おしゃれに生まれ変わった「地域密着食堂」がSNSでトレンドに 高齢者生活を支える多世代交流の場【洞察☆中国】

2024年02月01日09時00分

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日中福祉プランニング代表・王青

 最近、上海を含めて中国各地で急速に増えている「社区食堂」が大きく注目され、トレンドとなっている。中国語の「社区」は、コミュニティーという意味であり、「社区食堂」は、地域に密着する食堂ということだ。

 高齢化が猛スピードで進む中国では、国が在宅の高齢者を支援する政策の一環として、地域に高齢者向けの食堂や配膳センターなどを設置・整備してきた。最近、各地で一般市民や若者もこぞって利用することで、多くの写真や体験談がSNSで投稿され、ちまたで大きく話題となり、注目を集めている。特に交通が便利で、お洒落な建物の中にある「社区食堂」に人々が押し寄せ、昼食の時間帯には長蛇の列ができるほどである。

 地域にあったこれまでの食堂は、健康を第一に考えた故に料理の味はそれほど重視しなかったし、食堂の見た目も地味だった。それが今や、まるで生まれ変わったように、外観も内装もお洒落なデザインとなった。最先端のIT技術も集約している。

健康情報を元に食事アドバイス、キャッシュレス決済も

 例えば、一部の食堂では、チップ付きのトレーを使用して、選んだ料理の種類と量を自動的に測り、料金が即座に認識されるシステムを導入。当日のメニューを表示するほか、各料理に使用する食材や栄養成分が壁にあるスクリーンに映し出されている。糖尿病や肥満など生活習慣病を患う人には、料理を選択しやすくするためである。

 さらに、食堂には栄養照会機が設置されていて、初めて利用する際、持病の有無などの関連情報を入力すれば、システムはビッグデータに基づいて食堂で食べた料理を分析し、脂肪などの総摂取量を計算し、合理的な食事のアドバイスを提示してくれる。

 キャッシュレスの先進国、中国である故に、当然支払いはアリペイやウィーチャットペイなどのスマホ決済ができるが、デジタルに苦手な高齢者に配慮し、現金やプリペイドカードの支払いも可能。プリペイドカードと顔認証を一体化する食堂もあるので、顔認証されたら料金が自動的に引き落とされる仕組みとなっている。

約50種の豊富なメニュー、平均700~800円

 何よりも肝心な料理の味の評判は上々だ。ほとんどが1日3食で365日営業の年中無休である。朝食のメニューは中国の伝統的な豆乳やおかゆ、豚まん、油条(細長い揚げパン)などのほか、牛乳やパン、ヨーグルトなども揃っていて、約十数種類ある。昼・夕食は炒め物をはじめ、煮物、揚げ物、蒸し物、スープなど、多彩な食材を使って50以上の料理がずらりと並べられている。

 筆者が昨年12月に上海を訪れた際、「社区食堂」で食べてみた。ガラス棚には多くの家庭料理が並んでおり、どれも美味しそうで、何を選ぼうかと悩むほどだった。周りを見ると、住民や会社員が多かった。1食の料金は地域により異なるが、高齢者には割引制度がある。60歳以上は10%、75歳以上は15%オフ。一般の利用者はおかず四つだと、平均700~800円ぐらいで、一般相場より安い。筆者が行ったもう一カ所の食堂は、28元(約560円)で食べ放題、約45種類の料理があった。

多世代交流の社交場に

 「社区食堂」は、政府により民間の運営会社に政府所有の物件を無料提供する上、市や所在の区レベルの予算で、食堂の改築と運営に対して補助金の支援政策がある。2022年末までに、上海市の高齢者向け社区食堂は305カ所で、1日平均10万1000食を提供。今後、さらに全市範囲で増やしていく計画である。政府関係者は「社区食堂は社交の場でもある。高齢者はいろいろな年齢層の人たちと交流ができることで、一種の社会参加となり、心身ともに良い影響が与えられている」と語った。

 中国は核家族化が進み、一人暮らしや老夫婦のみの高齢者世帯が年々増え続いている。そこで身近に便利で豊富な食事が提供されることで、どれだけ救われているのかは言うまでもないことである。(12月25日記)

 (時事通信社「金融財政ビジネス」より)

 【筆者紹介】
 王 青(おう・せい) 日中福祉プランニング代表。中国・上海市出身。大阪市立大学経済学部卒業。アジア太平洋トレードセンター(ATC)入社。大阪市、朝日新聞社、ATCの3者で設立した福祉関係の常設展示場「高齢者総合生活提案館 ATCエイジレスセンター」に所属し、 広く福祉に関わる。

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 (2024年2月1日掲載)

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