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興行収入

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
オハイオシアター英語版アメリカオハイオ州コロンバス)のチケット売り場。2018年

興行収入(こうぎょうしゅうにゅう)は、映画館入場料金収入のこと[1]興収(こうしゅう)と略される場合もある[2]英語では、チケット売り場も示すBox Office(ボックスオフィス)と言う[3]映画以外の興行でも言う場合がある。

日本での興行成績

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日本においては、1999年までは映画興行成績発表には配給収入が使われていたが、2000年から興行収入の発表に切り替えられた[1][4]。配給収入と興行収入を誤解しているケースが多かったこと、映画産業データが分かりやすくなること、配給収入での発表は日本映画界の閉鎖性と不透明さの象徴だったこと、また、世界の映画界では興行収入でデータ発表をしていることを関係者は変更理由に挙げている[1]。大ヒットの基準である配給収入10億円以上の作品の発表も廃止された[1]

北米での興行成績

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北米興行収入: North American box office)の北米の範囲は、アメリカ合衆国カナダプエルトリコグアムとなっている[5]。アメリカでは北米興行収入と国内興行収入: domestic box office)は同じ意味[6]。日本では北米興行収入を全米興行収入とも言う[7][8]

週末興行成績

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日本

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日本の週末興行成績ランキングでは、興行通信社や文化通信などの映画業界誌などを通して、一部作品のみ興行収入が発表される[9]。そのため、大半の映画の興行収入が不明となっている[9]。例外として、毎年3月にキネマ旬報の映画業界決算特別号より一部の作品の総興行収入が発表される。また、総興行収入10億円以上の映画のみ翌年1月に日本映画製作者連盟から発表される[9]。また、半年ごとに東宝は自社配給のうち10億以上の興行収入を記録した映画のみ結果を発表している[9]

シニア向けを除く一般の映画は、最初の土日(=週末)の興行成績が上映期間を決める判断材料となる[10]。最初の金土日の成績が悪ければ、上映期間は当初の予定より短くなる[10]。逆に、最初の金土日の成績が良ければ、ヒットしてロングランとなる場合もある[10]。大作映画が公開日を木曜日や金曜日にするのは、公開日を含む最初の週末の興行成績を大きく見せたいため[11]。シニア向けの映画の場合は、〔シニアは平日に鑑賞することが可能なので〕平日が重要となっている[12]

多くの映画で客足は、毎週平均7割の「落ち率」で推移する[13]。例えば、初週の金土日が興行収入1億円だった場合、2週目は7000万円、3週目は4900万円と下降して推移する[13]。そのため、初週の金土日の興行成績が分かると、おおよその総興行収入が予測できる[13]。しかし、「落ち率」は作品の評判によって上下する[13]。評判が良ければ前週の興行成績を上回ることもある[14]

北米

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北米(アメリカカナダ)では週末興行成績ランキングと合わせて興行収入も発表される[9]。該当週の週末興行収入だけでなく、〔上映中のほぼ全ての映画の〕総興行収入も把握できる[9]


配給収入

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配給収入はいきゅうしゅうにゅう)とは、興行収入から映画館(興行側)の取り分を差し引いた映画配給会社の取り分のこと[1]配収と略される[15][16]

映画館を所有する興行会社は、配給会社から貸与された映画の利用料金(映画料)を興行収入に対するパーセンテージで支払う[17]。このパーセンテージを歩率という。また、映画料を配給会社の立場から見た場合、配給収入とも言う[17]。歩率は映画上映前に契約で取決められ、固定ではなく上映週数に応じたスライド式になっていることが多く、新作のロードショー作品の場合は上映開始から2週間は70%、次の3週間は60%、その後は50%と徐々に興行会社(映画館)の取り分が多くなるようになっているケースがほとんどである[17]。歩率は映画ごとに異なる[18]

日本では、1999年まで映画の興行成績を興行収入ではなく配給収入で発表していた[1]。各映画の興行会社(映画館)と配給会社間の契約ごとに違うが[19][20]、興行収入のおよそ50%が配給収入となる[20][2]

興行収入に対する配給収入の割合
邦画/洋画 映画名 興行収入[21] 配給収入 配給収入
の割合[22]
邦画 もののけ姫[23] 201.8億円 117.6億円 58.3%
南極物語[24] 110.0億円 59.0億円 53.6%
踊る大捜査線 THE MOVIE[25] 101.0億円 53.0億円 52.5%
子猫物語[26] 98.0億円 54.0億円 55.1%
洋画 タイタニック[27] 262.0億円 160.0億円 61.1%
E.T.[24] 135.0億円 96.2億円 71.3%
ジュラシック・パーク[28] 128.5億円 83.0億円 64.6%
スター・ウォーズ エピソード1/ファントム・メナス[29] 127.0億円 78.0億円 61.4%
インディ・ジョーンズ/最後の聖戦[30] 74.0億円 44.0億円 59.5%
ダイ・ハード3[31] 72.0億円 48.0億円 66.7%
ミッション:インポッシブル [32] 65.0億円 36.0億円 55.4%
ゴースト/ニューヨークの幻[33] 61.7億円 37.5億円 60.8%
ボディガード[28] 61.0億円 41.0億円 67.2%
※邦画は日本映画の歴代興行収入一覧から、洋画は日本歴代興行成績上位の映画一覧から選択した。

興行的成功

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相良智弘によれば、日本映画のヒットの目安は日本映画製作者連盟が10億円以上の映画を発表するという理由から総興行収入10億円となる[9]キネマ旬報によれば、1999年までは配給収入10億円以上が大ヒットの基準だったが[1]、近年では制作コストの増加により総興行収入10億円を最低ラインとし、総興行収入30億円以上が大ヒットの基準である。

アメリカでのヒットの目安は総興行収入1億ドル以上、年間トップ10を狙える大ヒットは2億ドル以上となっている[9]

ミニシアターで公開されるアート系作品については、総興行収入5000万円以上で大ヒット、1億円を超えれば年間1位を狙えるメガヒットといった基準が存在したが、シネマコンプレックス全盛の2014年現在は基準が存在しないとも相良智弘は語っている[9]

日本映画の場合、配給収入から配給会社が宣伝費および配給実費(フィルム配給の時代はプリント費がかなり高額を占めた)をトップオフし、そこから契約で設定された比率の配給手数料を差し引いた残りが製作会社(または製作委員会)の取り分となる[34]。したがって配給収入がトップオフ分に達しない場合は、どれだけ高予算作品であっても劇場興行においては製作会社には1円も入らないことになる。仮に製作費10億円の映画に宣伝費等として2億円がかけられ、配給収入/興行収入が50%、配給手数料が30%と設定されていた場合、30億円の興行収入でも製作会社は1.5億円の赤字になる[34]。製作費を5億円に抑えた場合、興行収入が20億円で製作費が回収されることになる[34]。実際はTV放映料、ビデオ販売収入などの二次収入が見込まれるため、採算点はもう少し低くなる[34]

山崎貴監督は2014年のインタビューの中で、予想される興行収入が15億円ならば、DVDでの収益を見込んでも製作費を5億円に抑えると発言している[35]

平均入場料金

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平均入場料金は、ある年の総興行収入をその年の総動員数で割ったものである[36]

各国の映画館平均入場料金
[37] 世界 (US$)[38] 北米[39] イギリス[40][41] オーストラリア[42] 中国[43][44] 欧州連合[45][46] フランス[47][46] 香港[43] インド[48] 日本 [49]
1950 £0.08
1951 US$0.53
1952
1953 $0.60
1954 $0.45 £0.09
1955 £0.09 HK$0.95[50] ¥63
1956 $0.50 £0.09 1.22 F[51] ¥62
1957 £0.10 1.33 F[52] ¥62
1958 £0.11 ¥64
1959 $0.51 £0.12 ¥65
1960 £0.13 ₹1.35 ¥72
1961 $0.69 £0.13 ¥85
1962 $0.70 £0.14 ¥115
1963 $0.85 £0.15 ₹1.44 ¥152
1964 $0.93 £0.17 ₹1.45 ¥178
1965 $1.01 £0.19 3.04 F[52] ₹1.46 ¥203
1966 $1.09 £0.24 3.34 F[52] ₹1.66 ¥219
1967 $1.20 £0.22 ₹1.66 ¥236
1968 $1.31 £0.24 HK$1.98[50] ₹1.67 ¥262
1969 $1.42 £0.27 ¥295
1970 $1.55 £0.31 ₹1.89 ¥324
1971 $1.65 £0.34 ¥366
1972 $1.70 £0.38 ¥411
1973 $1.77 £0.43 ¥500
1974 $1.87 £0.50 HK$6[53] ¥631
1975 $2.05 £0.61 ¥751
1976 $2.13 £0.73 AU$3.30 ¥852
1977 $2.23 £0.83 A$3.50 HK$5.33[50] ¥923
1978 $2.34 £0.94 A$3.50 ¥967
1979 $2.51 £1.13 A$3.70 ¥0.2[54] ¥958
1980 $2.69 £1.42 A$4.00 ¥0.2[54] €1.90 €2.70[45] HK$9[55] ¥1,009
1981 $2.78 £1.58 A$4.50 ¥0.2[54] ¥1,093
1982 $2.94 £1.67 A$5.00 ¥0.2[54] HK$12[55] ¥1,092
1983 $3.15 £1.90 A$5.60 ¥0.2[54] HK$15[55] ¥1,093
1984 $3.36 £1.91 A$5.40 ¥0.2[54] HK$15[55] ¥1,144
1985 $3.55 £1.71 A$5.40 €3.10 ($2.27) €3.70[45] ¥1,118
1986 $3.71 £1.88 A$5.31 ¥1,116
1987 $3.91 £2.15 A$6.16 [56] ¥1,120
1988 $4.11 £2.30 A$6.10 ¥0.3[57] HK$15[58] ¥1,118
1989 $3.97 £2.33 A$6.60 HK$30[53] ¥1,161
1990 $4.23 £2.81 A$6.61 €4.20 €4.50[45] ¥1,177
1991 $4.21 £3.03 A$6.95 ¥1,181
1992 $4.15 £3.21 A$7.09 HK$32[58] [59] ¥1,210
1993 $4.14 £3.21 A$7.00 [60] ¥1,252
1994 $4.18 £3.25 A$7.00 ¥7.5 [61] [62] ¥1,249
1995 $4.35 £3.48 A$7.17 €4.70 €5.30[45] HK$48.9[43] [63] ¥1,243
1996 $4.42 £3.70 A$7.26 €4.80 €5.40[45] US$6.25[64] [65] ¥1,245
1997 $4.59 £4.07 A$7.47 $0.84[66] €5.00 €5.30[45] US$6.47[59] [67] ¥1,259
1998 $4.69 £4.03 A$7.87 €5.10 €5.30[45] US$6.25[64] [68] ¥1,264
1999 $5.08 £4.21 A$7.93 €5.30 €5.40[45] ₹21.51[69] ¥1,263
2000 $5.39 £4.40 A$8.39 ¥5[70] €5.40 €5.40[45] [71] ¥1,262
2001 $5.66 £4.14 A$8.78 €5.60 €5.50[45] HK$55[72] [73] ¥1,226
2002 $5.81 £4.29 A$9.13 [74] ¥1,224
2003 $6.03 £4.44 A$9.64 [75] ¥1,252
2004 $6.21 £4.49 A$9.92 [76] ¥1,240
2005 $6.41 £4.71 A$9.94 ¥12.7 €5.90[43] [77] ¥1,235
2006 $6.55 £4.87 A$10.37 ¥14.9 €5.90[43] US$7 [78] ¥1,233
2007 $6.88 £5.05 A$10.57 ¥16.9 €5.90[43] US$6.70 [79] ¥1,216
2008 $7.18 £5.20 A$11.17 ¥20.1 €6 US$7 ₹69.76[80] ¥1,214
2009 $7.50 £5.44 A$11.99 ¥23.5 €6.14 US$7.30 [81] ¥1,217
2010 $7.89 £5.95 A$12.26 ¥35.1 €6.33 US$7.70 [82] ¥1,266
2011 $7.93 £6.06 A$12.87 ¥35.4 €6.33 ₹95.48[83] ¥1,252
2012 $7.96 £6.37 A$13.10 ¥36.3 €6.42 US$8.10 ₹101.74[84] ¥1,258
2013 $8.13 £6.53 A$13.41 ¥35.6 €6.46 US$8.40 ₹109.75[85] ¥1,246
2014[86] $4.74 $8.17 £6.72 A$13.68 ¥35.7 €6.38 US$8.50 ₹117.89[87] ¥1,285
2015 $4.86 $8.43 £7.21 A$13.60 ¥35 €6.48 US$10.70 ₹125.97[88] ¥1,303
2016 $4.99 $8.65 £7.41 A$13.80 ¥35[89] €6.51 US$9.80 ₹131.57[90] ¥1,307
2017 $5.11 $8.97 £7.49 A$14.13 ¥34.5 €6.60[43] ₹134.38[91] ¥1,310
2018 $5.16 $9.11 £7.22 A$13.86 ¥35.3[92] ¥1,315
2019 $9.01 £7.11 A$14.50 ¥37.1[92] ¥1,340
2020 $9.37 £6.75 A$14.23 ¥37[92] ¥1,350
2021 £7.52 A$15.24 ¥40.3[92] ¥1,410
2022 £7.69 A$16.26 ¥42.1[92] ¥1,402

脚注

[編集]

出典

[編集]
  1. ^ a b c d e f g 「2000年度 日本映画・外国映画 業界総決算 経営/製作/配給/興行のすべて」『キネマ旬報2001年平成13年)2月下旬号、キネマ旬報社、2001年、144頁。 
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  4. ^ 山下慧kindle 2012, 位置No. 1756 - 1764/6665.
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  8. ^ 「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」、「アバター」超え全米興収歴代1位に - 映画ナタリー”. Natasha, Inc. (2016年1月8日). 2016年1月9日閲覧。
  9. ^ a b c d e f g h i 映画興収の秘密&宣伝文句の変遷(1)/日本では大半の作品の興行収入が不明!”. MOVIE Collection (2015年8月24日). 2016年3月3日閲覧。
  10. ^ a b c 阿部秀司 2012, pp. 189–190.
  11. ^ 山下慧kindle 2012, 位置No. 1764 - 1770/6665.
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  14. ^ 阿部秀司 2012, p. 191.
  15. ^ 配給収入(はいきゅうしゅうにゅう)とは”. コトバンク. 2019年3月4日閲覧。
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  20. ^ a b 中川右介「資料編」『角川映画 1976‐1986 日本を変えた10年』角川マガジンズ、2014年、274頁。ISBN 4-047-31905-8 
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  22. ^ 試算値。公表されている興行収入・配給収入から配給収入の割合を試算したもので、実際の契約書などの数字を引用したものではない。
  23. ^ 1997年配給収入10億円以上番組 - 日本映画製作者連盟
  24. ^ a b 1983年配給収入10億円以上番組 - 日本映画製作者連盟
  25. ^ 『キネマ旬報ベスト・テン85回全史 1924-2011』(キネマ旬報社、2012年)576頁
  26. ^ 1986年配給収入10億円以上番組 - 日本映画製作者連盟
  27. ^ 1998年配給収入10億円以上番組 - 日本映画製作者連盟
  28. ^ a b 1993年配給収入10億円以上番組 - 日本映画製作者連盟
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  30. ^ 1989年配給収入10億円以上番組 - 日本映画製作者連盟
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参考文献

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関連項目

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外部リンク

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