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業界首位を超えた月も Aster CEO、設立1年の軌跡と独自戦略を語る

画像はShutterstockのライセンス許諾により使用

この記事のポイント
  • プライバシー重視の独自レイヤー1「Aster Chain」が本稼働
  • CEOレナード氏が設立1周年の成果と日本戦略を語る

Aster設立1周年を迎え、CoinPostはAster CEOのレナード(Leonard)氏に独占インタビューを実施した。過去1年間のブランド統合の歩み、独自レイヤー1 (仮想通貨の取引や記録が直接行われる基盤となるメインのブロックチェーン)構築の戦略的背景、そして日本市場への取り組みについて詳しく話を聞いた。

この1年間に起きたこと

過去1年を振り返り、レナード氏は3つの節目でAsterの歩みを語った。

第一の節目:取引量の記録更新。

Asterブランドが正式にデビューした当初、外部ではハイパーリキッド(Hyperliquid)の地位は揺るがないと見られており、新規参入者への市場の期待は総じて低かった。しかし、プラットフォームの取引量は2025年9月に爆発的な成長を遂げ、同月の月間無期限先物取引量でハイパーリキッドを一時上回り、業界首位に躍り出た。レナード氏はこれを「適切なタイミングで成長領域に参入できた」と表現した。

第二の節目:TGEとブランド転換。

2025年9月17日、ASTERトークンが正式に上場した。トークンは0.03ドルからスタートし、1週間で約21倍、時価総額は28億ドルを突破、プラットフォームのユーザー数は200万人を超えた。

レナード氏は、TGE(トークンの初回公開発行イベント)前にチーム内でローンチ延期を議論したことを率直に認め、「まだ製品に改善の余地がある」という判断があったと明かした。しかし最終的には実行速度を優先することを選択し、その判断は正しかった。TGEの実際の評価額は市場予想を大きく上回り、分散型デリバティブ取引所全体の再評価を促すことになった。

APXからAsterへのブランド転換も、この過程で完了した。もともとAPX FinanceはAsterの前身となる分散型先物取引プラットフォームであり、Astherusとの統合を経て、2025年3月31日に正式にAsterとしての新たなブランドをスタートさせていた。

 

第三の節目:レイヤー1の稼働。

Aster Chainは2025年第4四半期に正式稼働した。これはインフラレベルでプライバシー機能を組み込んだ、現時点で市場に数少ないレイヤー1プロダクトの一つであり、レナード氏がオンチェーン取引の大衆普及に向けた重要な一歩と位置づけるものだ。

 

この1年の総合的なパフォーマンスについて、レナード氏の自己評価は「期待をやや下回った」というものだった。

ただし彼が強調するのは、これは成果が不十分だったということではなく、プロジェクトの成長とともに、外部・内部双方のAsterに対する期待値が同時に上昇しているということだ。このプレッシャーは、組織全体の危機感を保つ意味でむしろ好ましいと彼は語る。

レナード氏はこう述べた。「急成長するこの市場では、難題に対処するための『標準的なプレイブック』は存在しない。世間で言われるアドバイスの多くは、通常の状況にしか当てはまらない。ここに近道はない。自分がやっていることを信じて、ひたすら前に進むだけだ」

関連: DEX(分散型取引所)とは?|仕組み・主要DEX比較・使い方完全ガイド【2026年版】

なぜプライバシーを核心に据えるのか

オンチェーン・デリバティブ市場の競争は、過去1年で明らかに激しさを増した。流動性、取引体験、プロダクト設計、エコシステム拡張など、あらゆる面でプレイヤーが競い合っている。

レナード氏の見立ては明確だ。流動性競争においては、ネットワーク効果により資金は必然的に上位プレイヤーに集中する。DEXには地域や市場セグメントによる参入障壁がほぼ存在しないため、競争上の差別化は主にプロダクトに対する考え方や設計アプローチの違いから生まれるという。

Asterはプライバシーを一貫してコアバリューとして掲げ、そのために必要なトレードオフを受け入れてきた。レナード氏は、それがむしろAsterの競争上の優位性を形成し、長期的な競争を生き残る力になると考えている。この判断の具体的な実装が、独自レイヤー1であるAster Chainの構築だ。

レイヤー1を選んだ理由はいくつかある。第一に、機構レベルの取引は高い機密性を必要とし、大口注文が露出すれば先行売買や特定ポジションを狙った取引のリスクに晒される。レイヤー1を構築することで、インフラレベルでプライバシー機能を組み込むことが可能になる。

第二に、中央集権型取引所に匹敵する体験を提供するため、Aster Chainはブロック生成時間を50ミリ秒に設定し、目標TPSは10万以上としている。これは高頻度取引や高レバレッジのデリバティブ取引において不可欠な条件であり、現在の多くのL2がいまだ完全には解決できていない課題でもある。

第三に、独自のレイヤー1を持つことで、コンセンサスメカニズムから実行レイヤーまで深くカスタマイズでき、あらゆる最適化リソースを取引体験そのものに集中させることができる。

さらに、レイヤー1の自社構築はエコシステム拡張の基盤ともなる。より多様な資産種類を取り込み、単一ステーブルコインへの依存を減らし、より強固な分散型金融エコシステムを段階的に構築することができる。

Aster Chainメインネット稼働後、チームが最優先とするプロダクトの方向性は引き続きコア取引体験の向上だ。スリッページの低減、大口注文の約定力強化、注文プライバシー保護の充実。目標は、トレーダーがオンチェーンで初めて「これは中央集権型取引所より優れている」と感じられる体験を届けることだ。

レナード氏とそのチームは、DEX(分散型取引所)がいずれ取引の世界で主流になると確信している。そして「選択可能なプライバシー」こそが、そのプロセスを実現する鍵だと考えている。

チームが最も重視する「実質的な成長」

2026年に入り、Asterはエコシステム拡張に軸足を移しつつある。

Web3連携の面では、Asterが開発者向けに提供するインフラプロダクト「Aster Code」の最初の戦略パートナーとして、Binance Web3ウォレット、Trust Wallet、SafePal、Genius Terminal、Polarise、NOFA、Wallet V、ChimpX、VergeXなど、無期限先物取引エコシステムの多岐にわたる領域をカバーするパートナーが名を連ねている。外部チームはAster Codeをベースに独自の取引プロダクトを構築でき、内蔵のbuilder feeメカニズムを通じて収益の分配を直接受け取ることができる。

チームはWeb3の外にも展開を進めている。現在、複数のステーブルコインプロジェクトとWorld Liberty Financialに類似した協力モデルの検討を進めており、予測市場にも注目している。予測市場のユーザー層は無期限先物のトレーダーと高い重複があり、相乗効果を見込めるためだ。

Web2については、接触は主に金融会社に集中しており、最も多い関心事はAster上での市場開設や資産の上場だ。大手規制機関との提携は、コンプライアンス審査や部門承認などのプロセスに時間がかかるため進捗は遅いが、レナード氏は交渉が継続中であり、確定次第公表すると述べた。

ユーザーの入口面では、ユーザーの入口面では、中央集権型取引所のユーザーがオンチェーンへ移行しやすくするため、AsterはBinance Web3ウォレットと提携し、無期限先物取引の基盤となる技術を提供している。また、Binance Connectも統合しており、Binance Pay経由での法定通貨入金にも対応している。

なお、AsterはBinance Connectを統合し、Binance Pay経由での法定通貨入金に対応した。レナード氏は、Binanceエコシステムとの緊密な関係により、このような提携を効率よく進められると語り、今後もさらに多くの法定通貨入出金チャネルが追加される予定だと明かした。

成長指標の選択について、レナード氏の姿勢は実務的だ。チームが最も重視するのはアクティブアドレス数と取引量。

この2つの数字は、ユーザーが手数料を払ってプラットフォームを使う意志を示している。TVL(預かり資産総額)や開発者数はトークンインセンティブで短期的に引き上げることができるが、アクティブアドレスと取引量は本質的に、ユーザーがそのシステムに繰り返し対価を払うかどうかを示すものだ。実質的な成長を実現できてはじめて、プロダクトがユーザーの課題を本当に解決していると言えるとレナード氏は語る。

日本市場、高い壁とそれ以上の可能性

日本のDEX領域は現在も観察・待機の段階にあり、規制の枠組みはいまだ明確に整備されていない。

レナード氏は、日本の規制は従来から慎重で高い水準のコンプライアンスを求めてきたと指摘する。完全な枠組みが整う前は機関投資家の参加が難しい一方で、早期参入者にはより大きな余地が残されている。

枠組みが明確になれば、日本の規制体系は世界で最も明確で実行可能なものの一つになるとレナード氏は見ており、早期に参入したプレイヤーはより大きな恩恵を受けることになると語る。

政策環境がさらに整えば、機関資金のオンチェーン流入、優良な日本資産のグローバル流動性へのアクセス、CeFi・DeFiハイブリッド型プロダクトの登場なども期待される展開だ。

日本のユーザーが中央集権型取引所からオンチェーンへ移行するハードルは、各市場の中でも高い部類に入る。主な理由は2つある。一つはユーザー体験の面で、ウォレット管理の煩雑さやクロスチェーンへの理解の壁がユーザーの安心感を低下させていること。

もう一つは信頼モデルの転換で、ライセンスを持つ機関が責任を負う中央集権型モデルに慣れ親しんだ日本のユーザーが、セルフカストディ(自己管理)を受け入れるには時間がかかるということだ。

一方でレナード氏は、日本のユーザーは質が高く、資金規模も大きく、長期投資家の割合も高いと評価しており、日本は最も価値ある市場の一つだと述べる。日本における主な戦略は、無期限先物の独自の優位性を広め、「一部の取引はオンチェーンでしか効率的に実行できない」という認識を市場に根付かせ、真にニーズのあるユーザーから順に取り込んでいくことだ。

レナード氏は率直にこう語る。「Asterのグローバル戦略において、日本は最も参入しやすい市場ではない。しかし一度足場を固めれば、最も価値ある市場の一つになる。長期的に投資する価値は十分にある」

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