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「ベル神殿」の版間の差分

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'''ベル神殿'''（ベルしんでん、{{lang-ar|معبد بل}}、{{lang-en|Temple of Bel}}）は、[[シリア]]の[[パルミラ]]に位置する古代の石造遺跡である。神殿は、パルミラにおいて崇拝されたセム人の神[[バアル|ベル]]に捧げられ、パルミラの月神アグリボール ([[w:Aglibol|Aglibol]]) と太陽神ヤルヒボール (Yarhibol) とともに三位神として、パルミラの信仰生活の中心に造られ、西暦紀元32年に奉献された<ref name="Gates">Gates, 2003, p.390-391.</ref><ref name="Kaizer">Kaizer, p.67.</ref>。Aedeen Cremin は、その遺跡をパルミラで「最もよく保存されたもの」と見なしている<ref>Cremin, p.187.</ref>。
'''ベル神殿'''（ベルしんでん、{{lang-ar|معبد بل}}、{{lang-en|Temple of Bel}}）は、[[シリア]]の[[パルミラ]]に位置する古代の石造遺跡である。神殿は、パルミラにおいて崇拝されたセム人の神[[バアル|ベル]]（ベール<ref name="パルミラの遺跡49-56">『パルミラの遺跡』 (1988)、49-56頁</ref>、バアル、バール）に捧げられ、パルミラの月神{{仮リンク|アグリボール|en|Aglibol}}と太陽神{{仮リンク|ヤルヒボール|en|Yarhibol}}とともに三位神として、パルミラの信仰生活の中心に造られ、西暦紀元32年に奉献された<ref name="Gates">Gates, 2003, pp. 390-391.</ref><ref name="Kaizer">Kaizer, p. 67.</ref>。その遺跡はパルミラで最もよく保存されたものといわれていた<ref>Cremin, p. 187.</ref>。[[2015年]]8月末、{{仮リンク|国連訓練調査研究所|en|United Nations Institute for Training and Research}} (UNITAR) が[[衛星画像]]を解析した結果、イスラム過激派組織 [[ISIL]] によって破壊されたと発表した<ref>{{cite web |url=http://www.unitar.org/unosat-confirms-destruction-palmyra-temples-syria |title=UNOSAT Confirms Destruction of Palmyra Temples in Syria　|date=2015-09-01 |accessdate=2016-11-17}}</ref><ref>{{cite news |url=http://www3.nhk.or.jp/news/html/20150901/k10010212211000.html |title=国連機関 シリアのベル神殿の破壊を確認 |newspaper=[[日本放送協会|NHK]] NEWS web |date=2015-09-01 |publisher=[[archive.is]] |accessdate=2016-11-17 |archiveurl=https://archive.fo/20150901112033/http://www3.nhk.or.jp/news/html/20150901/k10010212211000.html |archivedate=2015年9月1日 }}</ref>。


== 歴史 ==
== 歴史 ==
[[ファイル:Bassel-bel-3.jpg|thumb|left|200px|ベル神殿のデジタル復元]]
神殿は、紀元前2200-1550年代にさかのぼる人間の居住を示す地層の丘の上に築かれており、地下6メートルから[[青銅器時代]]中期初めの痕跡が認められている<ref name="パルミラの遺跡p49">パルミラの遺跡 (1988)、49頁</ref>。その一帯は、通常「最初のベル神殿」とも「[[ヘレニズム]]神殿」とも呼ばれるヘレニズム時代に建てられたかつての神殿とともに前ローマ時代に占領された。聖域 ([[w:temenos|temenos]]) および[[プロピュライア]]（入口）をもつ周壁は、西暦1世紀後半から2世紀前半（2世紀中頃まで<ref name="パルミラの遺跡p49"/>）に建設された。境内にある[[コロネード|列柱]]のほとんどの[[コリント式]]支柱は、寄進者の彫像が立っていた台座を今もなお見せている<ref name="Kaizer"/>。
神殿は、[[紀元前3千年紀]]にさかのぼる人間の居住を示す地層の[[遺丘]]の上に築かれ、地下6メートルから[[青銅器時代]]中期（紀元前2200-1550年）初頭の痕跡が認められている<ref name="パルミラの遺跡49">『パルミラの遺跡』 (1988)、49頁</ref>。その一帯は、一般に「最初のベル神殿」とも「[[ヘレニズム]]神殿」とも呼ばれるヘレニズム時代に建てられたかつての神殿とともに前[[ローマ帝国|ローマ]]時代に占領された。聖域 ([[w:temenos|temenos]]) および[[プロピュライア]]（入口）をもつ周壁は、西暦1世紀後半から2世紀前半（2世紀中頃まで<ref name="パルミラの遺跡49"/>）に建設された。境内にある[[コロネード|列柱]]の[[コリント式]]支柱の台座には、かつて寄進者の彫像が立っていた<ref name="Kaizer"/>。

ベル神殿は、[[東ローマ帝国]]（ビザンティン帝国）時代にキリスト教の教会に転換された<ref name="Browning 1979">{{cite book |last=Browning |first=Iain |date=1979 |title=Palmyra |publisher=Noyes Press |isbn=9780815550549 |page=168 |quote=Like the Temple of Bel, the Baal Shamin was converted into a church during the Byzantine period.}}</ref>。1132年には構造物の一部がアラブ人によって改造され、その構造を保存しながら神殿をモスクに変更した。神殿は1920年代までモスクとして使用されていた<ref>{{cite news |last=Yan |first=Holly |title=How ISIS' demolition of a Syrian temple impacts the world |date=2015-09-01 |work=[[CNN]] |url=https://edition.cnn.com/2015/09/01/middleeast/syria-palmyra-temple-consequences/|accessdate=2016-11-19}}</ref>。2015年8月、ISIL によって破壊された。


== 建築 ==
== 建築 ==
[[File:Columns in the inner court of the Bel Temple Palmyra Syria.JPG|thumb|left|200px|神殿の境内にある列柱]]
[[ファイル:Columns in the inner court of the Bel Temple Palmyra Syria.JPG|thumb|left|200px|神殿の列柱]]
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[[ファイル:Temple of Bel Palmyra Syria.jpg|thumb|200px|内陣北側]]
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神殿は、[[古代オリエント]]とギリシア・ローマ建築の著しい統合を示している<ref name="Gates"/>。本殿は[[ポルチコ]]（柱廊）が並ぶ大きな境内の内側にある。それは長方形の形をしており、南北を向く<ref name="Gates"/>。プロピュライアを備えた、南北205メートル、東西210メートルの<ref name="パルミラの遺跡p49"/>、巨大な長い周壁に囲まれた舗装された境内にその本殿は置かれている。その境内中央の基壇上に、実際の神殿建造物である本殿の[[内陣]]がある。内陣はコリント式の柱の前柱式柱廊に完全に囲まれているが、唯一境内から通じる大きな階段にある入場門によって長辺側が途切れている。
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[[ファイル:HPIM3143.JPG|thumb|200px|北側の神像安置所の上部]]
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神殿は、[[古代オリエント]]とギリシア・ローマ建築の著しい統合を示している<ref name="Gates"/>。境内はプロピュライアを備えた、南北205メートル、東西210メートルの<ref name="パルミラの遺跡49"/>巨大な長い周壁に囲まれる。その入口となる西側の記念門より通じる舗装された境内にその本殿は置かれた。本殿は[[ポルチコ]]（柱廊）が並ぶ大きな境内の内側にあって、長方形の形をしており、南北を向く<ref name="Gates"/>。その境内中央の基壇上に、実際の神殿建造物である本殿の[[内陣]]があった。内陣はコリント式の柱の前柱式柱廊に囲まれ、唯一境内から通じる大きな階段にある入場門によって長辺側が途切れている。


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内陣は、内側に2か所の聖域をもつということにおいて独特であり、北と南に向かい合う神像安置所（アディトン、[[w:Adyton|adyton]]）があって、ベルおよび他の地元の神々の聖堂として捧げられた。南北の安置所の天井は一枚岩で造られ、北側の安置所の天井は、丸く凹んだ部分に[[黄道十二星座|黄道帯]]の十二宮に囲まれた、古くから知られた7つの惑星神の胸像の浅浮き彫り彫刻が[[ユーピテル|ユピテル]]を中心にみられ、また、北安置所の上枠にはベル神を象徴する翼を広げた[[ワシ]]が彫られており、その翼下に星の形の装飾が見られるとともに、両翼端にはアグリボールとヤルヒボールが刻まれて、片側の端にその1神が確認できた<ref name="パルミラの遺跡50">『パルミラの遺跡』 (1988)、50頁</ref>。南側の神像安置所には広い階段がついていて、安置している三位神像を、行列の折に運び出していたと考えられる<ref name="パルミラの遺跡49-50">『パルミラの遺跡』 (1988)、49-50頁</ref>。内陣は、2辺の長い壁に高く切り取られた2対の窓より明かりがとられ<ref name="Gates"/><ref name="Kaizer"/>、建物の階段の3か所の角からは、屋上テラスに通じた<ref name="Gates"/>。
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[[File:Temple of Bel Palmyra Syria.jpg|thumb|200px|内部北側]]
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[[File:HPIM3143.JPG|thumb|200px|北側の神像安置所の上部]]
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内陣は、内側に2か所の聖域をもつということにおいて独特であり、北と南に向かい合う神像安置所（アディトン、[[w:Adyton|adyton]]）があって、ベルおよび他の地元の神々の聖堂として捧げられている。南北の安置所の天井は一枚岩で造られており、北側の安置所の天井は、丸く凹んだ部分に[[黄道十二星座|黄道帯]]の十二宮に囲まれた、古くから知られた7つの惑星神の胸像の浅浮き彫り彫刻が[[ユーピテル|ユピテル]]を中心にみられ、また、北安置所の上枠にはベル神を象徴する翼を広げた[[ワシ]]が彫られており、その翼下に星の形の装飾が見られるとともに、両翼端にはアグリボールとヤルヒボールが刻まれて、現在も片側の端にその1神が確認できる<ref name="パルミラの遺跡p50">パルミラの遺跡 (1988)、50頁</ref>。南側の神像安置所には広い階段がついており、安置している三位神像を、行列の折に運び出していたと考えられる<ref name="パルミラの遺跡p49-50">パルミラの遺跡 (1988)、49-50頁</ref>。内陣は、2辺の長い壁に高く切り取られた2対の窓より明かりがとられている<ref name="Gates"/><ref name="Kaizer"/>。建物の階段の3か所の角からは、屋上テラスに通じる<ref name="Gates"/>。


[[File:Frieze in the Temple of Bel Palmyra Syria.JPG|thumb|200px|月神アグヒボールや列柱・果物を供えた祭壇などが彫られた梁]]
[[ファイル:Frieze in the Temple of Bel Palmyra Syria.JPG|thumb|200px|left|月神アグリボールや列柱・果物を供えた祭壇などが彫られた梁]]
柱廊の天井を支えた[[梁 (建築)|梁]]（はり）のうち2本が本殿の横に置かれ<ref name="パルミラの遺跡p52">パルミラの遺跡 (1988)、52頁</ref>、その1本は、ラクダやベールをかぶった女性の行列の彫刻で知られる<ref name="パルミラの遺跡p54">パルミラの遺跡 (1988)、54頁</ref><ref name="embassy">http://www.syrianembassy.us/Aboutsyria/temple_of_bel.htm</ref>。もう1本の梁の片面には、肩に三日月をもつアグリボールや神殿の列柱および果物を供えた祭壇などが見られ、反対の面には、ウマに乗った神や6体の神などが刻まれている<ref name="パルミラの遺跡p52-54">パルミラの遺跡 (1988)、52、54頁</ref>。
柱廊の天井を支えた[[梁 (建築)|梁]]（はり）のうち2本が本殿の横に置かれ<ref name="パルミラの遺跡52">『パルミラの遺跡』 (1988)、52頁</ref>、その1本は、ラクダやベールをかぶった女性の行列の彫刻で知られた<ref name="パルミラの遺跡54">『パルミラの遺跡』 (1988)、54頁</ref><ref name="embassy">{{cite web |title=Temple of Bel |publisher=Syrian Embassy in the United States |url=http://www.syrianembassy.us/Aboutsyria/temple_of_bel.htm |accessdate=2016-11-23 |archiveurl=https://web.archive.org/web/20090715065316/http://www.syrianembassy.us/Aboutsyria/temple_of_bel.htm |archivedate=2009-07-15}}</ref>。もう1本の梁の片面には、肩に三日月をもつアグリボールや神殿の列柱および果物を供えた祭壇などが見られ、反対の面には、ウマに乗った神や6体の神などが刻まれていた<ref name="パルミラの遺跡52-54">『パルミラの遺跡』 (1988)、52、54頁</ref>。


境内には、[[流し台]]、[[祭壇]]、食堂、それに[[壁龕]]（へきがん）を備えた建物の遺構がある。また、北西の隅には、生贄の動物が境内に引き込まれた傾斜路がある<ref name="Kaizer"/>。3つの要路があり、そのうち入場口は西門から通じている。
境内には、[[流し台]]、[[祭壇]]、食堂、それに[[壁龕]]（へきがん）を備えた建物の遺構があった。また、北西の隅には、生贄の動物が境内に引き込まれた傾斜路を備えていた<ref name="Kaizer"/>。


1132年に[[アラビア人]]によって改修され[[堡塁]]（ほうるい）が築かれた時、神殿は[[モスク]]に転化され<ref name="embassy"/>、そのことでさらなる破損から保護された。
1132年に[[アラビア人]]によって改修され[[堡塁]]（ほうるい）が築かれた時、神殿は[[モスク]]に転化され<ref name="embassy"/>、そのことでさらなる破損から保護されてきた。
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{{wide image|Palmyra Ruines Temple of Bel.jpg|650px|ベル神殿の境内（2008年）}}

== 破壊 ==
[[ファイル:Palmyra after freedom (4).jpg|thumb|200px|ISIL に爆破された神殿の遺構]]
2015年8月30日、ISIL が爆発物によって神殿を一部破壊したと目撃証言により報じられた<ref>{{cite news |last=Westall |first=Sylvia |date=2015-08-30 |title=Islamic State destroys part of Syria's Temple of Bel – monitors |work=[[ロイター|Reuters]] UK |url=http://uk.reuters.com/article/2015/08/30/uk-mideast-crisis-syria-bel-idUKKCN0QZ0XO20150830 |accessdate=2016-11-19}}</ref>。石塊や柱が地面に崩れ、唯一、壁だけが残ると報告され<ref>{{cite news |author=<!--Staff writer(s); no by-line.--> |date=2015-08-31 |title=Syria's Palmyra Temple of Bel 'severely damaged' by IS |work=[[BBCニュース|BBC News]] |url=http://www.bbc.com/news/world-middle-east-34103994 |accessdate=2016-11-19}}</ref><ref>{{cite web |author=<!--Staff writer(s); no by-line.--> |date=2015-08-30 |title=IS Partially Destroys Temple Of Bel – Reports |work=[[Sky News]] |url=http://news.sky.com/story/1544154/is-partially-destroys-temple-of-bel-reports |accessdate=2016-11-19}}</ref>、その損傷は[[シリア人権監視団]]からも伝えられた<ref>{{cite news |author=<!--Staff writer(s); no by-line.--> |title=Activists: ISIL damages ancient temple in Syria's Palmyra |url=http://www.usatoday.com/story/news/world/2015/08/30/isil-damages-palmyra-temple/71428468/ |work=[[USAトゥデイ|USA Today]] |agency=Associated Press |date=2015-08-30 |accessdate=2016-11-19}}</ref>。

2015年8月31日、[[国際連合|国連]]は衛星画像を検討した結果、神殿の破壊を確認し、「ベル神殿の本殿と、同じくその直近の列柱の破壊が確認できる」と国連訓練調査研究所 (UNITAR) より報告された<ref>{{cite news |author=<!--Staff writer(s); no by-line.--> |date=2015-09-01 |title=Palmyra's Temple of Bel destroyed, says UN |work=BBC News |url= http://www.bbc.com/news/world-middle-east-34111092 |accessdate=2016-11-19}}</ref><ref>{{cite web |author=<!--Staff writer(s); no by-line.--> |date=2015-09-01 |title=Satellite images show Palmyra temple destruction |work=BBC News |url=http://www.bbc.com/news/world-middle-east-34110717 |accessdate=2016-11-19}}</ref><ref>{{cite news |last1=Barnard |first1=Anne |last2=Saad |first2=Hwaida |date=2015-08-31 |title=Palmyra Temple Was Destroyed by ISIS, U.N. Confirms |newspaper=[[ニューヨーク・タイムズ|The New York Times]] |issn=0362-4331 |url=http://www.nytimes.com/2015/09/01/world/middleeast/isis-militants-severely-damage-temple-of-baal-in-palmyra.html |accessdate=2016-11-19}}</ref>。本殿の入場門だけが神殿の破壊より免れた<ref>{{cite news |last=Gayle |first=Damien |title=Palmyra arch that survived Isis to be replicated in London and New York |url=http://www.theguardian.com/world/2015/dec/28/palmyra-temple-bel-arch-survived-isis-syria-london-new-york |work=[[ガーディアン|The Guardian]]|date=2015-12-28 |archiveurl=https://web.archive.org/web/20160109093409/http://www.theguardian.com/world/2015/dec/28/palmyra-temple-bel-arch-survived-isis-syria-london-new-york |archivedate=9 January 2016}}</ref><ref>{{Cite news |title=無残な世界遺産の姿…粉々の神殿、彫刻の顔は破壊された |newspaper=[[朝日新聞デジタル|朝日新聞DIGITAL]] |date=2019-01-30 |url=https://www.asahi.com/articles/ASM1D3CDZM1DUHBI007.html |publisher=[[朝日新聞社]] |accessdate=2019-01-31}}</ref>。


== 脚注 ==
== 脚注 ==
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== 参考文献 ==
== 参考文献 ==
* {{Cite book|和書 |author=アドナン＝ブンニ、ハレド＝アル＝アサド |translator=小玉新次郎 |year=1988 |title=パルミラの遺跡 |publisher=[[東京新聞出版局]]|ref=パルミラの遺跡}}
* {{Cite book |和書 |author=アドナン＝ブンニ、[[ハレド・アサド|ハレド＝アル＝アサド]]|translator=小玉新次郎 |year=1988 |title=パルミラの遺跡 |publisher=[[東京新聞出版局]]|ref=パルミラの遺跡}}
*{{Citation|title=Ancient cities: the archaeology of urban life in the Ancient Near East and Egypt, Greece and Rome|url=http://books.google.com/books?id=490NAAAAQAAJ&pg=PA390&dq=temple+of+bel+palmyra&lr=&ei=PiKSS5yWJ6WCkQSDq92bDQ&cd=18#v=onepage&q=temple%20of%20bel%20palmyra&f=false|first1=Charkes|last1=Gates|publisher=[[Routledge]]|year=2003|ISBN=0-415-01895-1, 9780415018951}}
* {{Cite book |first=Charkes |last=Gates |title=Ancient Cities: The Archaeology of Urban Life in the Ancient Near East and Egypt, Greece and Rome |year=2003 |url=https://books.google.co.jp/books?id=490NAAAAQAAJ&pg=PA390&dq=temple+of+bel+palmyra&lr=&ei=PiKSS5yWJ6WCkQSDq92bDQ&cd=18&redir_esc=y&hl=ja#v=onepage&q=temple%20of%20bel%20palmyra&f=false |publisher=[[ラウトレッジ|Routledge]] |ISBN=978-0-415-01895-1}}
*{{Citation|title=The religious life of Palmyra: a study of the social patterns of worship in the Roman period|url=http://books.google.com/books?id=KvZ7K5KWbuoC&pg=PA67&dq=temple+of+bel+palmyra&ei=SRySS-TtJZyqkATyvaysDQ&cd=1#v=onepage&q=temple%20of%20bel%20palmyra&f=false|first1=Ted|last1=Kaizer|publisher=Franz Steiner Verlag|year=2002|ISBN=3-515-08027-9, 9783515080279}}
* {{Cite book |first=Ted |last=Kaizer |title=The Religious Life of Palmyra: A Study of the Social Patterns of Worship in the Roman Period |year=2002 |url=https://books.google.co.jp/books?id=KvZ7K5KWbuoC&pg=PA67&dq=temple+of+bel+palmyra&ei=SRySS-TtJZyqkATyvaysDQ&cd=1&redir_esc=y&hl=ja#v=onepage&q=temple%20of%20bel%20palmyra&f=false|publisher=Franz Steiner Verlag |ISBN=978-3-515-08027-9}}
*{{Citation|title=Archaeologica: The World's Most Significant Sites and Cultural Treasures|url=http://books.google.com/books?id=A0llBlzF6UgC&pg=PA187&dq=temple+of+bel+palmyra&lr=&ei=oSWSS62zM5CclQT9993XDQ&cd=25#v=onepage&q=temple%20of%20bel%20palmyra&f=false|first1=Aedeen|last1=Cremin|publisher=Frances Lincoln Ltd.|year=2007|ISBN=0-7112-2822-1, 9780711228221}}
* {{Cite book |first=Aedeen |last=Cremin |title=Archaeologica: The World's Most Significant Sites and Cultural Treasures |year=2007 |url=https://books.google.co.jp/books?id=V8orvgAACAAJ&dq=Archaeologica:+The+World%27s+Most+Significant+Sites+and+Cultural+Treasures&hl=ja&sa=X&ved=0ahUKEwjfz5uo5Z7iAhVRyIsBHTnRAroQ6AEIKDAA |publisher=Frances Lincoln |ISBN=978-0-7112-2822-1}}


== 外部リンク ==
== 外部リンク ==
{{Commons category|Temple of Baal in Palmyra|ベル神殿}}
{{Commons category|Temple of Baal in Palmyra|ベル神殿}}
* {{Citation |url=http://www.traveladventures.org/continents/asia/temple-of-bel.html |title=Syria: Temple of Bel |year=2001 |website=Around the World in 80 Clicks |publisher=www.traveladventures.org}}
*[http://www.syrianembassy.us/Aboutsyria/temple_of_bel.htm Syrian embassy site with history of the site]
* {{Citation |url=https://www.khanacademy.org/humanities/ancient-art-civilizations/palmyra/a/temple-of-bel-palmyra |title=Temple of Bel, Palmyra |publisher=[[カーンアカデミー|Khan Academy]]}}
*[http://www.traveladventures.org/continents/asia/templeofbel.shtml Travel site with images]

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[[File:Palmyra Ruines Temple of Bel.jpg|thumb|left|650px|ベル神殿の境内]]


{{Normdaten}}
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[[Category:シリアの考古遺跡]]
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[[Category:ISILにより破壊された建築物]]

2023年8月3日 (木) 20:34時点における最新版

ベル神殿
معبد بل
ベル神殿、本殿（2010年）
ベル神殿の位置（シリア内）
ベル神殿
シリア内の位置
所在地 シリアの旗 シリア、ホムス県、パルミラ
座標 北緯34度32分49秒 東経38度16分26秒 / 北緯34.547度 東経38.274度 / 34.547; 38.274
種類 神殿
全長 15メートル (49 ft)
幅 205メートル (673 ft)
歴史
資材 石材
完成 西暦32年
文化 パルミラ (Palmyrene)
追加情報
状態 大部分が崩壊・一部残存

ベル神殿（ベルしんでん、アラビア語: معبد بل‎、英語: Temple of Bel）は、シリアのパルミラに位置する古代の石造遺跡である。神殿は、パルミラにおいて崇拝されたセム人の神ベル（ベール[1]、バアル、バール）に捧げられ、パルミラの月神アグリボール（英語版）と太陽神ヤルヒボール（英語版）とともに三位神として、パルミラの信仰生活の中心に造られ、西暦紀元32年に奉献された[2][3]。その遺跡はパルミラで最もよく保存されたものといわれていた[4]。2015年8月末、国連訓練調査研究所（英語版） (UNITAR) が衛星画像を解析した結果、イスラム過激派組織 ISIL によって破壊されたと発表した[5][6]。

歴史

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ベル神殿のデジタル復元

神殿は、紀元前3千年紀にさかのぼる人間の居住を示す地層の遺丘の上に築かれ、地下6メートルから青銅器時代中期（紀元前2200-1550年）初頭の痕跡が認められている[7]。その一帯は、一般に「最初のベル神殿」とも「ヘレニズム神殿」とも呼ばれるヘレニズム時代に建てられたかつての神殿とともに前ローマ時代に占領された。聖域 (temenos) およびプロピュライア（入口）をもつ周壁は、西暦1世紀後半から2世紀前半（2世紀中頃まで[7]）に建設された。境内にある列柱のコリント式支柱の台座には、かつて寄進者の彫像が立っていた[3]。

ベル神殿は、東ローマ帝国（ビザンティン帝国）時代にキリスト教の教会に転換された[8]。1132年には構造物の一部がアラブ人によって改造され、その構造を保存しながら神殿をモスクに変更した。神殿は1920年代までモスクとして使用されていた[9]。2015年8月、ISIL によって破壊された。

建築

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神殿の列柱
内陣北側
北側の神像安置所の上部

神殿は、古代オリエントとギリシア・ローマ建築の著しい統合を示している[2]。境内はプロピュライアを備えた、南北205メートル、東西210メートルの[7]巨大な長い周壁に囲まれる。その入口となる西側の記念門より通じる舗装された境内にその本殿は置かれた。本殿はポルチコ（柱廊）が並ぶ大きな境内の内側にあって、長方形の形をしており、南北を向く[2]。その境内中央の基壇上に、実際の神殿建造物である本殿の内陣があった。内陣はコリント式の柱の前柱式柱廊に囲まれ、唯一境内から通じる大きな階段にある入場門によって長辺側が途切れている。

内陣は、内側に2か所の聖域をもつということにおいて独特であり、北と南に向かい合う神像安置所（アディトン、adyton）があって、ベルおよび他の地元の神々の聖堂として捧げられた。南北の安置所の天井は一枚岩で造られ、北側の安置所の天井は、丸く凹んだ部分に黄道帯の十二宮に囲まれた、古くから知られた7つの惑星神の胸像の浅浮き彫り彫刻がユピテルを中心にみられ、また、北安置所の上枠にはベル神を象徴する翼を広げたワシが彫られており、その翼下に星の形の装飾が見られるとともに、両翼端にはアグリボールとヤルヒボールが刻まれて、片側の端にその1神が確認できた[10]。南側の神像安置所には広い階段がついていて、安置している三位神像を、行列の折に運び出していたと考えられる[11]。内陣は、2辺の長い壁に高く切り取られた2対の窓より明かりがとられ[2][3]、建物の階段の3か所の角からは、屋上テラスに通じた[2]。

月神アグリボールや列柱・果物を供えた祭壇などが彫られた梁

柱廊の天井を支えた梁（はり）のうち2本が本殿の横に置かれ[12]、その1本は、ラクダやベールをかぶった女性の行列の彫刻で知られた[13][14]。もう1本の梁の片面には、肩に三日月をもつアグリボールや神殿の列柱および果物を供えた祭壇などが見られ、反対の面には、ウマに乗った神や6体の神などが刻まれていた[15]。

境内には、流し台、祭壇、食堂、それに壁龕（へきがん）を備えた建物の遺構があった。また、北西の隅には、生贄の動物が境内に引き込まれた傾斜路を備えていた[3]。

1132年にアラビア人によって改修され堡塁（ほうるい）が築かれた時、神殿はモスクに転化され[14]、そのことでさらなる破損から保護されてきた。

ベル神殿の境内（2008年）

破壊

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ISIL に爆破された神殿の遺構

2015年8月30日、ISIL が爆発物によって神殿を一部破壊したと目撃証言により報じられた[16]。石塊や柱が地面に崩れ、唯一、壁だけが残ると報告され[17][18]、その損傷はシリア人権監視団からも伝えられた[19]。

2015年8月31日、国連は衛星画像を検討した結果、神殿の破壊を確認し、「ベル神殿の本殿と、同じくその直近の列柱の破壊が確認できる」と国連訓練調査研究所 (UNITAR) より報告された[20][21][22]。本殿の入場門だけが神殿の破壊より免れた[23][24]。

脚注

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  1. ^ 『パルミラの遺跡』 (1988)、49-56頁
  2. ^ a b c d e Gates, 2003, pp. 390-391.
  3. ^ a b c d Kaizer, p. 67.
  4. ^ Cremin, p. 187.
  5. ^ “UNOSAT Confirms Destruction of Palmyra Temples in Syria　” (2015年9月1日). 2016年11月17日閲覧。
  6. ^ “国連機関 シリアのベル神殿の破壊を確認”. NHK NEWS web (archive.is). (2015年9月1日). オリジナルの2015年9月1日時点におけるアーカイブ。. https://archive.fo/20150901112033/http://www3.nhk.or.jp/news/html/20150901/k10010212211000.html 2016年11月17日閲覧。 
  7. ^ a b c 『パルミラの遺跡』 (1988)、49頁
  8. ^ Browning, Iain (1979). Palmyra. Noyes Press. p. 168. ISBN 9780815550549. "Like the Temple of Bel, the Baal Shamin was converted into a church during the Byzantine period." 
  9. ^ Yan, Holly (2015年9月1日). “How ISIS' demolition of a Syrian temple impacts the world”. CNN. https://edition.cnn.com/2015/09/01/middleeast/syria-palmyra-temple-consequences/ 2016年11月19日閲覧。 
  10. ^ 『パルミラの遺跡』 (1988)、50頁
  11. ^ 『パルミラの遺跡』 (1988)、49-50頁
  12. ^ 『パルミラの遺跡』 (1988)、52頁
  13. ^ 『パルミラの遺跡』 (1988)、54頁
  14. ^ a b “Temple of Bel”. Syrian Embassy in the United States. 2009年7月15日時点のオリジナルよりアーカイブ。2016年11月23日閲覧。
  15. ^ 『パルミラの遺跡』 (1988)、52、54頁
  16. ^ Westall, Sylvia (2015年8月30日). “Islamic State destroys part of Syria's Temple of Bel – monitors”. Reuters UK. http://uk.reuters.com/article/2015/08/30/uk-mideast-crisis-syria-bel-idUKKCN0QZ0XO20150830 2016年11月19日閲覧。 
  17. ^ “Syria's Palmyra Temple of Bel 'severely damaged' by IS”. BBC News. (2015年8月31日). http://www.bbc.com/news/world-middle-east-34103994 2016年11月19日閲覧。 
  18. ^ “IS Partially Destroys Temple Of Bel – Reports”. Sky News (2015年8月30日). 2016年11月19日閲覧。
  19. ^ “Activists: ISIL damages ancient temple in Syria's Palmyra”. USA Today. Associated Press. (2015年8月30日). http://www.usatoday.com/story/news/world/2015/08/30/isil-damages-palmyra-temple/71428468/ 2016年11月19日閲覧。 
  20. ^ “Palmyra's Temple of Bel destroyed, says UN”. BBC News. (2015年9月1日). http://www.bbc.com/news/world-middle-east-34111092 2016年11月19日閲覧。 
  21. ^ “Satellite images show Palmyra temple destruction”. BBC News (2015年9月1日). 2016年11月19日閲覧。
  22. ^ Barnard, Anne; Saad, Hwaida (2015年8月31日). “Palmyra Temple Was Destroyed by ISIS, U.N. Confirms”. The New York Times. ISSN 0362-4331. http://www.nytimes.com/2015/09/01/world/middleeast/isis-militants-severely-damage-temple-of-baal-in-palmyra.html 2016年11月19日閲覧。 
  23. ^ Gayle, Damien (2015年12月28日). “Palmyra arch that survived Isis to be replicated in London and New York”. The Guardian. オリジナルの9 January 2016時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20160109093409/http://www.theguardian.com/world/2015/dec/28/palmyra-temple-bel-arch-survived-isis-syria-london-new-york 
  24. ^ “無残な世界遺産の姿…粉々の神殿、彫刻の顔は破壊された”. 朝日新聞DIGITAL (朝日新聞社). (2019年1月30日). https://www.asahi.com/articles/ASM1D3CDZM1DUHBI007.html 2019年1月31日閲覧。 

参考文献

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外部リンク

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座標: 北緯34度32分49秒 東経38度16分26秒 / 北緯34.54694度 東経38.27389度 / 34.54694; 38.27389

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