「誕生日おめでとう俺。さあ祝え」
「知らないわよ」
と言いながら鈴音は俺にキスをした。
夕暮れで、昇降口で、部活帰りだった。
「……お前、俺のこと好きだったのか」
「違うわよ。バカじゃないの」
「ツンデレ?」
「死になさい」
「死にたい」
「十秒待つわ」
「鬼か」
言い終わる前に鈴音のラケットが俺を襲ったので俺の言葉は最後まで発声されない。しかしではなぜラケットが飛んでくるのか。軽くて硬いバドミントンラケットは人に向けると危険です。
――と習わなかったか馬鹿野郎、と言う前に今度は平手が飛んできた。乾ききった音。
「……おかしいな。朝の占いじゃ健康運は最高だったはずだが」
「私も。友情も恋愛も最高だったけど」
「ああ、そういや星座同じだったか」
「奇遇ね」
「それで、俺の罪状はなんだろう」
「本気で言ってるの?」
鈴音は信じられない、という顔をした。
「男に二言はない」
「……ちょっとスマッシュ練がしたいわ」
「そ、そう? じゃあシャトルを出し(ごきん)痛あっ!」
直撃。
「にーい(がん)」
「遺体!」
「さーん(ごぱ)」
「ちょ、今なんか変な音が!」
「よーん(みし)」
「あ……骨が、やばいやばいやばい」
「叩いたら治るかなあこの頭?」
「治る前に壊れると思います!」
「壊れたら新しいの買ってもらわなきゃー」
「なな何言ってんですか鈴音さん! って……あ」
「なによ」
襲撃がやむ。つかの間の平和。
「お前の誕生日も、今日か」
「……今、気づいたんだ?」
鈴音は武器を下ろした。同時に顔も下を向く。最低な平和。
「ごめん、プレゼントまだ買ってなかった。夜まで――いや、一時間だけ待ってもらっていいか? 絶対お前の喜ぶもん見つけてくるから!」
にっこり。
前方に意外な表情が出現。戦線は混乱しています。
「いいの。さっきもらったから」
「さっきって――あ」
戦線は混乱しています。
「で、これはあんたの分」
戦線は混乱しています!
夕暮れは既にとぷん。
「俺、宮津センパイが好きだったのになー……鈴音って嘘つきだよね」
「ふん。あんたほどじゃないわよ」
「や、本当なんだけど……」
「あら、まだ練習し足りない?」
――報告。首に縄が見えます、どうぞ。
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