甲子園通算41勝の名将の手は小刻みに震えていた。野球部内での暴力事案を巡り、昨夏の全国高校野球選手権大会を史上初めて途中で出場辞退した広陵高(広島市)の中井哲之前監督(64)が1年ぶりに公の場に姿を現した。部の責任者として当時の対応を謝罪しつつ、第三者委員会による〝断罪〟には不満も。渦中に教え子のプロ野球選手から連絡があったと明かし、今後の身の振り方にも言及した。1時間以上に及んだ会見を振り返る。
反省の弁の一方で
「では、よろしいですか…」
8月7日、広島市中区の広島県庁。集まった約30人の報道陣の視線が一点に集中した。手が震える中井氏。手元の原稿がうまくめくれないのだ。後に、極度に緊張していたと明かしたが、選抜高校野球大会を過去2度制し、幾人もの選手をプロに送り出した名将の姿とは思えなかった。
暴力事案や学校側の対応がSNSで批判され、辞退を余儀なくされたのは昨年8月。以後、中井氏が自ら経緯を説明するのはこの日が初めてだった。今年7月末に広陵高を運営する学校法人を辞め「ある程度発言できるようになった」という。
広陵高の第三者委は6月に公表した報告書で「集団暴力」によるいじめがあったと認定。中井氏が被害生徒に対し、事案を高野連に報告すればチームの不利益につながるとの趣旨の発言をしたとされる。