今日もまた悪夢(ゆめ)を見ている
行き交う人の波の中で
松葉杖を抱きながら
私は瞼を開く
泣き叫ぶ様な風切り音に
「いつもの事」と耳を塞ぐ
冷めた瞳の私の前で
空を裂く赤錆の筋
知らない、
知らないサイレンの音
シラを切る誰かの世迷言
逃げたい、
逃げられない此の脚じゃ
鉄の翼に灼き殺される
あぁ
【帰りたい】声が聞こえた
火傷と塵に掠れた喉で
【もう帰りたい】声が聞こえた
子供の啜り泣く影を見た
今日もまた悪夢を見ている
私が産まれた日の惨劇(けしき)
戦火(ほのお)の中叫んでも
昔日の母は居ない
視えない、
視えない爆撃の雨
見栄を張る私の独り言
逃げたい、
逃げられない此の場所が
私を縫い止めて離さない
啼き喚く様な金切り声に
「もうやめてよ」と首を振った
挫けて崩れ落ちる私を
抱き締めた誰かの両手
知らない、
知らないサイレンの音
知りたかった母の子守唄
逃げたい、
走り出した此の身体
鉄の翼は追っては来ない
視えない、
視えない爆撃の雨
視えなかった母の立ち姿
言えない、
癒えなかった此の傷が
私の鎖を引き千切った
あぁ
澄み渡る青空を見た
赤錆色の空は無かった
もう戻らない、戻させやしない
鉄の翼は人を灼かない
あの松葉杖は、もう要らない
ワールドウォー・ナイトメア
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