三陸沖地震 (2012年12月)
三陸沖地震 (2012年12月) | |
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地震の震央の位置を示した地図 | |
本震 | |
発生日 | 2012年(平成24年)12月7日 |
発生時刻 | 17時18分30.8秒 (JST)[1] |
震央 |
日本 三陸沖(牡鹿半島の東210キロメートル付近) 北緯38度1.1分 東経143度52.0分(北緯38度1.1分秒 東経143度52分秒) |
震源の深さ | 49 km |
規模 | 気象庁マグニチュード Mj7.3 / モーメントマグニチュード Mw7.3[2] |
最大震度 | 震度5弱:青森県 八戸市など |
津波 | 98 cm(石巻市鮎川)[3] |
地震の種類 |
海洋プレート内地震 逆断層および正断層型[4] |
地すべり | なし |
余震 | |
回数 | 8回 |
最大余震 |
2012年12月7日17時31分 (JST) Mj6.6[5]、Mw6.2、最大震度3 |
被害 | |
死傷者数 |
死者 3人 負傷者 15人[6][7][8] |
出典:特に注記がない場合は気象庁[5]による。 | |
プロジェクト:地球科学 プロジェクト:災害 |
三陸沖地震(さんりくおきじしん)[9]は、2012年(平成24年)12月7日17時18分 (JST) に発生した地震である。東北地方沿岸を中心に津波警報および津波注意報が発表されたが2時間後に解除された[10]。宮城県石巻市鮎川で98センチメートル (cm)[3]の津波を観測した。東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)の余震とされる。
概要
宮城県 牡鹿半島の東210キロメートル (km) 付近の三陸沖の北緯38度1.1分、東経143度52.0分[5]を震源として発生した深さ49キロメートル[5]の地震で、地震の規模を示すマグニチュード(M)は7.3[5]と推定される。青森県、岩手県、宮城県、茨城県、栃木県で最大震度5弱を観測した[注 1][注 2][注 3]。
この地震は西北西・東南東方向に張力軸を持つ正断層型の断層によって引き起こされ、2011年(平成23年)3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)の余震とされている[11]。気象庁は地震のメカニズムについて、当初は「アウターライズ地震」としていたが、12月10日、「単純なアウターライズ地震ではない可能性が大きい」との見方も示した[12]。これはアウターライズ(海溝上縁隆起帯)付近における単一の破壊ではなく、複数の断層面が動いた可能性を指摘するもので、実際に今回の地震発生時には正断層型と逆断層型の2つの地震が続けて起きていたことが分かっている[13](後述の#メカニズムも参照)。
一方、津波警報が2011年(平成23年)4月11日に発生した福島県浜通りを震源とする地震以来、約1年8か月ぶりに発表された[10]。津波警報および津波注意報で避難所などに避難した人は宮城県で最も多く、一時避難者は合わせておよそ2万5000人に及んでいる[14]。
メカニズム
この地震は海溝軸付近を震源域として発生した太平洋プレート内部の地震、いわゆるアウターライズ地震である。また当初1つの地震とみられていたが精査の結果2つの地震がほぼ同時に発生したことが判明した[3]。
1回目の地震は17時18分22秒に牡鹿半島の東230 km付近の日本海溝の東を震源として発生した。発震機構は概ね東西方向に圧力軸を持つ逆断層型で、マグニチュードは2つめの地震の影響で決定できない。遠地実体波による震源過程解析ではMw7.2とされている。断層の大きさは20キロメートル四方、最大すべり量は3.9メートル (m)[4]。
2回目の地震は17時18分30秒に牡鹿半島の東210 km付近の日本海溝の西を震源として発生した。発信機構は西北西 - 東南東方向に圧力軸を持つ正断層型で、地震の規模はMj7.3。遠地実体波による震源過程解析ではMw7.4とされている。断層の大きさは長さ80 km、幅40 km、最大すべり量は4 m[4]。
地震による被害
津波
宮城県石巻市で津波により土嚢(どのう)が崩れた[8]。岩手県久慈市で津波から避難しようとして船で出港した男性が行方不明となり[7][8]、12日に発見され、死亡が確認された[6]。
物的損害
埼玉県さいたま市で老人福祉施設の配管が破損した[15]ほか、栃木県市貝町で小学校の天井のボードがずれた[16]。
宮城県仙台市の仙台市青葉体育館では天井板が2枚落下。この影響で、当日予定されていたbjリーグ・仙台89ERS対新潟アルビレックスBBの試合が中止となった[17]。
死傷者
宮城県丸森町で女性が地震に驚き、自宅で倒れて死亡。また、福島県飯舘村では男性が職場から避難しようとした際に倒れて死亡し、計2人の死者が出た[7]。千葉県習志野市で女性が梯子から転落して脊椎を骨折する[18]など、8県で計14人の負傷者を出した[8]。
地震の影響
交通
地震の影響により東海道[19]・東北・上越・長野新幹線(当時の通称)[20]や一部のJR東日本の在来線が点検のため運転を見合わせたが、地震による直接的な被害はなかった。東海道新幹線では10分後に運転再開した[21]。東北新幹線では21時に運転を再開している[22]。
また、高速道路で通行止めが各地で発生し[23]、航空機15便が欠航、仙台空港に着陸予定だった数機が折り返しや着陸空港の変更を行うなど陸、空の便に影響が出た[24]。
東北沿岸部では避難の車により各地で渋滞が多発し、幹線道路では信号無視や割り込みもみられた。仙台市青葉区のガソリンスタンドでは燃料不足を懸念したドライバーらにより最大400 mの車列ができた[25]。
インフラ
地震発生直後から青森県五戸町では223戸で停電が発生し、岩手県盛岡市ではガスが自動停止したとの電話が盛岡ガスに100件程度寄せられた[21]。
衆議院議員総選挙
- ※肩書は当時のもの
選挙運動のため街頭演説を行っていた野田首相は演説を取りやめ首相官邸に引き上げた。藤村修官房長官も飛行機で帰京した[26][27]。その他東北各地の候補者も遊説や演説会を取りやめた[28][29]。
原子力発電所
東日本大震災で大きな被害を出した福島第一原子力発電所では異常は見られなかったが、福島第二原子力発電所1号機の原子炉建屋内の圧力が若干上昇した[30]。女川原子力発電所では使用済み核燃料プールの水位異常を示す警報が鳴ったが異常は認められなかった[31]。午後5時過ぎには福島第一、福島第二、東通、女川、東海第二の各原発において異常が無かったことが確認された[32]。
メディア
発災当時、民放テレビ各局では夕方のニュースの時間帯であり揺れの発生から津波警報の発表まで、放送を予定されていた内容などが変更されリアルタイムで報道された[注 4]。また、NHK総合テレビでは『ゆうどきネットワーク』[注 5]、日本テレビ系列局では地域ごとの夕方ワイド番組または『news every.』の生放送中でもあった。
NHKや民放各局では視聴者に対して強い口調で津波からの避難を呼びかけた。NHKでは、津波警報に関する緊急ニュースを報道し、「津波警報が出ました!急いで逃げて下さい!」「東日本大震災を思い出して下さい!」などと緊迫感溢れる強い口調で、避難・警戒を呼びかけた。また、画面に「津波!避難!」と赤枠白地で大きく表示した[33][34]。
各地の震度
震度4以上の地域を観測した地点は次の通り[1]
各地で観測された津波
津波警報・津波注意報が発表された沿岸で観測された、津波の高さは次の通り[35]。
津波予報区の名称 | 津波の予想高さ | 予報区内で観測された津波の高さ | |
---|---|---|---|
津波警報 | 宮城県 | 1m | 98cm (最も高い津波) |
津波注意報 | 福島県 | 50cm | 31cm |
岩手県 | 23cm | ||
青森県太平洋沿岸 | 11cm | ||
茨城県 | 津波注意報が発表されたが津波は観測されなかった |
緊急地震速報
17時18分58.6秒に地震波を検知し、3.3秒後に高度利用者向けの第1報でマグニチュード 6.6、宮城県中部に震度4程度以上を発表し、6.6秒後の第5報で一般向けにマグニチュード 7.8 宮城県中部、宮城県北部に震度4から5弱程度を発表した[36]。
デマ
地震直後、帝塚山学院泉ヶ丘高等学校の生徒がTwitterに「リツイートしてください。地震で家が崩れ外に出られません。瓦礫の中に閉じ込められています。救助を呼んでください」「皆さんごめんなさい。焦っててつい場所を書くのを忘れてました。気仙沼市です」と投稿し、これらのツイートが約1万4千回リツイートされ、「やっと気仙沼の消防に繋がった。住所書ける?」「位置情報送信してください。リツイートして広めます」などのリプライがあったほか、朝日新聞社社会部の公式アカウントが「場所はどちらですか?」と心配のメッセージを送るまでに至ったが、その後投稿者がデマであることを明かし、反応した人々を馬鹿にする投稿を行った[37]。これに怒ったネットユーザーが投稿者の学校を特定し、投稿者は「ダイレクトメッセージを開いたらアカウントが乗っ取られてデマが投稿された。このことは教師に報告し、警察にも相談した」と投稿したが、帝塚山学院泉ヶ丘高等学校は在校生による投稿だったとし、公式サイトで謝罪した[38][39][40]。今回のデマを鵜呑みにして警察や消防に通報した者はいなかったが、宮城県警気仙沼署の副署長は「デマで警察などが動くことになれば、投稿者が偽計・威力業務妨害罪などに問われる」と述べた[41]。
脚注
注釈
- ^ 桜川市岩瀬で震度5強相当(計測震度5.0)の揺れを防災科学技術研究所の強震観測網で観測。地震選択&ダウンロード
- ^ いわき市と柏市で推計震度5弱。気象庁推計震度分布図参照。
- ^ 宇都宮市・芳賀町・草加市・東京都大田区・横浜市都筑区で震度5弱相当の揺れが東京ガスの地震網で観測。jisin.net参照。
- ^ テレビ東京系列では津波警報・注意報及び地震速報のテロップを表示させながらも、AKB子兎道場とサキよみ ジャンBANG!を通常通り放送した。
- ^ 関東地方および山梨県では衆議院議員総選挙の政見放送、関西地方では地域番組「あほやねん!すきやねん!」を通常放送していた。
出典
- ^ a b “地震情報(震源・震度に関する情報 第2報)”. 気象庁. 2012年12月8日閲覧。
- ^ “M 7.3 - off the east coast of Honshu, Japan”. アメリカ地質調査所 (2014年11月7日). 2016年11月24日閲覧。
- ^ a b c 東北地方の主な地震活動気象庁
- ^ a b c “2012年12月7日三陸沖の地震-遠地実体波による震源過程解析(暫定)-” (PDF). 気象庁 (2013年1月10日). 2016年11月24日閲覧。
- ^ a b c d e “震度データベース検索”. 気象庁. 2014年3月18日閲覧。
- ^ a b 三陸沖を震源とする地震(確定報) 消防庁 (PDF)
- ^ a b c “2万5000人が一時避難 震度5弱 交通機関ほぼ平常に”. 河北新報. (2012年12月8日). オリジナルの2012年12月11日時点におけるアーカイブ。 2012年12月11日閲覧。
- ^ a b c d “東北震度5弱:8県で14人けが”. 毎日新聞. (2012年12月8日). オリジナルの2012年12月13日時点におけるアーカイブ。 2012年12月9日閲覧。
- ^ “欧米メディアも速報=三陸沖地震”. 時事ドットコム. (2012年12月7日) 2012年12月8日閲覧。[リンク切れ]
- ^ a b “東北、関東で震度5弱=宮城・石巻に津波1メートル-11人けが、沿岸部は一時避難”. 時事ドットコム. (2012年12月7日) 2012年12月8日閲覧。[リンク切れ]
- ^ “「平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震」(第66報)”. 気象庁. 2012年12月7日閲覧。
- ^ “【三陸沖地震】M7・4に修正「単純なアウターライズ地震ではない可能性が大きい」”. msn産経ニュース. (2012年12月10日) 2012年12月11日閲覧。
- ^ 2012年12月7日 17:18頃の三陸沖地震東京大学地震研究所
- ^ 地震 一時2万5000人余が避難 NHKニュース 2012年12月8日
- ^ “【三陸沖地震】埼玉県内も震度4 女性1人けが”. 産経新聞. (2012年12月8日) 2012年12月9日閲覧。
- ^ “【三陸沖地震】宇都宮で男性軽傷、市貝町では小学校の天井ずれる”. 産経新聞. (2012年12月8日) 2012年12月9日閲覧。
- ^ bjや演奏会中止 青葉体育館で天井板落下(河北新報)2012年12月8日 Archived 2012年12月9日, at the Wayback Machine.
- ^ “【三陸沖地震】50歳が脊椎骨折の重傷 千葉・習志野”. 産経新聞. (2012年12月8日) 2012年12月9日閲覧。
- ^ 東海道新幹線 運転見合わせ NHKニュース 2012年12月7日
- ^ 東北・上越・長野新幹線見合わせ NHKニュース 2012年12月7日
- ^ a b “三陸沖地震 「乗客は無事か」交通網乱れ 停電も”. 産経新聞. (2012年12月7日) 2012年12月8日閲覧。
- ^ “地震:東北新幹線が運転再開”. 毎日新聞. (2012年12月7日). オリジナルの2012年12月12日時点におけるアーカイブ。 2012年12月8日閲覧。
- ^ 高速道路 各地で通行止め NHKニュース 2012年12月7日
- ^ 地震 空の便・15便が欠航 NHKニュース 2012年12月7日
- ^ “東北震度5弱、津波1メートル 車避難で渋滞多発”. 河北新報. (2012年12月9日) 2012年12月9日閲覧。
- ^ “地震:三陸沖M7.3 首相は演説中止 情報収集を指示”. 毎日新聞. (2012年12月7日) 2012年12月8日閲覧。
- ^ “地震発生でとんぼ返り…試された危機管理能力”. 読売新聞. (2012年12月8日) 2012年12月9日閲覧。
- ^ “三陸沖地震 衆院選の遊説中止、危機管理室に戻る”. 産経新聞. (2012年12月7日) 2012年12月8日閲覧。
- ^ “三陸沖地震 安否気遣う仮設の住民 震災思い出し涙ぐむ高校生”. 産経新聞. (2012年12月7日) 2012年12月9日閲覧。
- ^ “福島第1「異常なし」=第2建屋内、圧力上昇も-東電”. 時事ドットコム. (2012年12月7日) 2012年12月8日閲覧。[リンク切れ]
- ^ “地震:原子力規制委 幹部は緊急時対応センターに参集”. 毎日新聞. (2012年12月7日). オリジナルの2012年12月10日時点におけるアーカイブ。 2012年12月8日閲覧。
- ^ “原発すべて異常なし 規制委初の緊急運用”. 産経新聞. (2012年12月7日) 2012年12月9日閲覧。
- ^ “三陸沖地震 「命を最優先に」テレビ各局が避難呼びかけ”. 産経新聞. (2012年12月7日) 2012年12月9日閲覧。
- ^ 視聴者対応報告“視聴者対応報告(平成24年12月” (PDF). 日本放送協会視聴者事業局視聴者部. p. 6 (2012年12月). 2013年2月18日閲覧。
- ^ “気象庁 | 津波警報・注意報評価”. www.data.jma.go.jp. 2019年6月28日閲覧。
- ^ 平成24年12月07日17時18分に発生した発生した地震の緊急地震速報の内容 気象庁
- ^ 「閉じ込められた。助けて」東北地震でデマツイート RT1万超、朝日新聞も釣られるJ-CASTニュース2012年12月7日20時3分配信(2015年12月15日閲覧)
- ^ 12月7日地震で嘘ツイートの高校生 光速で身元特定されるNEWSポストセブン2012年12月16日7時0分配信(エキサイトニュースによる転載、2015年12月15日閲覧)
- ^ 地震デマツイートの高校生特定か 本人はアカウント乗っ取られたと主張(1/2)J-CASTニュース2012年12月10日19時54分配信(2015年12月15日閲覧)
- ^ 地震発生時のツイッター上の虚偽情報について(お詫び)帝塚山学院泉ヶ丘中学校・高等学校2012年12月11日配信(2015年12月15日閲覧)
- ^ 地震デマツイートの高校生特定か 本人はアカウント乗っ取られたと主張(2/2)J-CASTニュース2012年12月10日19時54分配信(2015年12月15日閲覧)
関連項目
外部リンク
- 気象庁
- 気象庁 (2012年12月7日). “推計震度分布図”. 気象統計情報. 2012年12月13日閲覧。
- 「平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震」について(第67報) -平成24年12月7日17時18分頃の三陸沖の地震-
- 2012年12月07日 三陸沖の地震による強震動 防災科学技術研究所
- 2012年12月7日17:18頃の三陸沖地震 東大地震研 広報アウトリーチ室