翌日。
雪子と帯人は一緒に学校へ行った。
その日は休日だったから、私服で入校できた。
休日だというのに、人々は多く図書館を利用していた。
私の背の三倍もある本棚に、ぎっしりと敷き詰められた本の数々。
貴重なものまであるらしいけど、あんまり詳しくない。
彼は目をぐるぐるさせていた。
思わず笑ってしまった。
「ねえ、帯人。散策してみようか」
「え。…いいの?」
「もちろん♪」
そのとき、ブーブーブーとバイブルが鳴り出す。
本棚の影に隠れて携帯をチェックすると、
そこには「非通知」の着信履歴があった。
いつもなら無視している。
けれど、このときばかりは無視することができなかった。
―一瞬でも、奇妙な感覚を覚えてしまったから。
「私、ちょっと外に出てくるね」
「…待って。僕も…」
ついてこようとする帯人を制止させて、私は図書館から出た。
誰かに会話を聞かれるのは、苦手なの。ごめんね?
私はさっきの番号に電話をしてみることにした。
プルル、プルル、プルル―
カチッ
「もしもし」
「もしもし、増田雪子さん?」
電話のむこうから、低くてハキハキした男の声が聞こえた。
知らない人なのにどうして名前を…?
「どなたでしょうか?」
恐る恐る尋ねると、彼は自己紹介を一通りしてくれた。
名前はメイト。
同じ会社で製造されたメイコ姉さんの弟さんらしい。
今は大学病院の義肢専門医、そして教授として生活している。
この番号は、メイコ姉さんの携帯から拝借したそうだ。
「―で、どうして電話を?」
「危なっかしい事件のことを、おまえに伝えてほしいって。
そう頼まれてね。じゃあ、伝えるから聞けよ?」
彼は息を吸う。
それはまるで音声データを読み上げているようだった。
口調も、言い方もそのままに、メイトは伝言を読み上げる。
「雪子ちゃんと帯人へ。
あなたたちに伝えておかなければいけなことがあるの」
その声は真剣だった。
「今、特務課はある事件の調査をしてる。
最近、ニュースなどでも話題になってる「意識不明」のことよ」
事件?
確かに今、人間に限らずボーカロイドまでいきなり意識不明になってしまう
ことがニュースによく取り上げられているけれど…。
あれは事故じゃないの? 病気とか、そういうものじゃないの?
…なんだろう。事件って…。
「変に聞こえるかもしれないけれど、あれは事件なの。
先月から今までの被害者の数はすでに五十を超えている。
…これは異常なことなの。解る?」
「…なんで、私に?」
答えるはずはないのに、私は思いをこぼした。
メイコ姉さんの伝言は続く。
「先日、カイトが意識不明になったの」
「そんなッ!?」
あのカイトさんがッ、なんで!?
「最近、誰かに後をつけられてる気がする。
そうカイトは言っていたわ。…それからすぐに意識不明になったの。
そして昨日、クリプト学園の生徒が意識不明になって倒れた。
「亜北ネル」さんと「弱音ハク」さんよ」
ハクちゃんとネルちゃんまで…ッ!!
携帯をもつ手が震えた。
「雪子ちゃん。お願い。帯人君と一緒にいなさい。離れちゃ駄目よ。
学園内だって安全じゃないってことを十分理解しておいて。
…それじゃあ、また連絡するわ」
そこで、メイコ姉さんの口調は終わった。
メイトさんの声が静かに響く。
「この後すぐ姉貴は、意識不明になってぶっ倒れたんだ」
「……」
「うちの病棟にいる「鏡音レン」ってやつも、この前病室で
倒れていた。病院内も今は安全な場所じゃねーんだ。
…とにかく気をつけろ」
「あの…、一つ、聞いてもいいですか?」
「なんだ?」
「特務課はどうなるんですか?」
「ほぼカイトとメイコだけの課だったし、この分じゃあ一時閉鎖だな。
まあ、そんなことより、雪子ちゃんは身の心配をしろ」
一時閉鎖なんて…。
メイトは伝音を伝え終えると、電話を切った。
私は携帯を握り、その場に立ちつくしていた。
いったい、なにが起こっているんだろう…。
私にはこの伝言が、遺言のように思えてならなかった。
すごく怖かった。
そのころ、帯人は図書館を散策していた。
本の背をなぞりながら、彼は本棚と本棚の隙間を冒険する。
本独特の香りがとても心地よかった。
カタン。
ふと、背後から音がした。
革靴の鳴る音だ。
そこには灰色のスーツを着込んだ細身の青年が立っていた。
「やあ」または「にゃあ」か。
軽く会釈する青年の手には、きれいな懐中時計が握られている。
帯人はその時計の美しさに魅入っていた。
「失礼ですが、お願いがあります」
「…?」
「とある少女を助けてくれませんか?」
彼の声はまるでピアノのように強くはじけた。
ひどく耳に残って離れない声だと思った。
コメント2
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アイクル
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ご意見・ご感想
アイクル
ご意見・ご感想
みなさんのご意見・ご感想に毎度感激してますッ!≧ワ≦
そしてなによりも励みになってます。
本当にありがとうございます。
レン君もリンちゃんも、今回の話にはどんどん出てきますよー♪
あとは派生キャラもバンバン。
がんばって書いていきますねーvv
2009/01/23 13:11:03
まにょ
ご意見・ご感想
ぅゎぁぁああああ!
なんと、、優しい傷痕~第二部~ ですか!?
すごぃです!また帯人&雪子に会えるなんて…。
それに第一話から、ドキドキ(p>□<q*))
つづき、楽しみに待ってますね!!(#^.^#) (帯人、どうか無事でぃて~…。)
2009/01/22 23:35:28