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『ハリー・ポッター』シリーズは史上最も有名なシリーズの1つだが、作品の大ファンでも「ヴォルデモート卿」「闇の帝王」「名前を呼んではいけないあの人」としても知られるトム・リドルについて、全てを知っているわけではないかもしれない。
作者のJ・K・ローリングはこれまで、ツイッター、インタビュー、公式サイトなどを通じて、"ハリー・ポッター"の世界を7冊の本を超えて拡大させてきた。
これらを踏まえ、『ハリー・ポッター』シリーズの大ファンでも気付いていないかもしれないヴォルデモートに関する事実をいくつか見ていこう。
※以下、『ハリー・ポッター』シリーズのネタバレを含みます。
「トム・マールヴォロ・リドル」と「ヴォルデモート卿」の名前には大きな意味がある。
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『ハリー・ポッター』の世界では、名前はしばしば深い意味を持つ。ヴォルデモートも例外ではない。「vol de mort」はフランス語で「死の窃盗」「死の飛翔」という意味で、シリーズを通じた彼の目的を示すものだ。
「ヴォルデモート」という名前は翻訳されてもそのままだが、「トム・マールヴォロ・リドル(Tom Marvolo Riddle)」は作中で「わたしはヴォルデモート卿(I am Lord Voldemort)」のアナグラムにならなければならないことから、翻訳によっては異なるアレンジがされている。
例えば、フランス語版では「わたしはヴォルデモート(Je suis Voldemort)」となるよう「トム・エルヴィス・ジェドソー(Tom Elvis Jedusor)」になっている。
トム・リドルの名前は実在する人物がもとになっている。
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作家はしばしば、登場人物やプロットのアイデアに自分の身の周りにあるものを使う。『ハリー・ポッター』にとって、こうしたインスピレーションの源の1つは、スコットランドのエディンバラにある墓地だった。
BBCによると、ミネルバ・マクゴガナル、アラスター・ムーディ、トム・リドルなどの名前は、グレイフライアーズ教会の墓地にある墓石にインスパイアされたものだという。
ホグワーツの闇の魔術に対する防衛術の先生になりたかった。
スネイプ先生もこの職に就きたがっていた。
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トム・リドルは闇の魔術に対する防衛術の先生の職に2度、応募している。アーマンド・ディペットがホグワーツの校長を務めていた時とアルバス・ダンブルドアが後を継いだ時だ。
ディペットには若すぎると退けられ、その数年後、ダンブルドアに願い出た時にはその悪意を見透かされていた。
リドル家とポッター家は遠い親戚。
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多くの読者は恐らく、ハリー・ポッターがぺべレル家の末裔であることを覚えているだろう。ぺべレル家は、3つの死の秘宝を所有していたことで知られる。
7冊目の本でわたしたちは、ハリーが父親の残した透明マントの本当の起源をつかんだ時、ハリーがイグノタス・ぺべレルの子孫であることを知った。
だが、トム・リドルもぺべレル家の子孫であることに気付いていないファンもいるかもしれない。トムの母親はゴーント家の出身で、その家系を遡るとカドマス・ぺべレルに行き着く。
カドマスは蘇りの石のもともとの持ち主で、それは指輪という形でトムの祖父マールヴォロ・ゴーントと伯父のモーフィン・ゴーントに引き継がれた(のちにトムが盗んだ)。ただ、指輪に蘇りの石が含まれていることを後世代の家族は知らなかった。
映画では、ヴォルデモートを複数の俳優が演じた。
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ヴォルデモート卿を演じた俳優と言えば、レイフ・ファインズを思い浮かべる人が多いだろうが、ファインズがヴォルデモートを演じたのは『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』からだ。
『ハリー・ポッターと賢者の石』でクィレル先生の後頭部にいたヴォルデモートはリチャード・ブレマーが演じたものだ。映画のエンドロールでは「名前を呼んではいけないあの人」とクレジットされている。
ヴォルデモートの両親の間に本当の愛はなかったようだ。これがヴォルデモートの死につながったのかもしれない。
トム・リドルの母親は、父親を誘惑するのに惚れ薬を使った。
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トム・リドルの母、メローピー・ゴーントは悲劇と虐待の生活を送っていた。
ダンブルドアによると、メローピーはこうした生活を捨てようと必死で、裕福なマグルのトム・リドル・シニアに愛の魔法をかけ、父親と兄弟のもとから自分を連れ出してくれるよう仕向けたという。こうして2人は結婚し、トム・ジュニア(=ヴォルデモート)が生まれた。
だが、惚れ薬の効果が徐々に消えてくると、トム・シニアはメローピーを捨て、メローピーは子どもをマグルの孤児院に預けるしかないと考えた。
"愛は全てに勝つ"はこのシリーズの大きなテーマだ。そして、この裏話からヴォルデモートの人生には一度も愛がなかったことは明らかだ。
子ども時代、自分の力を孤児院の別の子どもたちに試していた。
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トム・リドルの邪悪さは、子どもの頃から明らかだった。
『ハリー・ポッターと謎のプリンス』でわたしたちは、ダンブルドアの憂いの篩の中の記憶を通じて、トムが自分の育った孤児院で魔法を別の子どもたちに試していたことを知った。
本では、トムが2人の子どもを洞窟に連れて行き、何かものすごくひどいことをしたため、2人はそのことについて二度としゃべれなくなったという話が出てくる。洞窟はどうやらヴォルデモートに強い印象を残し、分霊箱(ホークラックス)の隠し場所の1つとなったようだ。
アルバニアはヴォルデモートにとって、重要な場所の1つだった。
クィレル先生はヴォルデモートとアルバニアで出会った。
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大半のファンは、第一次魔法対戦で赤ちゃんのハリーに負けてから、肉体を失ったヴォルデモートが力を取り戻すためにアルバニアの森に隠れていたことを覚えているだろう。
ヴォルデモートは『賢者の石』で自身が取り憑いていたクィレル先生が死んでから、同じ森に戻っていた。
隠れ場所としてなぜヴォルデモートがこの場所を選んだのか、具体的に明かされたことはないが、ヴォルデモートにとってアルバニアは大きな意味があった。初めて訪れた時のミッションは、7つの分霊箱のうちの1つを作るためにロウェナ・レイブンクローの失われた髪飾りを手に入れることだった(娘のヘレナ・レイブンクローがアルバニアの森に隠されていると明かしていた)。
最初の分霊箱はホグワーツの生徒だった時、嘆きのマートルを殺して作った。
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分霊箱を作るには、誰かの命を奪わなければならない。
トム・リドルは最初の分霊箱を「嘆きのマートル」として知られる、自分と同じホグワーツの生徒マートル・ワレンを殺すことで作った。
その後、トムの魂の一部は日記に入り込み、その日記をジニー・ウィーズリーが持ち、ホグワーツの秘密の部屋を開くことになる。
ナギニはヴォルデモートの復活に不可欠だった。
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ナギニはヴォルデモートの長年に渡るヘビの友だった。
いつどこで出会ったかは分からないが、ヴォルデモートがアルバニアで力を取り戻している時には一緒にいたことをわたしたちは知っている。ナギニの毒は、ヴォルデモートが仮の肉体を維持するためにも使われていた。
バーサ・ジョーキンズが殺害された後、ナギニはヴォルデモートの最後の分霊箱になった。
マグルを殺すことで、ヴォルデモートは死体の軍隊を作った。
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本では、亡者は闇の魔術によって生き返らされた死体だと明かされている。
ファンは『ハリー・ポッターと謎のプリンス』で、ダンブルドアとハリーが分霊箱を手に入れようと訪れた洞窟でたくさんの亡者に取り囲まれたシーンを覚えているだろう。
だが、ヴォルデモートが自身の亡者の軍隊の半数以上をマグルを殺し、その死体を生き返らせることで作っていたことは、あまり知られていないかもしれない。
ハリー・ポッターを最終的に「選ばれし者」にしたのはヴォルデモート。
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『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団』で分かったように、シビル・トレローニーは「7月の終わりに闇の帝王を倒す男の子が、帝王に3度抗った両親のもとに生まれる」と予言した。だが、その子どもの正体は常に明らかだったわけではない。
この条件にはハリー・ポッターとネビル・ロングボトムが当てはまっていたが、ヴォルデモートが最終的に自身と同じ半純血のハリーの後を追うと決め、ハリーの「選ばれし者」としての運命を固めた。
ベラトリックス・レストレンジとの間に娘が1人いる。
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2016年に初演された舞台劇『ハリー・ポッターと呪いの子』で、ヴォルデモートとベラトリックス・レストレンジとの間には「デルフィーニ」という名前の娘がいることが分かった。
デルフィーニがいつ生まれたかははっきりしていないが、『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団』で描かれたベラトリックスのアズカバンからの脱獄から『ハリー・ポッターと死の秘宝』で描かれたホグワーツの戦い —— ヴォルデモートとベラトリックスの両方が死んだ —— の間に生まれた。
デス・イーターは、もう少しで「ヴァルプルギスの騎士」と呼ばれるところだった。
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ホグワーツ在学中、トム・リドルは自身の指示に従うよう操ることのできる友人グループを作っていた。こうした友人の多くが忠実なるデス・イーター(死喰い人)となった。
BBCのインタビューでローリングは、このグループを当初「ヴァルプルギスの騎士(Knights of Walpurgis)」と呼ぶつもりだったと明かしている。
トム・リドルは優秀な生徒だった。
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トム・リドル/ヴォルデモート卿について、ポジティブなことを言うのは難しいかもしれないが、彼は非常に優れた才能のある生徒だった。
開心術と閉心術のスキルがあり、クラスではトップの成績を収め、魔術優等賞も受賞している。7年生の時には首席だった。
魔法省に就職できた可能性も。
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クラスでもトップ生徒の1人だったトム・リドルにはホグワーツ卒業後、たくさんのチャンスが目の前にあった。
最終学年を過ごしていた時には、スラグホーン教授が自身の魔法省とのコネクションを使って、面接をセッティングしようと持ち掛けた。
だが、ホグワーツで闇の魔術に対する防衛術カの教授の職に就けなかったリドルは、アンティークショップのボージン・アンド・バークスで働き始めた。ここで働いたことで、リドルはサラザール・スリザリンのロケットとヘルガ・ハッフルパフのカップを手に入れることができた。ロケットとカップはいずれも彼の分霊箱となった。
ヴォルデモートの最大の恐怖は、自らの死だった。
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まね妖怪ボガートは、目撃した人の一番恐れるものに姿を変える妖怪だ。ファンサイト「マグルネット(Mugglenet)」の2005年のインタビューでローリングは、ヴォルデモートの最大の恐怖は「不名誉な死」で、ボガートに遭遇したらヴォルデモートは恐らく自身の死んだ肉体を目にしたことだろうと語った。
この発言がなかったとしても、ヴォルデモートがシリーズを通して、自らの名前に恥じないように生き、死を打ち負かすために全力を尽くしていたことは明らかだ。自身の魂を7つに分割したこともこれに含まれる。
※本記事は、2021年1月9日に公開した記事の再掲です。