グレース・デイヴィッドソン

イギリス出身のソプラノ歌手、グレース・デイヴィッドソンの歌を聴くと、光明、機敏、純真といった言葉が思い浮かぶ。そして、彼女はそのクリスタルのような声質と驚異的な正確さを誇るテクニックの内側に、豊かな情感、知性、芸術性を秘めているのだ。1977年生まれのデイヴィッドソンは、幼い頃に歌の魅力にとりつかれ、シェフ見習いとして短期間働いた後、ロンドンの王立音楽アカデミーで学んでキャリアの基礎を築いた。彼女の並外れた技術と直感は、バロック音楽のレパートリーの中心にある鮮やかなムードのコントラストを、特にモンテヴェルディ、バッハ、ヘンデル、ヴィヴァルディの楽曲において、いともたやすく描き出すことを可能にしている。一方でデイヴィッドソンは、現役の作曲家たちとも実りある関係を築いており、トレント・レズナーの「Hurt」をエリック・ウィテカーによる編曲した作品や、ハワード・ショアの『The Lord of the Rings Symphony』、ジョン・ラターやHarry Gregson-Williamsの楽曲などでも印象深い歌唱を聴かせている。また、マックス・リヒターが大作『Sleep』の独唱者として招いたのもデイヴィッドソンだった。