SMイベントへ行くと、見かける黄色いひよこのマーク。
鞭が好きな方なら、一度は見たことがあるかもしれません。
イベント会場やショーの物販スペースで見かけるたびに、「あ、ぴしゃーる鞭だ」と思う方も多いのではないでしょうか。
今回お話を伺ったのは、そんな鞭職人のぴしゃーるさん。
にこにこと笑いながらビールを飲み、ときどき豪快に笑う姿が印象的です。
お話を聞いていると、鞭づくりだけではなく、縄の歴史や人との向き合い方まで飛び出してきました。
まずは、あのひよこのお話から聞いてみます。
ひよこがトレードマークになった理由
ぴしゃーるさんと言えばひよこのイメージが強いです。
ぴしゃーる鞭のひよこのキャラクターは、どうして生まれたんですか?
もともとSNSでひよこの絵文字を使っていたんですよ。
そしたら周りから「ぴしゃーるさんってひよこに似てるよね」って言われるようになって。
そこからひよこをキャラクターにしました。
ひよこは偶然生まれたキャラクター。
今ではすっかり、ぴしゃーる鞭の顔になっています。
Xを見ていると、よくネコと遊んでいますよね。
めちゃくちゃ癒されます。
ネコに限らず、動物全般好きなんです。
今仲良くしているのは、さくらねこですね。
(さくらねことは、不妊、去勢済みの地域猫のこと。耳をカットすることで、耳の形がさくらのようになっていることより、さくらねこと呼ばれている)
体調が明らかに悪いときは病院へ連れて行くこともありますけど、近づきすぎず離れすぎずな距離で付き合っています。
ネコって不思議なんですよ。
自分の死期が近づくといなくなったり、最後だけ会いに来てくれたりするんです。
そう話す表情からは、動物たちへの愛情が伝わってきます。
まずイベント出展を決めてから鞭を作る
▲超鞭祭「Black berry」
鞭づくりは、いつ頃から始めたんですか?
20年くらい前ですね。
最初は自分で使おうと思って作り始めました。
当時勤めていたバーが暇な時間に、コツコツ作っていたんです。
最初に作ったのはバラ鞭でしたね。
自分が使いやすいように改良を重ねていきました。
現在は鞭職人として知られるぴしゃーるさんですが、スタートはとてもシンプル。
「自分で使うため」でした。
しかし、ここからがぴしゃーるさんらしいところです。
それから、しばらく経ってショーイベントに出展したいなと思ったんですよ。
その時にはもう鞭は完成していたんですか?
いや、まだです(笑)
先にイベント出展を決めて、それから急いで鞭を作りました。
初めてのイベントはバタバタでした。
思いついたらまず動く。
そんなぴしゃーるさんらしいエピソードに、思わず笑ってしまいました。
ぴしゃーる鞭の名前の由来
ぴしゃーる鞭という名前は、どうやって付けたんですか?
諸説ありますけど、鞭で「ぴしっ」ってやるから「ぴしゃーる」が通説ですね。
僕が付けたんですけど(笑)
あとで気づいたんですが、フランスにフェルディナンド・ピシャールっていうバラがあるんですよ。
格式高い品種らしくて。
今では少し意識しています。
偶然とはいえ、バラ鞭から鞭を作った鞭職人さんらしいエピソードです。
使う人も受ける人も楽しめる鞭を
▲フェイバリット
鞭づくりへのこだわりはありますか?
まずは自分が使いやすいことですね。
もともと自分で使うために作り始めたので。
現在、ぴしゃーるさんが主に制作しているのは「フェイバリット」「メロディ」「コンダクター」の3種類です。
フェイバリットは、鞭が苦手な受け手さんでも楽しみやすい鞭です。
打つ側の満足感もしっかりあります。
衝撃はちゃんとあるんですけど、先端が太くなっているので跡が残りにくいんですよ。
SM系のお店で働いている方とか、跡が残ると困る方とか、鞭は苦手だけど楽しみたい方に使っていただいています。
▲フェイバリット
メロディとコンダクターは、クラッキングもできる一本鞭。
違いは長さです。
▲メロディフォルテ
▲コンダクタークラッキング
もっと長く使える方法はないかなって試行錯誤していました。
その結果たどり着いたのが、クラッカー付きの構造。
先端にクラッカーを付けたら、いい音が鳴ったんです。
鞭としてもかなり刺激的なものになりました。
注文から完成までは、およそ2か月。
現在、バラ鞭については現在完全受注生産となっています。
▲バラ鞭フレキシブル
バラ鞭にはバネを入れているんです。
スナップ力が高いのが特徴ですね。
女王様にも使っていただいています。
鞭を解体して覚えた時代
最初はどのように鞭づくりを覚えたんですか?
最初は既存の鞭を解体していました。
どういう仕組みになっているんだろうと思って。
中を見て、それを参考に作っていたんです。
ところが後になって、意外な事実が判明します。
実はその鞭、かなり特殊な構造だったんですよ。
だから制作にもものすごく手間がかかっていました。
知らないまま、それを基準に作っていたんです(笑)
遠回りにも思えますが、まずは自分で手を動かして理解する。
それもまた、ぴしゃーるさんらしいエピソードです。
その後、別の鞭職人さんと話す機会があったそうです。
「どうやって作ってるの?」って話になって。
その時に、鞭づくりの参考になる本を教えてもらったんですよ。
おお!そんなものがあったのかって(笑)
急いで買いました。
その本を読んでから、かなりスピーディに作れるようになりました。
でも僕、調べるより先に手を動かしたくなるタイプなんですよね。
そう言って笑うぴしゃーるさん。
考える前にまず動く。
お話を聞いていると、その行動力が何度も顔を出します。
可愛いのに凶悪なマジカル・ディシプリン
ぴしゃーる鞭の人気商品のひとつが「マジカル・ディシプリン」。
なわとび鞭として知られている一本です。
マジカル・ディシプリンは、どうやって生まれたんですか?
最初は単色で作っていたんですよ。
そこにお客様からリクエストをいただいて。
キャンディピンクとか、パステルピンクで編んでほしいって。
そこで試しに作ってみたところ、予想以上に可愛く仕上がりました。
ちょっと調子に乗って、じゃあリボンも付けてみようかなと思って。
そしたらすごく可愛くなったんです。
そこからカラーバリエーションを増やしていきました。
見た目は可愛い。
でも性能はしっかり本格派。
そのギャップが人気の理由でもあります。
可愛いんですけど、凶悪性は高いですよ(笑)
お客様からの要望は、できるだけ取り入れるようにしています。
お客様の声から生まれた鞭。
だからこそ、多くの人に愛されているのかもしれません。
九州に緊縛師が10人もいなかった時代
現在は各地で縄会や緊縛イベントが開催され、動画や書籍で学ぶこともできます。
しかし、ぴしゃーるさんが縄を始めた頃はまったく違いました。
縄はいつ頃から始められたんですか?
20年以上前ですね。
当時は縄教室もサロンもありませんでした。
もちろんYouTubeなんてないですし。
今とはまったく環境が違いました。
数をこなして、自分で覚えるしかなかったんですよ。
当時の緊縛は、限られた人しかできない技術でした。
縄を習うこと自体はできたそうですが、かなり高額。
今のように気軽に習いに行ける時代ではありませんでした。
技術を盗まれないように、受け手さんに身体をぴったり寄せて縛る人もいました。
どういう手順で縛っているか見せないようにしていたんです。
だから僕も試行錯誤しながら覚えました。
当時、九州で緊縛ができる人は10人もいなかったんじゃないですかね。
今では想像もつかないような時代。
ぴしゃーるさんは、そんな黎明期を知る貴重な存在でもあります。
会いたい人には会いに行く
ぴしゃーるさんのお話を聞いていると、ある共通点が見えてきます。
それは圧倒的な行動力です。
尊敬している方はいらっしゃいますか?
魁さんですね。
古賀丈士さんという名前でも活動されています。
僕、大好きなんですよ。
魁さんは緊縛師としてだけではなく、画廊経営やAV監督など、多彩な活動をされています。
毎回違う縄を見せてくれるんです。
本当に才能の塊だと思います。
話を聞いているだけで、その尊敬の深さが伝わってきます。
そしてやはり、ここでも行動力を発揮していました。
ものすごく会いたかったので、自分からコンタクトを取って東京まで会いに行きました。
すごいですね!
実際に会ったら、とても話しやすい紳士の方でした。
一緒にご飯も食べましたよ。
イベント出展を先に決める。
会いたい人には会いに行く。
思い立ったらまず動く。
ぴしゃーるさんという人を表す言葉は、やはり「行動力」なのかもしれません。
好きなことを認めてもらうなら、まず相手を認める
お仕事の都合で、一時期SM業界から離れていたというぴしゃーるさん。
その期間、なんと約20年。
そして再び戻ってきたきっかけも、やはり鞭でした。
長いブランクを経ても戻って来られるほど、好きな世界。
だからこそ、最後にNUKITIMESのテーマについて聞いてみました。
ぴしゃーるさんにとって快楽とはなんですか?
また、快楽を追求することについてどう思いますか?
快楽かあー。
みんな求めているものだから、おかしいことではないと思うんですよ。
でも、付き合っていること=快楽ではないと思うんです。
快楽って人によって違いますから。
好きなことを認めてもらいたいなら、まず相手のことも認めてあげること。
性癖も快楽も、相手ありきのものなんじゃないでしょうか。
うまくすり合わせたり、妥協したり。
そういうことが大事だと思います。
SMでも普通のことだと思うんですよ。
SM界でも一般社会でも、ちゃんとしている人は社会性があります。
それがないと相手は見つからないと思うんです。
さらに、こんな言葉も。
ショーとかイベントとかバーに、パートナーと一緒に来る人ってちゃんとしている気がするんですよ。
逆に、いつも一人でいて、ずっとパートナーがいない人は何か欠けている部分があるのかもしれない。
過激なことを言っている人ほど、一人な気もしますね。
もちろん性癖が尖っていること自体は自由。
ただ、その先に相手がいる以上、人との関わり方は避けて通れません。
性癖が尖っていても、一人では楽しめないことが多いですからね。
相手との距離感とか、妥協点を探らないと、一生一人かもしれない。
そして最後に、少し笑いながら続けます。
女の子にモテる人って、男女問わず誰とでも仲良くなれるんですよ。
多頭飼いができるSの人なんて、人間力がかなり高いんじゃないかな。
そして。
ちなみに僕の性癖は普通ですよ。
そう言って、にっこり。
なにが普通なのかは私には分かりません。
でも、その笑顔を見ていると、つい信じたくなってしまいました。
まとめ〜作っている鞭と人柄のギャップにびっくり〜
豪快に笑いながらも、ときどき核心を突く。
気づけば鞭の話だけではなく、人との向き合い方まで聞き入っていました。
好きなことを認めてもらいたいなら、まず相手を認めること。
その言葉は、SMだけではなく、人間関係全般に通じるものかもしれません。
ビールを片手に語ってくださったぴしゃーるさん。
気さくで、人懐っこくて、誰からも愛される理由が少し分かった気がしました。
そして次にイベント会場でひよこのマークを見かけたら、きっと以前とは違う目で鞭を眺めてしまうと思います。
ぴしゃーるさん公式SNS
活動内容、鞭のオーダー、イベント出展などは公式SNSを確認ください。
ぴしゃーるさん公式X:https://x.com/pichard_whip
ぴしゃーる鞭公式X:https://x.com/Pichard_1
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