近江今津駅 (江若鉄道)
近江今津駅 | |
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駅跡に残っていた旧駅舎(2021年5月、解体済) | |
おおみいまづ ŌMIIMAZU | |
◄北饗庭 (2.5 km) | |
南はJR湖西線近江今津駅 | |
所在地 |
滋賀県高島郡今津町今津住吉 (現・高島市今津町住吉[1]) |
所属事業者 | 江若鉄道 |
所属路線 | 江若鉄道線 |
キロ程 | 51.0 km(浜大津起点) |
駅構造 | 地上駅 |
ホーム | 1面2線 |
開業年月日 | 1931年(昭和6年)1月1日 |
廃止年月日 | 1969年(昭和44年)11月1日 |
近江今津駅(おうみいまづえき)は、かつて滋賀県高島郡今津町今津住吉(現在の高島市今津町住吉[1])にあった江若鉄道の駅(廃駅)。同鉄道の終着駅であった。2024年3月現在取り壊されて更地になっている。
歴史
[編集]近江今津駅は1931年(昭和6年)1月1日、江若鉄道の安曇 - 近江今津間の開通に合わせて開業した[1]。江若鉄道の最初の開通区間である三井寺 - 叡山間の開通から10年ほどの年月が経過しており、今津町の住民は長らく期待していた鉄道の開通を地域を挙げて歓迎したことが当時の新聞などによって報じられている[2][3]。開通を祝して1月16日には町内の小学校で記念式典を開催、余興として花火の打ち上げや活動写真の上映が行われ、駅前はアーチや提灯で飾り立てられた[2][4]。
江若鉄道はその名の通り近江(滋賀県)と若狭(福井県)とを結ぶべく建設されてきた鉄道であり[5]、鉄道敷設の免許も今津町より先、福井県の三宅村(現在の三方上中郡若狭町)まで得ていた[6][7]。しかし沿線住民が負担に協力した建設資金が枯渇し、三宅村への延伸は断念[注釈 1]、結果として当駅が路線廃止まで終着駅であった[1][3][10]。鉄道で果たせなかった当駅から三宅村へ至る路線はのちに自動車路線が受け継ぎ、1937年(昭和12年)に省営自動車の若江線が開通している(現在も西日本ジェイアールバスの路線として存続)[11]。
町内に陸軍の饗庭野演習場(現在の陸上自衛隊饗庭野演習場)があったことから戦中は当駅から兵士が出征していくこともあり、その際には駅のホームや駅前の広場が見送りの場となった[4]。また戦前には演習場の一部が饗庭野スキー場として開放されており、鉄道を利用して訪れるスキー客もいた[12]。
江若鉄道は1969年(昭和44年)10月31日をもって営業を終了し[13]、当駅も翌11月1日に廃止された[14]。
年表
[編集]- 1930年(昭和5年)12月:駅舎が完成[1]。
- 1931年(昭和6年)
- 1936年(昭和11年)4月28日:江若鉄道、今津町から三宅村までの鉄道免許失効[16]。
- 1937年(昭和12年)12月21日:省営自動車若江線の若狭熊川 - 近江今津間が開通[17]。近江今津 - 小浜間がバスでつながる。
- 1969年(昭和44年)11月1日:駅廃止[14]。
駅構造
[編集]← 北饗庭 |
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凡例 出典:[18] |
近江今津駅は旅客と貨物の双方を取り扱う一般駅[19]。ホームは1面あり、両側に線路が接する島式ホームであった[20][21]。このほかにも貨物用のホームや機関庫[18]、多数の側線[20]や蒸気機関車の水の補給に使われた給水設備[22]などを有し、駅構内は広かった[10]。
駅舎は江若鉄道では珍しい三角屋根が乗る洋風のデザインで、先に開業していた大溝駅とともに目を引く存在であった[1]。駅舎の東側が入口、西側が改札口である[23]。
駅に設置されていた駅名標では、駅名が「おおみいまづ」と表記された[1]。
利用状況
[編集]開業から数年間の年間乗降客数・貨物取扱量の状況は以下の通り。地域住民はもとより町内にあった旧制今津中学校に通う生徒や陸軍の饗庭野演習場へ向かう軍人や兵士など、様々な人が駅を利用した[4]。
年間の旅客および貨物の取扱量 | |||||
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年 | 旅客 | 貨物 | 出典 | ||
乗車 | 降車 | 発送 | 到着 | ||
1931年 | 67,831人 | 69,343人 | 1,801トン | 1,719トン | [24] |
1934年 | 87,042人 | 89,574人 | 2,145トン | 2,653トン | [25] |
1935年 | 88,972人 | 88,111人 | 2,638トン | 2,599トン | [26] |
1936年 | 89,445人 | 91,204人 | 3,120トン | 2,996トン | [27] |
駅周辺
[編集]駅前からは小浜方面・マキノ町方面へ向かうバスが発着していた[2][10]。饗庭野演習場、およびその一部に開かれた饗庭野スキー場は徒歩圏内である[12]。
廃止後の状況
[編集]駅のあった場所は江若鉄道の廃線後に開業した湖西線の近江今津駅の西側にあたり[10]、Aコープ今津店になっている[28][29]。江若鉄道の駅の中で2010年代の時点で唯一駅舎が現存し[1][23]、駅舎は農協関連施設(JA旅行センター[28])に転用されたのちに温浴施設、スーパーの現場建築事務所とその用途を変え、2012年の時点では無人となっていた[30]。駅構内、ホームがあった場所は道路に変わった[23][30]。駅舎については所有者だったJA近江今津(現・JAレーク滋賀)が老朽化に伴って解体を決め、これを知った地元住民らが2019年から「駅舎の会」や「駅舎保存活用協議会」を結成して保存に向けた運動と交渉をおこなったが、2021年3月の協議会で売却条件などを巡って合意に至らず、解体が決定的になった[31]。最終的に2021年5月中旬に解体された[32]。
当駅付近の線路跡については、湖西線近江今津駅の南に広がる留置線付近で確認することができ、
隣の駅
[編集]- 江若鉄道
- 江若鉄道線
- 北饗庭駅 - 近江今津駅
脚注
[編集]注釈
[編集]出典
[編集]- ^ a b c d e f g h 江若鉄道の思い出, p. 116.
- ^ a b c ありし日の江若鉄道, p. 26.
- ^ a b レイル, p. 73.
- ^ a b c d 江若鉄道の思い出, p. 118.
- ^ レイル, p. 70.
- ^ レイル, p. 72.
- ^ 寺田 2010, p. 9.
- ^ 田中, 宇田 & 西藤 1998, p. 394.
- ^ 今津町史第3巻, p. 213.
- ^ a b c d レイル, p. 85.
- ^ 江若鉄道の思い出, p. 117.
- ^ a b 江若鉄道の思い出, p. 115.
- ^ 江若鉄道の思い出, p. 124.
- ^ a b c 今尾 2008, pp. 31–32.
- ^ 「地方鉄道運輸開始」『官報』1931年3月9日(国立国会図書館デジタル化資料)
- ^ 「鉄道免許失効」『官報』1936年4月28日(国立国会図書館デジタル化資料)
- ^ 「鉄道省告示第484号」『官報』1937年12月18日(国立国会図書館デジタル化資料)
- ^ a b 竹内 1967.
- ^ 寺田 2010, p. 10.
- ^ a b 寺田 2010, p. 15.
- ^ レイル, p. 81.
- ^ 江若鉄道の思い出, p. 65.
- ^ a b c 今津町史第3巻, p. 208.
- ^ 『滋賀県統計全書』昭和6年版(国立国会図書館デジタル化資料)
- ^ 『滋賀県統計全書』昭和9年版(国立国会図書館デジタル化資料)
- ^ 『滋賀県統計全書』昭和10年版(国立国会図書館デジタル化資料)
- ^ 『滋賀県統計全書』昭和11年版(国立国会図書館デジタル化資料)
- ^ a b c 吉田 1998, pp. 195–196.
- ^ 寺田 2010, p. 26.
- ^ a b レイル, p. 97.
- ^ “住民らがしのぶ会 解体予定の江若鉄近江今津駅舎”. 朝日新聞. (2021年5月4日) 2021年5月4日閲覧。
- ^ 江若鉄道近江今津駅保存活用協議会 [@kojaku_imazu] (2021年7月11日). "【皆さまへお知らせ】". X(旧Twitter)より2022年3月26日閲覧。
- ^ a b 今津町史第3巻, p. 209.
参考文献
[編集]- 今尾恵介(監修)『日本鉄道旅行地図帳』 9 関西2、新潮社、2008年。ISBN 978-4-10-790027-2。
- 今津町史編集委員会 編『今津町史』 第3巻(近代・現代)、今津町、2001年。全国書誌番号:20196684。
- 大津市歴史博物館 編『企画展 ありし日の江若鉄道 ―大津・湖西を結ぶ鉄路(みち)―』大津市歴史博物館、2006年。
- 大津市歴史博物館 編『江若鉄道の思い出 ありし日の沿線風景』サンライズ出版、2015年。ISBN 978-4-88325-554-2。
- 竹内龍三「私鉄車両めぐり(70) 江若鉄道」『鉄道ピクトリアル』第17巻第1号(通巻192号)、鉄道図書刊行会、1967年1月、70-77頁、ISSN 0040-4047。(再録:『私鉄車両めぐり 関西』鉄道図書刊行会〈鉄道ピクトリアル別冊 鉄道ピクトリアルアーカイブスセレクション 19〉、2010年、102-114頁。全国書誌番号:21848519。)
- 田中真人、宇田正、西藤二郎「第16章 琵琶湖の首飾り―江若鉄道・湖西線」『京都滋賀 鉄道の歴史』京都新聞社、1998年。ISBN 4-7638-0445-6。
- 寺田裕一『新 消えた轍 ―ローカル私鉄廃線跡探訪―』 8 近畿、ネコ・パブリッシング〈NEKO MOOK〉、2010年。ISBN 978-4-7770-1075-2。
- 吉田恭一『地形図で辿る廃線跡 古地図とともにいまはなき鉄道を歩く』心交社、1998年。ISBN 4-88302-345-1。
- 「江若鉄道 その車輛・列車・歴史・駅をめぐる」『レイル No.84』エリエイ/プレス・アイゼンバーン、2012年。ISBN 978-4-87112-484-3。
関連項目
[編集]外部リンク
[編集]- 江若鉄道近江今津駅舎保存活用協議会(旧:江若鉄道近江今津駅舎の会) (@kojaku_imazu) - X(旧Twitter)
- 江若鉄道近江今津駅舎保存活用協議会(旧:江若鉄道近江今津駅舎の会) (kojaku.imazu) - Facebook
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