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「日本こそがグローバル金融の架け橋になれる」|GFTN CEOが語るフィンテック・イノベーションの未来

画像はShutterstockのライセンス許諾により使用

グローバル・ファイナンス&テクノロジー・ネットワーク(GFTN)は、2024年にシンガポール金融管理局(MAS)によって設立された非営利団体で、テクノロジーを活用したグローバルな金融エコシステムの構築を目指している。

Japan Fintech Weekのメインイベントとして東京でフォーラムを開催し、金融庁や国内取引所グループなどとの連携を通じて、国際的な官民対話の場を生み出してきた。

Japan Fintech Week 2026とは

金融庁が主催するフィンテック関連の大型イベント週間。2026年2月24日〜3月6日に都内各地および地方都市で開催され、国内外のフィンテック関係者が一堂に会する。東京GFTNフォーラムは同週間のメインイベントの一つ。

2026年2月24日〜27日に開催される東京GFTNフォーラムでは、「ファイナンシャルコリドー(金融回廊)」をテーマに、エージェンティックAI、量子コンピューティング、デジタルアセットといった先端領域を深掘りする。

CoinPostは、GFTNグループCEOのソプネンドゥ・モハンティ氏にインタビューを実施。シンガポール金融管理局初代CFO(チーフ・フィンテック・オフィサー)としてシンガポールを世界有数のフィンテックハブに押し上げた同氏に、日本市場の展望やGFTNの戦略構想について聞いた。

ソプネンドゥ・モハンティ氏
ソプネンドゥ・モハンティ(Sopnendu Mohanty)
GFTN 共同創業者 兼 グループ最高経営責任者(CEO)
GFTNの共同創業者兼グループCEO。シンガポール金融管理局(MAS)初代チーフ・フィンテック・オフィサーとして約10年間務め、即時送金インフラ「PayNow」の開発や「シンガポール・フィンテック・フェスティバル」の創設を主導。MAS着任前はシティグループで約20年間勤務。現在はシンガポール科学技術研究庁(A*STAR)取締役も兼任。

GFTNのミッションとビジョン

GFTNは「フォーラム、アドバイザリー、プラットフォーム、キャピタル」の4つの事業を展開されています。これらがどのように連携して金融セクターの変革を推進しているのか、またGFTNが目指す将来像についてお聞かせください。

この1年で事業の柱を見直し、いまは「コネクション(人、アイデア、ソリューション)を結びつけること」を中心に据えています。

その中核がGFTNフォーラムです。メインイベントに加え、昨年新たに「Black Swan Summit(BSS)」というフォーラムを立ち上げました。すでにアルメニア、パース(オーストラリア)、インドの3都市で開催しており、各地域の重要課題をめぐる対話と、注目地域から生まれるイノベーションの発掘を進めています。さらに「GFTN Select」と題したイベントも始動し、世界各都市でその地域固有のエコシステムや課題にフォーカスしたイベントを展開しています。

フォーラム以外では、アドバイザリーとプラットフォームを掛け合わせた「ソリューション」を提供しています。戦略的な助言と実用的なデジタルツールを組み合わせ、目に見える成果につなげるアプローチです。代表例が独自のリサーチ・アドバイザリーツール「ALFIN」で、フォーラムでの議論から得た知見とデータ分析を統合しています。

また、フィンテック企業のマッチングプラットフォーム「APIX」との協業でインド・オディシャ州のハッカソンを開催するなど、各市場のパートナーと連携したソリューションの現地展開にも取り組んでいます。

キャピタル部門では、昨年11月に日本のSBIホールディングスと提携して成長投資ファンドを立ち上げました。さらにACCION(金融包摂を推進する国際NPO)との提携を通じて、新興国の金融サービスが届いていない層を支援するデジタルファイナンス企業への資金供給も進めています。

これらが一体となり、フィンテック産業を一気通貫で支える体制を築いています。GFTNは「エコシステムビルダー」として、公益に必要なあらゆる要素を集約し、金融包摂を推進する。私たちのミッションは「Innovating Finance, for everyone(すべての人のために金融をイノベーションする)」です。

なぜ日本市場なのか

GFTNは世界各地でフォーラムを開催されていますが、日本を重要な市場として位置づけています。その理由と、日本の金融・フィンテック市場をどのように評価されていますか。

日本がGFTNにとって重要な市場である理由は、市場規模、制度の安定性、そして金融イノベーションを推進するという明確な政策姿勢がそろっている点です。

なかでもシンガポール・日本間のコリドー(国際連携の枠組み)は、我々がこれまで構築してきた中でも最も成功したものの一つです。長年にわたる規制面の協力関係を土台に、より広いアジア地域へと自然に拡大してきました。このコリドーでは、戦略的投資やBaaS(Banking-as-a-Service=銀行機能のAPI提供)、エンベデッドファイナンス(非金融サービスに金融機能を組み込む仕組み)の新たなモデルを通じて、国境を越えたビジネス機会の創出が加速しています。

日本の金融・フィンテック市場にはいくつかの際立った特徴があります。成熟した資本市場と信頼性の高い金融システムを備えている一方、生産性向上やデジタルトランスフォーメーションへの危機意識も高まっている。最近の政治・経済の動きは政策の継続性を後押しし、成長・金融レジリエンス(回復力)・構造改革を重視する方向に向かっています。フィンテックやデジタルファイナンスの担い手にとっては、先が読みやすく投資しやすい環境が整いつつあるということです。

イノベーションが「規制に縛られる」のではなく「政策に後押しされる」この関係性こそ、GFTNがフォーラムの展開先を選ぶ際に最も重視するポイントです。

加えて、インド・日本コリドーも勢いを増しています。三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)や三井住友フィナンシャルグループ(SMBC)といった国内の大手銀行がインドでのプレゼンスを拡大しており、GFTNとも緊密に連携しています。両行はインドでの人材育成や体制整備を支援しており、今後も両市場間で協業を深めていく方針です。

2026年東京GFTNフォーラムの見どころ

2026年の東京GFTNフォーラムのテーマやフォーカスエリアについてお聞かせください。特にステーブルコイン、AI×金融、トークン化といった注目トピックや、スピーカーの構成について教えてください。

2026年のフォーラムには、大きく3つのテーマを設けています。

第1は「ステーブルコイン、トークン化と規制市場」です。日本は、ステーブルコインやトークン化商品が明確な規制の枠組みのもとで発展している世界でも数少ない主要国の一つです。円建てステーブルコインを決済・清算・クロスボーダー取引の基盤として位置づけるセッションや、トークン化された金融商品を次世代資本市場の構成要素として掘り下げるセッションを予定しています。特に債券、ファンド、仕組商品といった領域で、機関投資家レベルのトークン化をどう実現するかに焦点を当てます。

第2は「決済・銀行・保険・資本市場」です。AI×ファイナンスは実務家の視点を重視した主要テーマとなります。世界ではいま、AIが自律的に判断・行動する「エージェンティックAI」への移行が進んでおり、これが決済から保険、資本市場に至るまで、意思決定の自動化やリスク管理の高度化、業務フローの再設計を通じて金融の在り方を大きく変えようとしています。あわせて、量子コンピューティングが暗号技術や金融セキュリティに与える影響など、インフラ面の備えについても議論します。AIの導入はシステム全体の堅牢性と信頼の確保とセットでなければならない、業界全体でその認識が広がっています。

第3は「Capital Reimagined(資本の再構想)」です。世界有数の長期貯蓄を抱える日本ならではのテーマで、国内に眠る膨大な資本がどこに向かい、何がボトルネックになっているのかを探ります。政策・技術・市場の仕組みを通じて、国内外の生産的な投資へ資本をどう振り向けるか。アセットマネージャーの役割や投資プロセスへのAI活用、NISA(少額投資非課税制度)が個人の資本市場参加をどう後押しするかといった論点を取り上げます。

スピーカーの顔ぶれとしては、官民双方のリーダーがバランスよく登壇します。規制当局側からは金融庁に加え、GFTN取締役会長でMAS前長官のラヴィ・メノン氏が参加。また、勢いを増すインド・日本コリドーを象徴する形で、インド貿易振興機構(ITPO)会長のジャウェド・アシュラフ氏も登壇予定です。同氏は駐シンガポール高等弁務官や駐仏大使を歴任したインド外交の重鎮です。

シンガポールの経験を日本へ

MASのチーフ・フィンテック・オフィサーとしてPayNowやシンガポール・フィンテック・フェスティバルを牽引された経験を踏まえ、日本の金融機関、スタートアップ、規制当局にどのようなアドバイスをお持ちですか。

金融機関に向けては3つのポイントがあります。第1に「相互運用可能な公共インフラ」への注力。PayNow(シンガポールの即時送金基盤)のようなリアルタイム決済システムは、業界共通のインフラがコスト削減や現金離れ、そして新たなビジネスモデルの創出につながることを示しました。

第2に「フィンテックをベンダーや競合ではなくパートナーとして扱う」こと。シンガポールでは銀行がAPIXなどのプラットフォームを介して数百社のB2Bフィンテックと連携し、すべてを自前で構築するのではなくデジタル化を加速させています。フィンテック側はニッチな領域で、銀行が自ら手がけるよりも安く効率的にソリューションを提供できます。

第3に「人材と組織文化への投資」。テクノロジーの導入が成果につながったのは、銀行がリスキリングに取り組み、デジタル・データ活用型のサービスにインセンティブを合わせたからです。

スタートアップに対しては、まず「公共インフラの上に乗る」ことを勧めます。シンガポールの多くのフィンテックは、PayNowやデータ交換基盤、規制サンドボックス(新サービスを限定的な条件下で試験運用できる制度)を活用して成長しました。独自にクローズドなエコシステムを構築するよりも、既存の基盤に乗る方が早い。

加えて「初日から海外展開を視野に入れる」こと。APIXのようなプラットフォームはASEANやグローバル市場への接続を前提に設計されており、国内市場が小さくてもグローバルに通用するフィンテックハブになれることを証明しています。そして「B2Bとディープテックに軸足を置く」こと。シンガポールのフィンテックエコシステムの多くは、コンプライアンス、AI、クラウドネイティブバンキング、クロスボーダー決済といった領域で金融機関にテクノロジーを提供するB2Bモデルです。

規制当局に対しては「業界と共に作る」姿勢を提言します。MASは専門のフィンテック部門を設置し、ブロックチェーンを活用した国際決済の実証実験「Project Ubin」や決済インフラの実験を重ね、サンドボックスを通じて業界と一緒に新しいモデルを検証してきました。書面によるパブリックコメントだけに頼るのではなく、銀行・フィンテック・政策立案者が一堂に会し、ソリューションの発見・設計・実装を協働で進めるプラットフォームの活用が鍵だと考えています。

日本の企業・政府への期待

東京GFTNフォーラムを通じて、日本の金融機関、スタートアップ、規制当局にどのような成果を期待されていますか。また、グローバルな金融イノベーションにおいて日本が果たすべき役割についてお聞かせください。

金融機関には、ASEAN・インド・グローバルネットワークのパートナーとの間で「ファイナンシャルコリドー(国際金融回廊)」の中核プロジェクトに取り組んでいただきたい。クロスボーダー決済、資本市場、アセットマネジメントの領域が特に有望です。トークン化商品やステーブルコインを活用した決済基盤、AIによるリスク管理やポートフォリオ運用など、フォーラムで取り上げる分野において、実証段階から本格的な導入へとギアを上げてほしいと考えています。

スタートアップには、フォーラムを海外パートナーとの共同開発を始めるきっかけにしてほしい。ASEAN、インド、中東、欧州のプレイヤーと手を組み、デジタルアセットやAI in Finance、エンベデッドファイナンスの領域でソリューションを共同開発する。そのとき重要なのは、日本が抱える構造的な課題(高齢化、生産性、レジリエンス)に真正面から応えるソリューションであることです。

規制・行政機関には、データ、AI、サイバーセキュリティ、量子耐性(量子コンピューティング時代にも安全性を保つ設計)といった分野で、各国の関係機関との連携をさらに深めていただきたい。フォーラムを起点に、エージェンティックAI、トークン化、次世代決済に関するテーマ別サンドボックスや共同タスクフォースを立ち上げ、NISAなどの制度を通じた長期資本の活用に向けた国際的な協調を打ち出していただければと思います。

グローバルな金融イノベーションにおいて日本が果たすべき役割について、私のビジョンは明確です。日本は「コリドー・アーキテクト」つまり国際金融回廊の設計者になるべきだと考えています。北アジア、南アジア、ASEAN、グローバル市場をつなぐ金融・技術面のつながりを設計し、その要として機能する。他国が作ったシステムに参加するだけでなく、自らシステムを設計する側に立つということです。

日本は「規制の裏付けがあるデジタルアセット経済」のモデルケースにもなりえます。ステーブルコイン、トークン化商品、次世代の市場インフラが、慎重さと透明性、そして消費者・投資家保護を伴ってスケールする場所です。AIと量子コンピューティングの時代においても、安全で検証可能であり、高齢化社会のような長期的な社会課題に寄り添った形で先端技術を展開する。そうした「信頼のインテリジェンス」の分野で、日本はリーダーシップを発揮できるはずです。

GFTNフォーラムとFintech Weekを通じて、日本が世界の金融対話をリードする存在になることを期待しています。政策立案者、金融機関、起業家、投資家が東京に集い、単に議論するだけでなく、次の10年の国際金融回廊を設計し、具体的な連携の約束を持ち帰る。そんな場にしていきたいと考えています。

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