私は逃亡者の列に加わり、リン警官に逮捕される事に成功した。
縄に繋がれる事もなく、番号札を配られて、ある場所に移動するだけだ。
そして、逮捕された私の目の前には、信じられない光景が広がっていた。
「今日はもう、大人しくしてね。めっ。」
専用の部屋に、1人ずつ呼んでお説教するリン警官。
その部屋にはドアがあるだけで壁はなく、話している内容は周りに筒抜けだ。
お説教が終わると、リン警官は逮捕者にお菓子をあげて、逮捕者はリン警官に握手を求める。
近くの交番に居るリン警官も応援に来ていて、あちらこちらで、「めっ。」という声が聞こえる。
「スタンプが欲しい方は、こちらに並んで下さい。」
お説教が終わって出てくると、もう1人のリン警官が、日替わりの特製スタンプを押してくれる。もちろん、リン警官の握手付きだ。
スタンプを沢山集めて、満足げに眺めている青マフラー。
彼は、「リン警官に踏まれ隊」のメンバーだ。
彼に話を聞くと、最も伝統のある「リン警官ファンクラブ」に入会する為には、100回捕まる必要があるらしい。
「リボンの良さが分かってきたから、100回捕まる頃には、僕もファンクラブに入会するかもしれないよ。」
その右隣に居るのは、集団の先頭で大きな旗を掲げていた、黄色いつんつん頭。
彼は、リン警官ファンクラブの代表者だ。
「はじめまして。旗持ちお疲れ様でした。」
私は、黄色い頭の彼にも声を掛けた。
「はじめまして。初音ミクの代表者。」
「なぜ、分かるのですか。」
「人間を此処(ここ)に送るなんて発想、ミク以外には無理だから。」
まあ、初音ミクのする事ですから。
と、お互いが納得出来てしまう所が恐ろしい。
「そう言えば、リン警官ファンクラブの事で、1つお聞きしたい事があるのですが。」
「何でもどうぞ。将来の入会者。」
私は、彼の好意に甘えて、知りたかった事を質問してみた。
「伝統あるファンクラブの代表って、どのように決まるのですか。」
「うちの場合は、ファン活動の実績と、リン警官に相応しい曲を作る事かなあ。」
「曲ですか?」
「代表の選抜前に、彼女に一番相応しい曲を作って歌う、コンテストがあるんだ。」
「リン警官のテーマ曲ですね。」
「僕は、以前、ファンが高じて、当時のリン警官と付き合っていた事がある。他の候補者よりも有利だったんだ。」
「それは、良かったですね。」
「でも、リンは歌手になっちゃって、、、」
彼の声が小さくなる。
「もう、リン警官の制服を着てくれなくなったんだ。うわーん。」
泣き出してしまった。
彼が好きになったリン警官は、今でも彼の傍(そば)に居る。
でも、歌手になった今は、リン警官の服を着てくれなくて、彼女を見る度に悲しみに溢(あふ)れているのだそうだ。
彼女の事が大好きだけれど、警官の姿も、同じくらい大好きな彼。
毎日心が張り裂けそうで、リン警官の熱狂的なファン活動で、ようやく心の平静を保つ彼。
リン警官ファンクラブの歴代の代表は、皆、そのような過去の持ち主で、
そのような彼らが奏でる曲は、リン警官ファン達の心に響くのだ。
重い話を聞いた後、ついに私の番が来た。
「393番のミクさん、どうぞ。」
「行ってきます。」
私は、膝に顔を埋めてしまった彼の背に、優しく声を掛けてから、リン警官の元へと向かった。
リン警官とミクさん達。第5楽章
続きは http://piapro.jp/t/rLB6
第1楽章は http://piapro.jp/t/wG9m
「ミクさんの隣」所属作品の1つです。
まとめ読みしたい方は、ブックマークなどからどうぞ。
「ミクさんの隣」ブックマーク = http://piapro.jp/bookmark/?pid=to_dk&view=text&folder_id=173153
to_dk作品紹介(ブログ) = http://tounderlinedk.blogspot.com/2010/07/blog-post_4264.html
コメント0
関連する動画0
オススメ作品
継ぐもの
月も星も途絶えた静かな夜
暗黒の海で瞬く
何かが動く
そうやって新しい命は生まれ
風と共に去り行く
その意味を知る
きっと雨が流れ
河を作るように
長い時間が過ぎて...継ぐもの
yyutaka優
込み入った日々に 集まる波が
膨らんだ閃き 火傷しちゃうメモリ
絡まってく色に 見知らぬ雲が
星を隠してRun away 遠く
何もない事でダメージ
受けてる孤独な世界
有り余る意思に 歯向かってく程に
深く深く沈んでいた
グッバイだ 撤退だ
蓋した瞼 裸足で駆け出す...「脳みそつかれた」歌詞
ゾカ
あぁ
リアルを溶かす夜に腰掛け
動けないまま
あぁ
綿菓子みたいな夢を見たい
またお預け
だらしないとか知らない
強く歩く街並み
的外れな事ばっかだから
真面目になんて無いわ...「ハカナイウタ」歌詞
ゾカ
意味と夢と命を集めて
作られてしまって身体は
終わった命を蒸し返す機械らしい
【これは彼の昔のお話】
人一人は涙を流して
「また会いたい」と呟いた
ハリボテの街の終末実験は
昨日時点で予想通りグダグダ過ぎて
その時点でもう諦めた方が良いでしょう?
次の二人は 街の隙間で...コノハの世界事情 歌詞
じん
おにゅうさん&ピノキオPと聞いて。
お2人のコラボ作品「神曲」をモチーフに、勝手ながら小説書かせて頂きました。
ガチですすいません。ネタ生かせなくてすいません。
今回は3ページと、比較的コンパクトにまとめることに成功しました。
素晴らしき作品に、敬意を表して。
↓「前のバージョン」でページ送りです...【小説書いてみた】 神曲
時給310円
6.
出来損ない。落ちこぼれ。無能。
無遠慮に向けられる失望の目。遠くから聞こえてくる嘲笑。それらに対して何の抵抗もできない自分自身の無力感。
小さい頃の思い出は、真っ暗で冷たいばかりだ。
大道芸人や手品師たちが集まる街の広場で、私は毎日歌っていた。
だけど、誰も私の歌なんて聞いてくれなかった。
「...オズと恋するミュータント(後篇)
時給310円
クリップボードにコピーしました
ご意見・ご感想