ダンサー、モデル、緊縛師。
一見すると、それぞれまったく違う世界で活動しているように見えます。
私がSallyさんと初めてお会いしたのは、福岡で開催されている縄教室「一縄会」の取材でした。
以前ご紹介した一縄会の記事でも触れていますが、Sallyさんは福岡校の立ち上げにも携わったお一人です。
以前の取材記事はこちら:Hajime Kinokoが福岡に残したもの|一縄会福岡校・講師インタビュー
写真やステージで見せる姿は、とても美しく、どこか神々しい雰囲気があります。
だから、お会いするまでは少し緊張していました。
けれど、実際にお話をすると、その印象はすぐに変わります。
よく笑い、ときには冗談を交えながら場を和ませてくれる。
親しみやすく、それでいて「やってみたい」と思ったことには迷わず飛び込んでいく行動力もある。
そのギャップが、とても印象的でした。
Sallyさんの座右の銘は、
「境界を越えて、唯一無二を創る。」
その言葉の通り、ダンスも、モデルも、緊縛も。
どれもSallyさんにとっては、「表現すること」の延長線上にあります。
作品を創る前には、その背景にある文化や歴史を学ぶ。
一つひとつを深く理解し、自分だけの表現へと昇華していく。
今回は、そんなSallyさんにお話を伺いました。
表現者としての原点
「Sallyさんのご出身はどちらですか?」
博多です。博多生まれ、博多育ちです
ご実家は、博多人形の絵師。
幼い頃から日本舞踊を学び、和の文化に囲まれて育ちました。
縄にも、昔から興味があったんですか?
日本のものや和の文化が昔から好きだったので、縄も日本文化の一つとして自然と興味を持ったんだと思います。
実は、縄も含めてアンダーグラウンドな世界のことは全然知らなかったんです。
縄に惹かれた理由は、SMやアンダーグラウンドカルチャーではありませんでした。
幼い頃から親しんできた和の文化。その延長線上に、縄もあったそうです。
その後は日本舞踊だけでなく、ヒップホップやベリーダンスなど、さまざまなジャンルのダンスを経験。
ジャンルにとらわれず、表現の幅を広げていきます。
そして、Sallyさんがお話の中で何度も口にされていたのが、「理解すること」の大切さでした。
ダンスを踊る前も、撮影の前も、まず勉強します。作品にはどういう歴史があるのか。何を表現したいのか。そこを理解しないと、自分の中に落とし込めないんです。
作品によって調べるものも変わるそうです。
神話や歴史、美術、文化。
背景まで理解した上で、自分ならどう表現するのかを考える。
だからこそ、作品ごとに演じ方も変えているといいます。
そこまで勉強されるんですね。
理解できていないまま表現したくないんです。
その言葉を聞いて、Sallyさんの作品に一つひとつ違った世界観がある理由が、少しわかった気がしました。
また、お話を伺う中で初めて知ったこともありました。
ポールダンスの衣装についてです。
華やかな衣装や露出の多い服には、見た目だけではない理由がありました。
滑らないためなんです。スポーツのユニフォームみたいなものですね。
ポールをしっかりとグリップし、安全に技を決めるために必要な衣装。
華やかなステージの裏側には、競技としての確かな技術と理由がありました。
そんなSallyさんの活動が大きく動き始めたのは、コロナ禍でした。
ステージが次々と失われる中でチェアダンスと出会い、同時に知人のプロカメラマンとの作品撮りをきっかけに、モデルとしての活動も本格的に始まります。
モデルのお仕事は、どのように始まったんですか?
作品撮りをご一緒したコウタケダさんには、私から声をかけたんです。昔から、やってみたいことに対しては、あまり物怖じしない性格なんですよ。
待っていてはだめなので、自分から動きはじめます。
その一歩が、新しい表現の世界を広げていきました。
現在はダンサーとして国際大会のファイナリストに選出されるほか、モデルとしても国内外で高い評価を受けています。
さらに、ダンス・音楽・写真・アートなど、ジャンルを越えた表現者が集まる企画「UZUlabo」を主宰。
ライブペイントとダンス、生バンドとの共演など、既存の枠にとらわれない実験的な企画を続けています。
「うずうずしている人たちを集めたい。」
そんな想いから始まったUZUlaboは、ポールダンスを知らない人や、小さなお子さんから大人まで楽しめるステージづくりも大切にしているそうです。
縄は、人と人との信頼を形にする表現
縄を通して伝えたいことはありますか?
縄というと刺激的なイメージを持たれることもありますが、私にとっては『人と人との信頼関係を形にする表現』のひとつです。
縛る・縛られるという関係ではなく、お互いを尊重し、呼吸を合わせ、心を委ね合う時間。その中で生まれる感情や美しさを作品として表現したいと思っています。見る人によって受け取り方は自由ですが、『怖いもの』ではなく、『人間の感情を映すアート』として感じてもらえたら嬉しいです。
「人と人との信頼関係を形にする表現」。
その言葉の意味についてお話を伺うと、Sallyさんは一縄会主宰・Hajime Kinokoさんから教わったという、大切な考え方を話してくださいました。
Kinokoさんから教えていただいたことで、今も大切にしていることがあります。縄からシンパシーを感じる、ということです。緊縛をしている時は、常に縄を通して相手とつながっていないといけないんです。
決して独りよがりではだめなんです
一本の縄でつながるからこそ、相手の呼吸や感情を感じ取りながら向き合う。
その時間そのものが、Sallyさんの考える「信頼関係を形にする表現」につながっていました。
Sallyさんは、縄のどんなところに魅力を感じているのでしょうか?
私は、SとかMとか、そういう感覚で縛ってはいません。美しいと思うからやっています。
その答えは、とても印象的でした。
Sallyさんが縄を通して表現したいのは、刺激ではなく、美しさ。
だからこそ作品づくりでは、芸術性を何より大切にしているそうです。
Sallyさんにとって、美しさとは何でしょうか?
私は絵の具まみれでもいいし、金粉まみれでもいい。どんな姿になっても、美しいと思える作品を作りたいんです。誰が見てもきれいだと感じられるような、芸術としての美しさを表現したいですね。
美術館に飾られていても違和感がないくらいの芸術性は、いつも意識しています。
また、Sallyさん自身が作品のモデルになることもありますが、縄を使った表現では、自ら縄を掛ける「自縛」を基本としているそうです。
いわゆる緊縛モデルとして活動しているわけではなく、自ら縄を掛けながら、身体や感情を作品として表現しています。
また、一般の女性を縄で表現することも多く、女性も楽しめるアートとして、縄の美しさを届けています。
縄という表現を、もっと身近に感じてもらいたい。
そんな想いも、お話の端々から伝わってきました。
人との信頼関係を形にすること。
そして、人間の感情を映すアートとして、美しさを追求すること。
Sallyさんにとって縄は、誰かを縛るためのものではなく、人と人とのつながりを表現するための、大切な表現方法の一つでした。
神話を、自分だけの表現へ。「MIDAS」に込めた想い
Sallyさんが数多く手がけてきた作品の中でも、特に思い入れがあるというのが「MIDAS」です。
これまで手がけられた作品の中で、一番思い入れのある作品を教えてください。
一番思い入れがある作品は、ギリシャ神話の世界観を表現した『MIDAS』です。私が所属するダンススタジオでは、この写真作品をもとに舞台作品が創られました。
写真作品がダンスへと広がり、新たな表現へつながったことは、とても感慨深い経験でした。
写真として制作された作品が、やがて舞台作品へ。
写真という一瞬の表現から、時間と動きを伴うダンスへと、その世界観が広がっていきました。
『MIDAS』では、どのような世界観を表現されたのでしょうか?
ギリシャ神話に登場するミダス王がモチーフです。ミダス王は、触れたものすべてを黄金に変えられる力を手に入れます。
最初は幸せだったはずなのに、大切なものまで黄金になってしまうんです。たとえ死を決意したとしても、触れたものが金になってしまい、死ぬことも叶わない。
世界中が金になって、追い詰められて、狂っていくんです。
欲しかった力を手に入れたはずのミダス王。
けれど、その力によって大切なものを失い、逃げることも、人生を終わらせることもできなくなっていきます。
「MIDAS」では、黄金に囲まれた華やかな世界だけではなく、その奥にある苦しみや狂気まで表現されています。
写真から生まれた世界が、身体の動きや時間の流れを持つ舞台作品へと広がっていく。
Sallyさんにとって「MIDAS」は、異なる表現がつながり、新しい作品へと発展した、思い入れの深い作品となりました。
ダンサー、モデル、そして作品を生み出す表現者として。
「MIDAS」をはじめ、さまざまな作品を生み出してきたSallyさん。
その挑戦は、日本だけにとどまりません。
現在はダンサーとして海外の大会にも挑戦し、新たな表現を追い続けています。
現在は海外での活動にも力を入れられていますよね。
ダンサーとして国際大会にも挑戦しています。イタリアではBest8、11月にはギリシャで開催される大会にファイナリストとして出場予定です。
取材では、次回のギリシャ大会で披露予定の練習映像も見せていただきました。
チェアダンスと縄を掛け合わせた作品は、どちらか一方を主役にするのではなく、それぞれの魅力が自然と調和しています。
次のギリシャ大会では、縄を取り入れたチェアダンスを披露する予定です。
異なる表現を組み合わせながら、新しい世界観を生み出していく。
その姿は、「境界を越えて、唯一無二を創る。」という言葉そのものでした。
一方で、モデルとしても活動の幅を広げています。
写真作品は国内外のフォトコンテストで高く評価され、国際フォトコンテスト「International Photography Awards」では、2024年に入賞、2025年にはGoldを受賞するなど、数々の受賞歴があります。
こうした作品は、コンテストへの応募だけを目的に制作されたものではありません。
日頃からさまざまなカメラマンと時間をかけて作品づくりを重ね、その積み重ねの中から、応募作品が生まれていったそうです。
モデルとしてカメラの前に立つだけではなく、作品の世界観をともに作り上げる一員として表現に向き合う。
その姿勢も、Sallyさんのモデル活動を支えています。
現在主宰されている『UZUlabo』には、どのような想いがあるのでしょうか?
『何かを創りたい』って、うずうずしている人たちが集まれる場所にしたかったんです。ジャンルは関係ありません。ダンスでも、音楽でも、ライブペイントでも、それぞれの表現が重なった時に、一人では生み出せない作品が生まれると思っています。
その言葉どおり、UZUlaboではライブペイントとダンス、生バンドなど、多彩なジャンルの表現者が集まり、新しい作品が生まれています。
また、こんなお話も印象的でした。
ポールダンスやチェアダンスって、セクシーなイメージを持たれることが多いんです。でも、子どもから大人まで楽しめる作品もたくさんあります。
Sallyさんは、ポールダンスやチェアダンスの魅力は、それだけではないと話します。
固定観念にとらわれることなく、幅広い世代が楽しめる表現として、その魅力を届けていきたい。
そんな想いも、UZUlaboの活動には込められていました。
境界を越えて、唯一無二を創る。
以前の取材にて快楽についてお伺いしておりますが、追い求めて手に入れて満足されたものはありますか?
『満足して終わったもの』は、実はあまりありません。何かを手に入れることよりも、新しい景色を見たり、新しい表現に出会えたりする瞬間に一番心が動きます。
だから私にとっての快楽は、完成ではなく『挑戦し続けられること』。表現も人生も、その過程そのものを楽しみたいと思っています。
さらに、こんなお話もしてくださいました。
私は、極めないと嫌なんです。極めて、その向こう側の景色を見たい。
達成感を得て、ようやく『次は何をしようかな』って考えます。
日本舞踊、ヒップホップ、ベリーダンス、ポールダンス、チェアダンス。
モデル、縄、そしてUZUlabo。
一つを極めるたびに、新しい表現へ踏み出してきたSallyさん。
だから活動が一つに収まることはありません。
今後はどのような活動をしていきたいですか?
日本だけでなく海外でも活動の幅を広げ、言葉がなくても伝わる身体表現を追求していきたいです。また、UZUlaboを通してダンス、音楽、写真、アートなど異なるジャンルの表現者が出会い、新しい作品が生まれる場所をもっと増やしていきたいと思っています。
誰かの『やってみたい』という気持ちのきっかけになれるような存在であり続けたいです。
最後に、NUKITIMESの読者へメッセージをいただきました。
作品には、その瞬間の私自身がそのまま映っています。もし少しでも何か感じるものがあれば、ぜひInstagramものぞいてみてください。
これからも『境界を越えて、唯一無二を創る』という想いを大切に、自分らしい表現を続けていきます。
インタビューを通して感じたのは、Sallyさんは「境界」を越える人である前に、「挑戦をやめない人」なのだということでした。
一つを極め、その先の景色を見る。
そして、また新しい表現へ挑戦する。
その積み重ねが、Sallyさんだけの世界を生み出しています。
これから先、どんな景色を見せてくれるのか。
その挑戦を、これからも追いかけていきたいと思いました。
Sallyさん公式SNS
Sallyさん公式Instagram:https://www.instagram.com/sally_mod
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