欲しい。
俺は出来るだけ目の前のモンスターから視線を逸らさずに画面を操作する。
『モンスター図鑑№2狂鎧大猪
グランバルの森に生息する中級モンスター。
知能、視力は低いが、嗅覚が非常に発達している
固い外殻を有し、強力な突進攻撃を行う。
旺盛な食欲で他のモンスターを餌にする
一度怒らせると、獲物が死ぬまで追い続ける
討伐推奨LV10』
「ッ……!」
その情報に俺は目を丸くする。
討伐推奨LV10……だと?
ふざけんな、LV1で勝てる相手じゃねえだろうが!
「ブモォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!」
猛烈なまでの死の気配が、巨大な獣の形を成して、俺達へと襲いかかってきた。