そして父になる

ALLTIME BEST

劇場公開日:2013年9月28日

解説・あらすじ

是枝裕和監督が福山雅治を主演に迎え、息子が出生時に病院で取り違えられた別の子どもだったことを知らされた父親が抱く苦悩や葛藤を描いたドラマ。大手建設会社に勤務し、都心の高級マンションで妻と息子と暮らす野々宮良多は、人生の勝ち組で誰もがうらやむエリート街道を歩んできた。そんなある日、病院からの電話で、6歳になる息子が出生時に取り違えられた他人の子どもだと判明する。妻のみどりや取り違えの起こった相手方の斎木夫妻は、それぞれ育てた子どもを手放すことに苦しむが、どうせなら早い方がいいという良多の意見で、互いの子どもを“交換”することになるが……。2013年・第66回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に出品され、審査員を受賞した。良多を演じる福山は自身初の父親役。妻みどりに尾野真千子、斎木夫妻にリリー・フランキー、真木よう子が扮する。

2013年製作/120分/G/日本
配給:ギャガ
劇場公開日:2013年9月28日

スタッフ・キャスト

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受賞歴

第37回 日本アカデミー賞(2014年)

受賞

優秀作品賞  
優秀監督賞 是枝裕和
優秀脚本賞 是枝裕和
優秀主演男優賞 福山雅治
優秀主演女優賞 尾野真千子
最優秀助演男優賞 リリー・フランキー
最優秀助演女優賞 真木よう子
優秀音楽賞 松本淳一 森敬 松原毅
優秀撮影賞 瀧本幹也
優秀照明賞 藤井稔恭
優秀録音賞 弦巻裕
優秀編集賞 是枝裕和

第66回 カンヌ国際映画祭(2013年)

受賞

コンペティション部門
審査員賞 是枝裕和

出品

コンペティション部門
出品作品 是枝裕和
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(C)2013「そして父になる」製作委員会

映画レビュー

4.0 主役は、こども

2013年10月4日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:映画館

悲しい

興奮

幸せ

カメラが引いて遠景になり、エンドロールが流れ始めた時、「なるほど」という納得と、「え」という物足りなさがあった。是枝作品と思えば納得の幕切れ。とはいえ、もっと先まで見届けたい、という物足りなさも。それは、映画が進むにつれて彼らを身近に感じるようになり、そんな彼らに、突然別れを告げられた錯覚に陥ったせいかもしれない。
福山雅治演じるエリート・野々宮が、初めて負けを知る話。観終えた直後は、そう思っていた。けれども数日経った今は、むしろ、子どもたちをめぐるあれこれが瑞々しく思い出される。少し意地悪くいえば、二ノ宮の物語はありきたりだ。社会的には完璧な勝者だが、家庭の中では精彩を欠き、我が子とどう付き合えばよいのか図り兼ねている。いや、妻や両親とさえも、ぎこちない関わりしか持てないのだ。そんな彼の変化は確かに丁寧に描かれており、じわりじわりと観る者の胸をしめつける。けれども、二ノ宮だけに焦点を当てるのは片手落ちではないか。確かに最も大きな変化が生まれるのは彼だが、危うさを抱えながらも、表面は明るくお調子者の斎木(演じるはリリー・フランキー)側の物語も見たい、と思った。もちろん、セリフの端々や立ち振る舞い、住まいの様子から伺えるものは多々ある。それでもなお、もう一人の父である彼を、もっとくっきり描いてほしかった。そこが少々物足りない。
一方子どもたちは、とにかく素晴らしく、忘れ難い。「誰も知らない」のきょうだいたちや「奇跡」の兄弟を彷彿とさせる。
子どもの頃、よそのウチヘ行くことは、楽しみであると同時にスリリングでもあった。自家での当たり前が通用せず、別の当たり前が横行している驚きと不思議。ありきたりの日常生活が、宝探しになる。
よそのウチがうらやましい、⚪️⚪️ちゃんちならこうなのに、などとぼやきながらも、自家のルールに戻ってくる安心感。しかし、取り違えられた彼らは、そんな窮屈な安堵に戻れない。新たな当たり前の中に、突如居残りを告げられるのだ。このままなのだと分かったとき、期間限定ゆえのキラキラはあっという間に色褪せ、宝探しのワクワクは不安へと一変したはず。けれども、彼らは泣いたりわめいたりしない。そんな一過性のことをしても無駄だと、瞬時に悟ったのだ。そして、自分なりの方法で折り合いをつけていこうとする。その姿は、健気とかたくましいとかいじらしいとかいう、子ども向きの褒め言葉が似合わない。とにかく、圧倒されたというほかなく、身ぶるいを覚えた。
再び、エンドロール。ちょっと呆然としながらも音楽に心を鎮め、彼らのその後を慮った。家に入ったあとのやりとり、翌日、一週間後、数カ月後、一年後、十年後。成長に伴う困難ばかり思い浮かぶけれど、彼らはいつも・きっと幸せなはず、と願いを込めて思った。

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共感した! 10件)
cma

4.5 「父親」としての自分を重ねながら観ていた。

2013年10月3日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

知的

幸せ

私は、自分の子供“以外”の子供と対峙するときや、第三者が観ている前ではリリー・フランキー演じる斎木家パパ。
でも普段は不機嫌で、細かな所作にも口うるさく、周囲とうちとはレベルが違う一緒にするな、という仕事第一の福山演じる野々宮家のパパだ。

子供たちは明らかに斎木家の方が子供らしくノビノビしていて楽しそうだ。
リリー・フランキーがとても「子供との時間」を大切にしていたのが印象的だった。リリーが福山と父親同士で話す場面で印象的な台詞がいくつかある。
「そういうとこ、面倒くさがっちゃダメだよ。」
「父親かて取り替えのきかない仕事やろ。」
「琉晴には、やってあげてくれよ。」

身につまされる思いでみていた。
途中からとても落ち着いて観ていられず、自然と前のめりな姿勢に。

子供たちが途端に愛おしくなってきた。
久方ぶりに、まだ明るいうちに帰宅してみた。
子供たちがビックリして、でもまんざらでもなさそうだった。
あと子供たちと遊べる時間はそれほど多くないかもしれないが、今からでも「父になって」このかけがえのない時間を大切にしていきたいと思った。

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共感した! 4件)
momokichi

4.0 福山雅治を新境地へと導いた、是枝裕和監督の功績

2022年3月30日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会、映画館、TV地上波

第66回カンヌ国際映画祭のコンペティション部門に出品され、審査員賞を受賞した是枝裕和監督作。息子が出生時に病院で取り違えられた別の子どもだったことを知らされた家族が抱く苦悩、葛藤を描いたドラマで、主演に福山雅治を迎えた。
エリートサラリーマンで都心の高級マンションで暮らす良多と、取り違えの起こった相手方の斎木のコントラストが巧妙で、斎木をリリー・フランキーが演じているというのも一役買っている。
それぞれの妻を尾野真千子、真木よう子が担い、芸達者な面々が是枝監督のてのひらの上で躍動しているさまは圧巻だ。
是枝組の常連ともいえる故樹木希林さんの元気な姿や、「ワンダフルライフ」の井浦新の自然体の演技を確認することもできる。

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共感した! 2件)
大塚史貴

4.0 【83.3】そして父になる 映画レビュー

2026年5月16日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

是枝裕和監督による『そして父になる』は、2013年のカンヌ国際映画祭で審査員賞を受賞した作品であり、現代日本映画における家族劇の到達点の一つといえる。血のつながりか、それとも共に過ごした時間か——この普遍的な問いを、抑制された映像表現と繊細な心理描写によって描き出し、通俗的なメロドラマの枠組みを確実に超えている。同時に本作は、「成功」を至上とする父親像の限界や、階層間の断絶といった現代日本社会の問題を浮かび上がらせる点で、社会的な射程も備えている。
物語は「取り違え」という古典的モチーフに基づきながらも、安易な感動や劇的な和解に流れることなく、丁寧に構築されている。その中心にあるのは、二つの家族の対比である。エリート会社員の野々宮家と、地方で電器店を営む斎木家という対照的な生活が交錯することで、効率や成果を重視する価値観の裏にある空白が浮き彫りになる。
もっとも、この対比は一部でやや図式的にも映る。無機質な高層マンションと生活感に満ちた電器店という空間のコントラストは効果的である一方、都会=冷徹/地方=温情という構図をやや強調しすぎている側面もある。そのため、中盤以降の展開に一定の予測可能性が生じている点は否めない。ただし、子どもたちの無垢な視線や、親たちの感情の揺れを丁寧に積み重ねることで、物語は単なる類型にとどまらず、確かな人間的厚みを獲得している。
本作の中心にあるのは、福山雅治が演じる野々宮良多という人物である。自らの努力によって成功を収め、理想的な人生を築いたと信じる男。福山は前半において、その傲慢さと冷徹さを抑制の効いた演技で体現する。実子ではないと知らされる場面で見せる、感情を押し殺した表情は強い印象を残す。
後半に入ると、その人物像は徐々に揺らぎ始める。カメラのファインダー越しに息子の姿を見つめ直す場面では、これまで保ってきた仮面が静かに崩れ、一人の父親としての感情がにじみ出る。福山はスター性を前面に出すことなく、自尊心と父性のあいだで揺れる内面を説得力あるかたちで提示している。
助演陣も作品の厚みを支えている。尾野真千子は、母としての愛情と罪悪感の間で揺れる女性を、過度に演出することなく現実感のある演技で表現する。リリー・フランキーは、軽やかさと包容力を併せ持つ父親像を自然体で体現し、価値観の対比を際立たせる。真木よう子は生活に根ざした強さを持つ母親像を安定感をもって演じ、作品に地に足のついたリアリティを与えている。さらに樹木希林は、短い登場ながら、血縁を相対化する視点を提示し、物語に静かな深みを加えている。
是枝監督の演出は一貫して抑制的であり、観客の感情を過度に誘導しない距離感を保っている。瀧本幹也による撮影は、空間の質感そのものによって人物や関係性を語り、主題を視覚的に補強する。グレン・グールドによるバッハ《ゴールドベルク変奏曲》の使用も印象的であり、その整然とした旋律は、良多の価値観を象徴すると同時に、揺らぐ家族関係を静かに際立たせている。
血縁か時間かという問いに対し、本作は単純な答えを提示しない。終盤の分岐と合流を示すショットが示唆するように、人間関係はどちらか一方に収斂するものではなく、揺らぎの中で形作られていく。図式性という弱点を抱えつつも、それを補って余りある演技と演出の精度によって、本作が2010年代日本映画を代表する一本であることは間違いない。
【最終表記】
作品[Like Father, Like Son]
主演
評価対象: 福山雅治
適用評価記号と点: A(9)
助演
評価対象: 尾野真千子/リリー・フランキー/真木よう子/樹木希林
適用評価記号と点: A(9)
脚本・ストーリー
評価対象: 是枝裕和
適用評価記号と点: B+(7.5)
撮影・映像
評価対象: 瀧本幹也
適用評価記号と点: A(9)
美術・衣装
評価対象: 三ツ松けいこ
適用評価記号と点: A(9)
音楽
評価対象: バッハ(選曲)
適用評価記号と点: A(9)
編集(加点減点)
評価対象: 是枝裕和
適用評価点: +1
監督(最終評価)
評価対象: 是枝裕和
総合スコア:[83.3]

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honey