暗号資産業界が「投機の場」から「グローバル金融インフラ」へと変貌しつつある今、13年にわたって事業を続けてきた暗号資産取引所Gateが改めて注目を集めている。
2026年3月25日、横浜・ぴあアリーナMMで開催された「JAPAN BITCOIN FUTURE FORUM 2026(JBFF 2026)」に登壇したGate最高事業責任者(CBO)のKevin Lee氏に、CoinPostが単独インタビューを実施。グローバル戦略や日本市場への取り組みについて話を聞いた。
Gateグループは現在、5,000万人※1を超えるユーザーベースを持ち、現物・先物取引にとどまらず、DEX、AI、株式・FX・コモディティのトークン化まで事業領域を広げている。世界各国でのライセンス取得を進めながら、Google PayやApple Payなどの既存プラットフォームとの連携を通じて、暗号資産になじみのない層への普及を目指している。
Gateの競争優位性はどこか
先物市場の強化は、約2年前から明確に目標として掲げていたものです。伝統的金融の世界でも、現物市場と先物市場は表裏一体で成り立っています。先物取引には原資産や担保が必要で、担保を預けているプラットフォームで自然と現物取引も行われる。
そういう構造があるからこそ、私たちは現物取引所として出発しながら、次のステージに向けて先物を強化してきました。2025年にその目標を達成できたのは、まさにチームの努力の賜物です。
競争優位性という点では、1つは革新的なプロダクトと適切な市場投入タイミングが挙げられます。これまでGate TradFiやGateClawなどの最先端のプロダクトやサービスを、ユーザーが必要とするタイミングでリリースしてきました。
また最も重要な競争優位性としては、Gateが13年間にわたって業界に存在し続けてきたという事実が大きいと思っています。冬の時代を含む数々の相場サイクルを乗り越えてきた実績は信頼の証です。安心して資産を預けられる取引所であるからこそ、ユーザーはその資産を担保に先物を取引したり、現物や各種プロダクトを利用したりする。すべての起点は、長年をかけて積み上げてきたブランドへの信頼にあります。
マルチアセット戦略の核心とは
技術的には以前からほぼあらゆる資産をトークン化できる準備が整っていました。ただ、規制環境の整備が追いついていなかった。ここへきて各国の規制当局が暗号資産に対してより友好的なスタンスを取り始めたことで、コモディティや株式、株価指数などをトークン化する絶好のタイミングが訪れていると感じています。
もう一つ重要な背景があります。暗号資産市場が落ち着いている局面では、ポートフォリオを分散させたいというニーズが高まります。金や原油が上昇していれば投資したいと思っても、従来はいったんビットコインを売って法定通貨に換え、別の証券会社で買い直す必要がありました。
それが今では一つのプラットフォームで完結できる。ユーザーにとってはシームレスな体験になりますし、プラットフォーム側にとっても資金の流出を防ぐことができます。ユーザーにより健全な分散投資の手段を提供しながら、エンゲージメントも高め続けられる。それがマルチアセット戦略の核心です。
※8 日本国内でのこれらサービスの提供は行っておりません。
取引所というのは、あくまでも売買を仲介する「場」です。もちろんインキュベーター(事業成長を促す支援組織)として有望なプロジェクトを選定・支援する役割も担っていますが、どのプロジェクトが10倍・100倍になるかを事前に見通すことは誰にもできません。私たちが目指しているのは、プロジェクトに公平に上場の機会を与え、ユーザーが判断できる環境を整えることです。
もちろん、新規上場後にパフォーマンスが振るわないプロジェクトもあります。でもその半年後に市場価格が急騰するかもしれない。予測は難しいものです。ただ確かなのは、アルトコインには新しいナラティブが求められているということ。DeFiサマーもNFTゲームも、大きな盛り上がりを見せながら収益化の面では課題を残しました。次のサイクルで何がキーワードになるかは分かりませんが、この業界はいつも誰かが想像もしなかったブロックチェーンの使い方を見つけてくる。「なぜ思いつかなかったんだ」と後から膝を打つような発見が、必ず出てくると思っています。
ライセンス取得を加速させる「先手戦略」
バランスという発想はなく、常にコンプライアンスが最優先です。まず規制に準拠することありきで、その上で事業を展開する。この順番は絶対に変わりません。
「なぜそんなに素早くライセンスを取得できるのか」とよく聞かれますが、秘訣は早期着手です。ここ1〜2年で成果として表れているライセンスの多くは、実は3〜4年前から規制当局との対話を積み重ねてきたものです。早い段階から動いているからこそ、今の結果があります。そして現在も、来年や2028年に発表されるであろう取り組みに向けて、すでに水面下で動いています。スピードの正体は、実は先手を打ち続けることにあります。
CEXとDeFi、無期限先物DEXの共存
無期限先物DEXが市場シェアを取り込んでいるのは事実です。ただ、中央集権型取引所と分散型取引プラットフォームは、本質的に異なるユーザーに対応しています。暗号資産市場全体が拡大しているなかで、それぞれの場で異なる需要が生まれているわけです。どちらが優れているという話ではなく、どちらも必要とされています。
だからこそ私たちはGate DEXも運営しています。ミリ秒単位のデータフィードを求めるトレーダーはDEXを選ぶかもしれない。それならGate自身のDEXを使えばいい、という考え方です。
銘柄上場の観点でも同じことが言えます。昨年だけで1億6,000万件以上のトークンが分散型プラットフォームでローンチされました。CEXでそれを全部処理するのは不可能ですし、そうすべきでもない。CEXはデューデリジェンスを行い、プロジェクトの質を見極めてリスティングする。それがユーザー保護につながります。一方のDEXはパーミッションレスな機会の平等を担う。役割が違うだけです。
私たちはもう自分たちを「中央集権型取引所」とは呼んでいません。DEXもやる、AIもやる。5,000万人以上のユーザーがいれば、ニーズも当然バラバラです。クレジットカードが欲しい人にはカードを、無期限先物を取引したい人にはその環境を、F1・サッカーなどのエンタメを楽しみたい人にはそれを提供する。すべての需要に応える統合プラットフォームを目指しています。
次の10億ユーザーへ:B2Bパートナーシップで「クリプトを意識させない」体験を
Gateとして直接ユーザーを獲得する努力を続けており、現時点で5,000万人を達成しています。10億には遠いですが、そのギャップを埋めるのは、B2Bパートナーシップだと考えています。Google Pay、Apple Pay、Telegramのように、すでに10億人以上のユーザーを抱えるプラットフォームと連携することが、最も現実的なアプローチです。
先日、香港のセブンイレブンでこんな場面がありました。「ビットコインで支払えますか」と聞いても当然断られます。ところが「Google Payは使えますか」と聞くと、何の問題もなく通りました。実際にはGateカードをGoogle Payに登録して支払っているのですが、店員も私もその場で暗号資産に触れることは一切なかった。こうした体験こそが、私たちの目指す姿です。
ユーザーに「ウォレットアドレスって何?」と考えさせない。「iPhoneはありますか?」で始まるような、クリプトを意識させない体験をいかに設計できるか。そこが次の10億ユーザー獲得のカギです。
日本を「アジア太平洋の独立したハブ」として重視する理由
私は伝統的金融業界に15年いましたが、最初の海外出張先が日本でした。当時4カ月ほど日本に滞在し、この国の金融市場、経済、そして社会と文化の独自性を肌で感じました。その経験があるからこそ断言できます。
中東であればドバイをハブに、ヨーロッパであれば規制環境の整った国をハブに据えるという戦略は理解できます。でもアジアにおいては、日本がそれと同格の独立したハブになるべきだと思っています。Gateグループでは、日本市場の規制に対応すべく、2024年末にCoinMaster社を買収し、Gate Japan株式会社へ商号変更の上、日本国内における暗号資産交換業の展開準備を進めています。
現地に根ざした人材を置き、文化と制度を深く理解した上で市場に入っていく。Gateにとって日本は、単なる一市場ではなく優先的に攻める市場であると考えています。
ビジネスの観点からも、コンプライアンスの観点からも、こうした動きは大歓迎です。規制当局は慎重に時間をかけて対応します。それは「正しくやりたい」という意思の表れであり、批判すべきことではありません。
重要なのは、日本の規制当局が業界とのオープンな対話を続けてきた点です。さらに言えば、アジア各国の規制当局はお互いに情報交換をしながら、より整合的なフレームワークに向けて動いています。日本の規制変更が孤立した動きではなく、グローバルな潮流と連動している点に、強い安心感を覚えます。2028年に向けてどう展開するかを注視しながら、私たちも準備を進めていきます。
規制の整備が進めば、日本ならではの強みがさらに輝くはずです。強力なIP、優秀なクリエイター、信頼性の高いブランドが規制の後押しを受けてグローバルなWeb3エコシステムと結びついたとき、日本が世界にもたらす価値は計り知れません。
日本へのメッセージ
私はSNSでも、カンファレンスでも、オフラインのイベントでも、できるだけ多くの場所に顔を出すようにしています。ただ「話す」だけでなく、「聴く」ことが目的です。日本の皆さんから、率直な声を聞かせてほしいと思っています。