『DIE WITH ZERO』の著者、ビル・パーキンス氏
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- 老後のために十分な貯金がないと大変なことになるが、必要以上に貯蓄するのも問題だ。
- 貯蓄を重視しすぎていると、若いうちしかできない経験をする機会を逃してしまう。
- 長時間働いて貯めたお金も結局、効率的に使えないまま終わる可能性もある。
老後の資金のために十分お金を貯めていないと、引退したくても仕事を辞められないという事態になりかねない。しかし、必要以上に貯蓄するのも同様に問題だと、『DIE WITH ZERO 人生が豊かになりすぎる究極のルール』の著者、ビル・パーキンス氏は主張する。
著書の中で彼は、将来のためと節約し過ぎていると自制してしまい、今しかできない経験をする機会を逃してしまうと指摘。現在貯金している人には、貯金だけでなく出費についても、長期的なプランを考えることを呼びかけている。
老後のために貯蓄しすぎることがなぜ問題なのか、パーキンス氏が説く3つの理由を紹介しよう。
1. 若い時しか経験できない機会を逃す
パーキンス氏は著書で、将来使いきれない未知の出費のためにお金を貯めておくより、生涯をかけて賢く使う方が良いと説く。そして、老後のために貯金しすぎることが問題である理由の1つとして、若い時に人生を楽しむ能力を制限してしまうからだと主張している。
彼は、思い出作りや楽しい経験をすることを「投資」と「初期投資にかけた時間」になぞらえ、そのような思い出から得られる喜びを「配当」に例えて説明する。初期投資にはお金が要るし、老後のために貯金し過ぎていると経験に投資するお金が減ることになる。
「早いうちに投資する方が得だ。投資を始めるのが早ければ早いほど、思い出という配当を受けられる時間が長くなる」
歳を取るとさまざまなしがらみや責任、身体的な理由でできなくなることも、若い時はできる。若いうちに経験する機会を逃すということは、二度とない思い出作りのチャンスを逃すことになるのだ。若いうちにしかできない思い出作りこそが、お金をかける価値のあるものだとパーキンス氏は主張する。
2. 子どもが老成してから相続しても無駄になる
子どもたちのためにお金を残すことは本質的に悪いことではない。しかしパーキンス氏は、自分が死ぬまでお金をとっておくのは相続の形としてベストではないと言う。アメリカでは遺産相続者の大半は60歳前後で、実際にお金が必要な時期をとっくに過ぎている人がほとんどだ。
60代の人の多くは老後資金の準備ができていて、お金を必要としていないと彼は指摘する。「子どもたちの年齢が上に行けば行くほど、お金をあげても彼らには必要ないものとなり、ある時点を過ぎると親からもらうお金などほとんど無用になってしまうのだ」。
自分が死ぬまでお金をとっておき、すでに老後資金の用意が整ったシニア世代の子どもに相続するよりも、彼らがまだ若いうちに、社会人として独り立ちする時などの資金を援助してあげる方が良いとパーキンス氏は主張する。そもそも、人生の最期までお金をとっておくというのは本末転倒なのだ。
3. 必要以上に働くことになる
著書でパーキンス氏が主張する重要なポイントは、「使われないお金は失われたも同然であり、それと同時にそのお金を稼ぐために費やした時間も無駄になる」という考え方だ。
彼はエリザベスという架空の女性を例に説明する。エリザベスは老後資金として貯めた32万ドル(約4500万円)のうちの13万ドル(約1800万円)には手を付けていない。「この13万ドルで彼女はどれだけの経験をすることができただろうか。それほどのお金を貯めるのに費やした時間を見れば、事務職の彼女が必要以上に何時間働いたのかが分かる」
エリザベスの年収を6万ドル(約840万円)として、この触らない貯金のためにトータルで何時間無駄にしたかを計算した彼は、「13万ドルを時給19.56ドル(約2700円)で割ると、約6646。エリザベスは使うことのないお金のために6646時間も働いたことになる」と記している。
パーキンス氏は、年収の2倍以上に相当するお金を使わないなんて「2年半ただ働きしたようなものだ」と言う。お金を必要以上に貯めている人は、貯蓄・出費ともに改めて自分の長期プランを見直しても良いかもしれない。
※本記事は、2023年5月26日に初出した記事の再掲です。