コンテンツにスキップ

国税不服審判所

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
日本の旗 日本行政機関
国税不服審判所
こくぜいふふくしんぱんしょ
National Tax Tribunal
国税不服審判所本部が設置される財務省庁舎
国税不服審判所本部が設置される財務省庁舎
概要
所在地 100-8978
東京都千代田区霞が関3-1-1
定員 747人(平成24年度)
設置 1970年昭和45年)5月1日
前身 国税庁協議団、国税局協議団
ウェブサイト
国税不服審判所
テンプレートを表示

国税不服審判所(こくぜいふふくしんぱんしょ、英語:National Tax Tribunal)は、財務省設置法(平成11年7月16日法律第95号)第22条に基づき国税庁に設置される特別の機関である。

沿革

[編集]
  • 1970年(昭和45年) - 従前の協議団制度に代えて、国税庁の附属機関として国税不服審判所が設置される。
  • 1984年(昭和59年) - 附属機関から特別の機関となる。

職務

[編集]

国税に関する法律に基づく処分についての審査請求に対する裁決を行なう(国税通則法第78条第1項)。

組織

[編集]

国税不服審判所は、本部及び各国税局の所在地に対応した12の支部で構成される(国税不服審判所組織規則第1条)。

本部

[編集]
  • 国税不服審判所
    • 所在地:東京都千代田区霞が関3-1-1

支部・支所

[編集]
  • 札幌国税不服審判所
  • 仙台国税不服審判所
  • 関東信越国税不服審判所
    • 新潟支所
    • 長野支所
  • 東京国税不服審判所
    • 横浜支所
  • 金沢国税不服審判所
  • 名古屋国税不服審判所
    • 静岡支所
  • 大阪国税不服審判所
    • 京都支所
    • 神戸支所
  • 広島国税不服審判所
    • 岡山支所
  • 高松国税不服審判所
  • 福岡国税不服審判所
  • 熊本国税不服審判所
  • 国税不服審判所沖縄事務所

国税審判所本部

[編集]

国税審判所本部は、全国12の支部を統括し、審判所全体の管理・運営や、各支部に係属した個別事件の処理に関する助言指導(本部照会制度、相互審査制度)等の事務を行っている。 行政審判機関としての性格や、国税庁に対する中立性・第三者性保持の観点から、国税不服審判所本部所長には裁判官から出向する[1]。 国税不服審判所本部所長のもとで働く国税不服審判所次長は財務省本省(総合職)。

歴代国税不服審判所長

[編集]

裁判官から出向するのが通例である。国税不服審判所長は政令で規定される指定職5号の役職である。

氏名 在任期間 前職 後職
小酒禮 1986年4月1日-1989年5月31日 大阪地方裁判所部総括判事 大津地方・家庭裁判所長
杉山伸顕 1989年6月1日-1993年3月31日 宇都宮地方・家庭裁判所栃木支部長 東京高等裁判所部総括判事
佐久間重吉 1993年4月1日-1995年3月31日 横浜地方裁判所部総括判事 東京高等裁判所判事
小田泰機 1995年4月1日-1997年3月31日 東京地方裁判所部総括判事 東京高等裁判所判事
太田幸夫 1997年4月1日-1999年3月31日 東京高等裁判所判事 東京高等裁判所判事
島内乗統 1999年4月1日-2002年3月30日 東京地方裁判所判事 東京高等裁判所判事
成田喜達 2002年3月31日-2004年3月31日 東京地方裁判所部総括判事 山形地方・家庭裁判所長
春日通良 2004年4月1日-2006年3月31日 東京地方裁判所部総括判事 東京高等裁判所判事
井上哲男 2006年4月1日-2008年3月31日 東京地方裁判所部総括判事 東京高等裁判所判事
金子順一 2008年4月1日-2010年3月31日 東京地方裁判所部総括判事 東京高等裁判所判事
孝橋宏 2010年4月1日-2012年3月31日 東京地方裁判所部総括判事 東京高等裁判所判事
生野考司 2012年4月1日-2014年3月31日 東京地方裁判所部総括判事 東京高等裁判所判事
畠山稔 2014年4月1日-2016年3月31日 東京地方裁判所部総括判事 東京高等裁判所判事
増田稔 2016年4月1日-2018年3月31日 東京地方裁判所部総括判事 東京高等裁判所判事
脇博人 2018年4月1日-2020年3月31日 東京地方裁判所部総括判事 東京高等裁判所判事
東亜由美 2020年4月1日-2022年3月31日 東京地方裁判所部総括判事 大阪高等裁判所部総括判事
伊藤繁 2022年4月1日-2024年3月31日 東京地方裁判所部総括判事 東京高等裁判所判事

歴代国税不服審判所次長

[編集]

国税不服審判所次長は政令で規定される指定職2号の役職である。首席国税審判官(関東信越、東京、名古屋、大阪、広島、福岡)と同様である。

氏名 出身校 前職 在任期間
有働忠明 東京大学 財務省大臣官房付 2017年7月-
片山一夫 東京大学 横浜税関長兼税関研修所横浜支所長 2018年7月-
中村信行 東京大学 原子力損害賠償・廃炉等支援機構理事 2019年10月-
森山茂樹 東京大学 内閣府大臣官房審議官 2020年8月-
牧田宗孝 東京大学 東京地下鉄監査役 2021年7月-
山西雅一郎 東京大学 名古屋国税局長 2023年7月-
  • 東京国税不服審判所長

検察官から出向するのが通例である。東京国税不服審判所次席国税審判官は財務省本省(総合職)又は財務省の外局である国税庁(総合職)。

  • 大阪国税不服審判所長

裁判官から出向するのが通例である。大阪国税不服審判所次席国税審判官は財務省本省(総合職)又は財務省の外局である国税庁(総合職)。

  • 各支部の国税不服審判所長(首席国税審判官)

各支部の国税不服審判所長(首席国税審判官)は財務省本省(総合職)又は財務省の外局である国税庁(総合職)。総合職の出身校については旧帝国大学早慶(大蔵国税三田会等[2])等となっている。首席国税審判官(関東信越、東京、名古屋、大阪、広島、福岡)は政令で規定される指定職2号の役職である。

  • 国税審判官、国税副審判官及び国税審査官

国税審判官は税務署長級(国税審判官の約半数に、弁護士・公認会計士・税理士等の有資格者が、任期付公務員として登用されている)[3]。国税副審判官は副署長級。国税審査官は統括官級又は上席級。

このほか、本部及び主要支部に、裁判官又は検察官からの出向者が若干名配置されている(なお、裁判官からの出向者の出向中の身分(官名)は、検察官からの出向者と同じく「検事」となるのが例である。)。

札幌国税不服審判所長
[編集]
氏名 在任期間 前職 後職等
土屋雅一 2015年7月‐ 大阪国税不服審判所次席国税審判官 金沢学院大学経済学部教授
伊藤隆雄 2018年7月‐ 国税庁長官官房厚生管理官 福岡国税不服審判所長
千葉俊徳 2020年8月‐ 国税庁課税部課税総括課審理室長 名古屋国税不服審判所長
柳澤聡 2021年7月‐ 独立行政法人中小企業基盤整備機構業務統括役高度化事業部長
仙台国税不服審判所長
[編集]
氏名 在任期間 前職 後職等
𠮷田初志 2017年4月‐ 札幌国税不服審判所長 産業能率大学経営学部教授
住倉毅宏 2018年4月‐ 金沢国税不服審判所長 高千穂大学商学部教授
出村仁志 2019年8月‐ 国税庁長官官房付 研究休職 新潟大学教授 千葉商科大学教授
大澤雄一 2020年7月‐ 東京国税不服審判所次席国税審判官
関東信越国税不服審判所長
[編集]
氏名 在任期間 前職 後職等
石川紀 2017年7月‐ 財務省大臣官房付 神戸税関長
栗原一福 2018年7月‐ 株式会社日本政策金融公庫取締役 関東信越国税局長
御園生功 2019年7月‐ 広島国税不服審判所長 退官
大西淳也 2020年7月‐ 独立行政法人都市再生機構理事
鵜田晋幸 2021年7月‐ 財務総合政策研究所総務研究部長
東京国税不服審判所長
[編集]
氏名 在任期間
森本加奈 2017年6月‐
藤谷俊之 2018年7月‐
林享男 2020年7月‐
横井朗 2021年7月‐
金沢国税不服審判所長
[編集]
氏名 在任期間 前職 後職等
住倉毅宏 2017年8月‐ 国税庁課税部法人課税課長 仙台国税不服審判所長
金沢孝志 2018年4月‐ 法務省大臣官房司法法制部審査監督課長 福岡国税不服審判所長
團野正浩 2019年4月‐ 東京国税不服審判所次席国税審判官
高杉尚志 2021年7月‐ 名古屋国税不服審判所次席国税審判官
名古屋国税不服審判所長
[編集]
氏名 在任期間 前職 後職等
西聡 2017年8月‐ 税務大学校教頭 帝京大学法学部教授
木本聡子 2018年7月‐ 独立行政法人国立印刷局理事
中田悟 2019年7月‐ 日本たばこ産業財務副責任者 札幌国税局長
千葉俊徳 2021年7月‐ 札幌国税不服審判所長
大阪国税不服審判所長
[編集]
氏名 在任期間
西田隆裕 2017年4月‐
川畑正文 2019年4月‐
西村欣也 2021年4月‐
広島国税不服審判所長
[編集]
氏名 在任期間 前職 後職等
岡根秀規 2017年4月‐ 仙台国税不服審判所長 日本大学経済学部教授
御園生功 2018年7月‐ 神戸税関長 関東信越国税不服審判所長
飯島信幸 2019年8月‐ 国税庁 研究休職 名古屋大学教授 産業能率大学教授
湯浅豊生 2020年8月‐ 国税庁長官官房参事官
高松国税不服審判所長
[編集]
氏名 在任期間 前職 後職等
奥田芳彦 2017年3月‐ 東京国税不服審判所部長審判官
高橋一郎 2018年3月‐ 東京国税不服審判所部長審判官
香取稔 2019年3月‐ 国税不服審判所国税審判官 国税庁長官官房付
中嶋明伸 2020年3月‐ 国税不服審判所沖縄事務所長
村田昌平 2021年7月‐ 大阪国税不服審判所次席国税審判官
福岡国税不服審判所長
[編集]
氏名 在任期間 前職 後職等
松本邦生 2016年7月‐ 大阪国税不服審判所次席国税審判官
金沢孝志 2019年4月‐ 金沢国税不服審判所長 平成国際大学教授
伊藤隆雄 2020年7月‐ 札幌国税不服審判所長
齋川浩司 2021年7月‐ 研究休職・名古屋大学教授
熊本国税不服審判所長
[編集]
氏名 在任期間 前職 後職等
川口幸彦 2017年3月‐ 国税不服審判所沖縄事務所長
竹田勝哉 2018年3月‐ 国税不服審判所沖縄事務所長
阿瀬薫 2019年3月‐ 国税不服審判所沖縄事務所長
浅井要 2020年3月‐ 東京国税不服審判所部長審判官
伊東幸喜 2021年3月‐ 国税不服審判所沖縄事務所長
国税不服審判所沖縄事務所長
[編集]
氏名 在任期間 前職 後職等
竹田勝哉 2017年3月‐ 東京国税不服審判所部長審判官 熊本国税不服審判所長
阿瀬薫 2018年3月‐ 東京国税不服審判所横浜支所長 熊本国税不服審判所長
中嶋明伸 2019年3月‐ 東京国税不服審判所横浜支所長 高松国税不服審判所長
伊東幸喜 2020年3月‐ 国税不服審判所国税審判官

裁決

[編集]

まずはじめに、各支部に配置された国税審判官が、担当審判官1名及び参加審判官2名から成る合議体を構成して審査請求事件の調査・審理を行い、審査請求に対する判断(主文、理由)を示した「議決」をする。

国税不服審判所長が、この議決に基づいて、裁決をする。

もっとも、実際の裁決権は、内部規程で各支部の国税不服審判所長(首席国税審判官)に委任されており、いわゆる専決処理がされている。財務省庁舎内にある国税審判所本部からは、裁決に至る各段階において、各支部に係属した個別事件の処理に関する助言指導(本部照会制度、相互審査制度)等がされる。

そして、国税不服審判所長が1.国税庁長官通達の解釈と異なる解釈により裁決をする2.他の国税に係る処分を行う際における法令解釈の重要な先例となると認められる裁決をする場合において、これが審査請求人の主張を容認するものであり、かつ、国税庁長官が相当と認める場合を除き、国税庁長官から意見を求められた事項について、国税審査分科会が調査審議する[4]

国税審査分科会

[編集]

財務省設置法の規定により、平成13年1月国税庁に設置された。国税審議会委員のうち、財務大臣が指名した委員で組織する。

下記に事例として令和2年における国税審査分科会の構成を記載する[5]

役職 氏名 現職  出身校・その他
会長 田近栄治 一橋大学名誉教授 一橋大学経済学部[6]
会長代理 山田洋 (法学者) 獨協大学法学部教授 一橋大学法学部、博士(法学)一橋大学[7]
委員 石田千 作家、東海大学文化社会学部文芸創作学科特任教授 学士(文学)[8]
委員 遠藤 みどり 元東京高等検察庁検事
委員 河村 芳彦 株式会社日立製作所代表執行役執行役専務 慶應義塾大学経済学部、ケンブリッジ大学大学院[9]
委員 神津信一 日本税理士会連合会会長 慶應義塾大学経済学部[10]
委員 佐藤英明 (法学者) 慶應義塾大学大学院法務研究科教授 東京大学法学部[11]
委員 手島 麻記子 株式会社彩食絢美代表取締役、食文化研究家・日本酒と料理の相性研究家 慶応義塾大学法学部政治学科[12]
委員 中空 麻奈 BNPパリバ証券株式会社グローバルマーケット統括本部副会長 慶應義塾大学経済学部[13]
委員 吉村 典久 慶應義塾大学法学部教授 慶應義塾大学法学部法律学科、慶應義塾大学大学院法学研究科公法学専攻後期博士課程[14]

事務局として、国税庁からは、長官、次長、審議官、課税部長、徴収部長、調査査察部長、総務課長、人事課長等が出席する。国税不服審判所からは所長、次長等が出席する。

その他

[編集]

大蔵省主税局税制第三課長早田肇は、国税不服審判所の誕生の経緯について、「従来から、協議団制度に対しては、次のような批判が寄せられていた。第1に、協議団が国税局の付属機関として国税局長の指揮下に置かれ、しかも審査請求に当たって協議団の議決を経るのではあるが、裁決権は国税局長が保持する形をとっているところから、裁決に対して直税部、調査部等のいわゆる主管部が強い影響力を及ぼしているのではないかとの疑念が持たれ、このような制度のもとでは、納税者の納得を得られるような裁決は期し難いとの批判が生じていた。第2に、納税者の不服について真に個別性に応じた解決をはかるためには、場合によっては通達と異なる法令の解釈を行なう必要も生じるのであるが、国税局長の下におかれ、国税庁長官の発する通達に応じ得ないのではないかという批判も見られた。税制調査会の税制簡素化特別部会においては、これらの情勢および批判をふまえつつ、慎重な検討を重ねた結果、国税庁の付属機関として、自ら裁決権を有する不服審査機関を設置すべきであるという結論に達したものである。」と論じている[15]

脚注

[編集]
  1. ^ “こういったポストには法曹の御出身の方々を任命しているところでございます”[1] 第5回国税審査分科会、第25回税理士分科会及び第6回酒類分科会の3分科会合同会議
  2. ^ 「最強の学閥パワーを解剖する 慶應義塾の人脈と金脈」、p133、『文藝春秋』2023年11月号
  3. ^ [2] - 平成23年度税制改正大綱
  4. ^ [3] - 国税審査分科会の概要等
  5. ^ 国税審議会委員名簿(最終閲覧日:2021.4.4)
  6. ^ researchmap 田近栄治 (最終閲覧日:2021.2.23)
  7. ^ 教員紹介 (最終閲覧日:2021.2.23)
  8. ^ 文芸創作学科 教員紹介 (最終閲覧日:2021.2.23)
  9. ^ 新任代表執行役の略歴(最終閲覧日:2021.2.23)
  10. ^ PROFILE(最終閲覧日:2021.2.23)
  11. ^ 慶應義塾研究者情報データベース(最終閲覧日:2021.2.23)
  12. ^ 手島麻記子プロフィール(最終閲覧日:2021.2.23)
  13. ^ 中空麻奈 略歴(最終閲覧日:2021.2.23)
  14. ^ 吉村 典久 教授(租税法、国際租税法) (最終閲覧日:2021.2.23)
  15. ^ 「特集・国税不服審判所の誕生」大蔵省主税局税制第三課長早田肇“国税不服審判所の成立経過”月刊「税務実務」May.1970,Vol.2No.5

関連項目

[編集]

外部リンク

[編集]