80.でもそういう仕様、嫌いじゃないよ
『おめでとうございます。メインストーリー5 『血塗られた養護院の闇を暴け』をクリアしました』
『活動実績を算出……完了』
『隠しアイテム回収率100%達成』
『実績 NPCがダメージを負わないを達成』
『実績 ハーフ・エルフを仲間にするを達成』
『実績 銃系武器の熟練度が八等級に到達するを達成』
『実績 勝利条件の変更を3回連続達成』
『実績 カードが5体以上、忠誠度が最良になるを達成』
『ステージの完全クリアを達成しました。追加報酬及びEXシナリオが解放されました』
『成功報酬 ポイント+50、終末の楽譜C、4,000イェンを獲得しました』
『追加報酬 ポイント+100、大空の欠片、嵐の欠片を獲得しました』
『経験値を獲得しました』
『LVが25から28へ上がりました』
『LVボーナス ポイント+30を獲得しました』
『ポイント交換が拡張しました』
『ショップが拡張されました』
『待機室が解放されました』
『メインストーリー5EXシナリオに挑戦しますか?』
『メインストーリー5EXシナリオはストーリーから完全に独立しているため、保留にすることが可能です』
『そのままメインストーリー6へ進行することが出来ます』
『いつでも挑戦することが出来ます』
『また、今回に限り挑戦回数が5回までとなります』
黒い空間に戻ると、いつものごとくアナウンスが鳴り響いた。
今回のポイントはレベルアップ分も含めて180か。
現金にして180万円分ゲットだぜ。
「レベルもあと少しで30か……」
大河さんの話ではLV30になれば、上級職が解放されるらしいからな。
……変質者の上位職。嫌な予感しかしないけど。
というか、晴嵐を仲間にすることも実績に含まれるのか。
やっぱり亜人がストーリーに強く結びついているのだろう。
「雷蔵、夜空に次いで忠誠度が最良になったのは……雲母と重戦士猿と騎士猿か」
名前も付けてないのに、重戦士猿と騎士猿の忠誠度が最良になってしまった。
……なんか、ごめんな。後でちゃんと名前つけるから。
雲母は逆に時間がかかったな。でも最良になってくれて嬉しい。
小雨は……まだ『普通』か。なかなかデレてくれない魚である。
待機室ってのも気になるけど、一番はやはり最後のアナウンスだ。
「……独立したEXシナリオ?」
どうやら今回のステージを保留にして、次に進むことが出来るらしい。
おまけに挑戦回数も5回というサービスっぷりだ。
毎回、毎回、EXステージは飽きさせないな。
めっちゃ内容が気になる。
「……気になるけど、まずは他の確認からだな」
少なくとも、今すぐ挑戦しなくてもいいのならば、まずは他を確認し、装備を整えてからでも問題ない。
EXシナリオは何があるか分からないからな。
「クリア報酬の終末の楽譜Cってのはどんなアイテムなんだ」
今回のストーリーで一番気になっていたアイテムだ。
早速確認する。
・終末の楽譜C
終末世界の力が込められた楽譜
A~Jまでの全部で10枚が存在する
楽譜を奏でることで、終末世界のモンスターの力が解放される
全ての楽譜を集めることで、終末の扉は現れる
うーん、相変わらず物騒な説明文だ。
とりあえず終末世界のモンスターの力が解放されるってことは、小雨をパワーアップさせられるってことでいいんだよな?
でも俺、譜面なんて読めないし、音猿にやってもらうしかないか。
……これ、奏でて大丈夫なやつだよな?
「しかし終末の扉、ね……」
呪い人形たちを召喚する魔女の心臓は説明文に終末の扉を開くのに必要なアイテムの一つとあった。
終末世界と関係あるのは間違いない。
終末の扉ってワードだけだと、世界が滅びそうな感じがするけど大丈夫なんだろうか?
まあ、その辺はおいておくか。
「待機室ってのはなんだ?」
調べてみるとヘルプに待機室の項目が増えていた。
・待機室
カードたちの休憩場
ポイントや通貨で様々な施設を作ることが出来る
待機室での時間経過は、派遣と同じ。
快適な待機室を作り上げて、カードたちからの忠誠度を稼ぎまくろう
こんな感じである。
ソシャゲあるあるだよな、こういう設備。
てか、バインダーがそれに該当すると思ってたら違うのか。
……今更だけど、バインダーってどういう仕組みになってんだろう?
「まあ、とりあえず作ってみるか」
『待機室の作成には1ポイントが必要です』
『ポイントを消費して待機室を作成しますか?』
1ポイント必要なのか。
まあ、それくらいなら問題ないか。
俺はイエスを選択する。
『待機室を作成――ウィーン、ガッシャン、ギギギ……ギュィーン、ガガガ』
『ピコン――ピコン――接続――接続――成功……ベベンッ』
『おめでとうございます。待機室を作成しました。パンパカパーン』
「何その効果音!?」
今までそういうのなかったじゃん!
え、なに? 新しくそういう仕様が追加されたの?
『一定数以上のユーザーからアナウンスが機械的でつまらないと苦情がありました』
『今後はツンデレボイス、メンヘラボイス、ポンコツメイドボイス、お兄ちゃん大好き妹ボイス、イケメン執事ボイス、俺様アイドルボイス等、様々なアナウンスボイスを選択することが可能になります』
『今後も定期的にアナウンスボイスを追加していきます』
『どうぞ異世界ポイントを快適にご利用ください』
ユーザーへの配慮!?
このアプリ、そういうのちゃんとあるんだね!
てっきりそういうの無視されると思ってたよ。
「でもなんで? なんでそういう方向には思い切りが良いの?」
あの不朽の名作が満を持してリリース開始! って謳ってた割に思ったよりもユーザーからの反響が得られず、変な方向にばかりアップデートしていくソシャゲ味を感じる……。
これ大丈夫か?
ある日、突然『異世界ポイント』サービス終了みたいなことないよね?
てか、ボイスの種類!
苦情入れたユーザーたち、ぜってーアホだろ! でもありがとな!
そういう仕様、嫌いじゃないよ!
「と、とりあえず待機室に入ってみよう……あれだよな?」
いつの間にか、黒い空間の向こうに白い扉が出現していた。
その上には『待機室』と表示されている。
俺は扉を開けて、待機室へと入った。