責任あるAI
基本的な考え方
楽天では、各事業内で幅広くAI技術が活用されています。AIを活用享受しながら、安全で信頼できる健全なインターネットサービスをステークホルダーの皆様に提供するには、強固なガバナンス体制の構築が不可欠です。大切なお客様の個人情報をはじめとする各種情報が損なわれないよう、生成AIを筆頭としたAIに入力する個人情報や機密情報を保護・管理し、急速に変化するAIの公平性の維持と、継続的な品質向上に努めています。中でも責任あるAI開発・活用には次のようなモデルを基に、安全な環境を整える活動を行っています。
マネジメント体制
楽天では、AIとデータ活用の密接な関係性を踏まえ、組織横断的な AIガバナンスシステムを構築しています。そして、これらの活動を統括するため「AI&データ委員会」を設置しています。本委員会では、AIリスクマネジメント、研究開発、セキュリティ&セーフティ、パブリックリレーション&パブリックポリシー、データ活用といった、AIガバナンスシステムにおける、五つの主要分野でのグループ横断の活動計画が承認され、進捗状況が報告されます。さらに重要な決定事項や課題については、コーポレート経営会議および取締役会に定期的に報告され、経営レベルでの戦略的方向性を確認するとともに、楽天のAIガバナンスにおける透明性と責任ある説明体制を確保しています。
AI倫理憲章
楽天は、2024年7月にAI倫理憲章を制定しました。AI倫理憲章は、AIの開発、運用、利用における倫理的な基準を確立し、ユーザーに信頼性の高いサービスを提供することを目的としています。楽天は、包括的な規則を定めることで、個人の権利とプライバシーを保護しながら技術革新を推進し、公平、公正かつ透明性のある方法でのAI活用を促進することに取り組んでいます。
楽天グループ AI 倫理憲章
楽天グループでは、人工知能(AI)の持つ計り知れない可能性と社会に及ぼす変革的な影響を認識し、責任ある「Rakuten AI」の開発、テスト、導入、活用に取り組みます。私たちのアプローチは、公正性、尊重、持続可能性、透明性、法令遵守などの普遍的な人間原則を掲げる「楽天主義の基本原則」と「楽天グループ企業倫理憲章」に根ざしており、同時にセキュリティとプライバシーの規程類を含む「楽天グループ規程(RGR)」に完全に準拠します。
私たちは、フィードバックに耳を傾けながら AI 倫理憲章を継続的に進化させ、世界中のステークホルダーとの協力を通じて、責任ある AI の未来を形成することを目指します。
- 原則1:現行法令を遵守し、未来の法律や規範の形成に寄与します
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第一に、私たちは各国・地域の関係法令を遵守し、高い倫理基準を維持します。公正な社会を追求していく中で、私たちは AI を活用し、犯罪組織や不法行為、道徳的に問題のある活動に対し、より効率的に対処します。
私たちは立法に関わる方のパートナーとなり、現在および将来における AI 技術の応用、可能性、潜在的なリスクについての理解を促進します。また、今日のニーズだけでなく、未来のニーズを予測し、先んじて対応するような法制度設計に寄与します。
- 原則2:人々をエンパワーメントする AI システムを設計します
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楽天グループは、テクノロジーは人間の創造力と独創性を高めるツールであるという世界観のもとで AI 活用を進めていきます。当社の AI システムは、この取り組みを前進させるために設計されており、従業員が業務を行う際やパートナー様がビジネスを拡大する際、そしてお客様が日常生活を送られる中でも、有用で信頼できる伴走者として機能するように構築します。
- 原則3:安全性を妥協しません
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私たちの AI 開発と運用において、構築するすべてのモデル、収集するすべてのデータセットおよび展開するすべてのサービスは、可能な限り安全、安心、信頼できるものであるよう、厳格に定義、開発、テスト、監視を行います。
これらの工程において、当社の AI サービスの制作と提供に関わるすべての人の安全を確保します。
- 原則4:信頼性と公平性に注力します
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信頼性は、お客様やパートナー様の満足を支える基盤です。私たちは、当社の AI ツールが常に信頼できる一貫した高品質な結果を提供できるよう努めます。また、すべての人が公平に扱われるべきであり、すべての AI システムが公正で偏見のないものであるべきだと考えています。そこで、データを厳格に保護し、不当なバイアス、差別、および偏見のない AIシステムを構築するためにデータを使用します。
- 原則5:透明性によって信頼を築きます
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透明性は、大切なお客様やステークホルダーとの信頼構築において中核をなすものです。私たちは、当社の AI モデルがどのように開発、テストされ、プロダクトやサービス全体にどのように活用されているか、明確でわかりやすい説明を提供します。また、サプライヤーと協力し、同様の説明責任を果たします。私たちは、顧客データの収集と使用方法について透明性を持ち、ユーザーがどのデータを共有するか、容易に管理できるようにします。
楽天グループの原則を実際に機能させるため、ガバナンス体制を確立し、責任ある AI の開発と活用を実践する企業風土を醸成します。
AIガバナンスの取り組み
AI利活用のための社内運用ガイドライン
楽天では、AIリスクへの取り組みの一つとして、AI活用のための社内ガイドラインを整備しています。このガイドラインでは、AIを活用する際に遵守すべき主要原則を概説し、AIサービスのユースケースや事業運営へのサービス実装に関する指針を提供しています。これらは他の原則と共に、従業員が責任を持ってAIを活用するためのロードマップとして機能することを目指しています。
従業員の意識向上
楽天ではさらなるAIリスクへの取り組みとして、社内でのAIの倫理的利用に関する理解と意識を高めるため、全従業員が参加する朝会(週に一度行う全社員参加の会議)での発表や、オフィス内に設置されているスクリーンを通じて、積極的に情報を発信しています。また、グループ全従業員を対象にAI利用ガイドラインに関するトレーニングも実施しています。情報発信や啓発活動を通じて、従業員のAIに関する意識向上を継続的に推進しています。
AIリスクマネジメント
関連部署との組織横断的な連携は、効果的なAIリスク管理を実施するうえで不可欠です。楽天では、AIリスク指標に従ったマネジメントを実施するための専門チームを社内に設置しています。このチームは、AIリスクのアセスメントを行い、リスクに対する対応策を提供することで、AIリスクの軽減を推進しています。さらに、AIをサービスに組み込むことやAI搭載ソリューションの活用を計画している事業部門向けに、グループで統一された相談窓口を設けています。相談窓口では、関連部門と連携し、楽天が安全で信頼性の高いAIサービスを開発できるかどうかや、利用されているAI技術の安全性を確保できるかどうかを評価します。これらの取り組みを通じて、楽天は一貫して高度に安全な環境でAI関連サービスを提供しています。
外部団体への貢献
楽天は、急速に変化するAI環境に適応し、社会に貢献するため、一般社団法人AIガバナンス協会、「G7広島AIプロセス」への参加を表明しています。
一般社団法人AIガバナンス協会では、AIを通じて社会的価値を実現し、マルチステークホルダーでの信頼を構築する活動に賛同することで、AIガバナンスを推進しています。楽天ではこれまでに、会員が参加するイベントにて発表を行い、各ワーキンググループに参加するなど、AIに関する政策や制度整備のあり方についての検討および政府への政策提言の一端を担いました。
また、これまでに楽天は、「G7広島AIプロセス」に基づく運用枠組みに対して、当グループの国際行動規範への準拠状況をOECD Webサイトにて、「G7 Hiroshima AI Process (HAIP) Transparency Reportとして一般公開しています。
G7 Hiroshima AI Process (HAIP) Transparency Report(英文のみ):
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