私が初めて夢子さんとお会いしたのは、大阪で開催された「BlackBerry超鞭祭」でした。
一間庵・士郎さんのブースで、お手伝いをされていたのが夢子さんです。
そのときは少しご挨拶をした程度でしたが、その後も何度かイベントでお会いする機会がありました。
ステージで見せる夢子さんは、いつも印象的でした。
迷いなく鞭を振るい、相手を追い詰めていく姿。
その姿を見るたびに、「この人はどんなことを考えながらSMをしているんだろう」と思うようになり、今回インタビューのお時間をいただきました。
私、人間フェチなんですよ。
待ち合わせ場所へ向かうと、夢子さんは約束の時間より少し早く到着されていました。
「今日はよろしくお願いします。」
柔らかく笑って挨拶をしてくださる夢子さん。
お人形さんのように整った顔立ちに、可愛らしい笑顔。すらりとした手足は思わず見惚れてしまうほどです。
ショーで見せる凛とした表情とのギャップに驚いていると、その日着ていたピザポテトのTシャツを見せながら、「これ、好きなんです。」と笑います。
近くのお蕎麦屋さんへ入り、お互いに注文を済ませました。
料理を待っているとき、夢子さんがこんなことを話してくださいました。
私、人間フェチなんですよ。
この日のインタビューでは、この「人間」という言葉が何度も出てくることになります。
現在、夢子さんは女王様として勤務しながら、近県への出張や定期的なイベントを開催されています。
本格的に活動を始めたのは、昨年二月からです。
今の主な活動について教えていただけますか?
女王様として勤務しています。
近県だったら出張にも行っていますし、定期的にイベントも開催しています。
本格的に始めたのは昨年二月からですね。
夢子さんは、どんなプレイをされることが多いのでしょうか?
私はハードですね。
SMにもいろいろな種類がありますけど、暴力特化型だと思っています。
だから、一人のお客様が来られるのは三か月に一回くらいなんです。
三分の一くらいの方は、もともとそういうプレイが好きな方。
残りの三分の二くらいは、段階を踏みながらステップアップしてくださいます。
夢子さんご自身は、どんなプレイがお好きなんですか?
加虐ですね。
仕事上わかりやすいので『女王様』と名乗っていますけど、私には女王様気質はないんです。
主従関係とか、支配関係を求めているわけではありません。
加虐と被虐っていう、同じ趣味を持った友達と遊ぶ感覚なんですよ。
対等な関係で、暴力を振るう、振るわれる。
そういう関係が好きなんです。
プレイが終われば普通に喋りますし、ご飯にも行きます。
私はマゾたちとも対等でありたいんです。
どっちが引っ張る、へりくだるという関係は好きじゃないんです。
奴隷やペット、道具では決してありません。
人間と遊びたい。
私を女王様として見るんじゃなくて、私そのものを見てほしい。
人間と人間であることが大切なんです。これは、マゾたちにもよく言っています。
被虐癖があるマゾが、プレイが終わったあと楽しそうに話しかけてきたり。
それでいいんですね。
スイッチのオンとオフがしっかりある人が、私の周りには多いですね。
逆に、それができないと成り立たないんです。
理性を失ってしまうと動物だから。
私は、ただひたすらに人間フェチなんですよ。
少し言葉を選びながら、夢子さんは続けました。
でも、本当は普通でいたかったんです。
そう話した夢子さんは、ご自身の幼少期について聞かせてくださいました。
私の家庭環境は、決していいとは言えませんでした。DV家庭。
小学校三年生のとき、夜、お手洗いへ行こうとしていたら、両親の営みを見てしまったんです。
首を絞められて、殴られながらSEXをしていました。
最初は、お母さんが可哀想だと思ったんです。
ですが、そのあと目にした光景が忘れられなかったといいます。
でも、お母さんは悦びの表情だったんです。
『これも愛の形なんだ。』
そのとき、そう思ってしまいました。
あの出来事だけが理由ではありません。
でも、自分が抱えている加虐性って、こういうものなのかもしれないって、今思えば腑に落ちる部分があります。
当時は、自分の加虐性に罪悪感がありました。
普通でいたかったんです。
時が経ち、中学生になった頃、一人の恋人と出会います。
その子は、M気質のあるメンヘラの子でした。
初めて、その子と加虐や被虐みたいな話をしたんです。」
恋人にはリストカットをする癖がありました。
その子がリストカットをしていたので、代わりに私が腕を切ってあげたことがありました。血が、ふわーっと流れて。
今思えば、SMもどきみたいなことをしていました。
そのとき、なぜだかわからないんですけど、精神的に救われたんです。
もちろん、罪悪感はありました。
でも、そこから少しずつ、この世界へ足を踏み入れて、どんどん興味を持つようになりました。
その後、さまざまな人と出会う中で、「S」と呼ばれる人にもいろいろな考え方があることを知っていったそうです。
女王様もそうですし、ドミナントもそうですけど、Sにもいろいろな人がいます。
教祖みたいになりたい人。
王様みたいになりたい人。
たくさんのマゾを引き連れたい人。
私は、そういうタイプではないんです。
夢子さんは、どんな関係を理想としているのでしょうか?
私は、相手と共犯者になりたい。
そう話したあと、夢子さんは言葉を続けました。
SMって、異常だと思っているんです。
だから、自分の異常性と、相手の異常性を共犯する関係。
そういう関係でいたいんです。
私じゃなくて、女王様を見られていた
夢子さんは、お顔をほとんど出して活動されていませんよね。
最初は少しだけ顔を出していたんですよ。
女王様として働き始めた最初の頃は、今よりも顔が見える形で活動していたそうです。
変な話なんですけど、顔で指名する方がいたんです。
もちろん、それが悪いとは思っていません。
でも、私の本当の性癖を見てくれることもなく、言葉にできないギャップを感じました
それからは、私のプレイや中身を見てほしいという思いが強くなって、顔を出すのをやめました。
私を女王様として見るんじゃなくて、私そのものを見てほしいんです。
その言葉を聞いて、取材の日のことを思い返します。
約束の時間より少し早く待ち合わせ場所へ来ていたこと。
ピザポテトのTシャツを着て笑っていたこと。
ステージでは見ることのできない、自然体の夢子さんがそこにいました。
今後は、どのような活動をしていきたいと考えていますか?
ショーを始めたのは、今年に入ってからなんです。
だから、ショーはまだひよっこのひよっこです。
自分なりのSMを形にできたらと思っています。
何の性癖を言っても、否定されない場所を作りたいんです。
普通の生活の中ではもちろん言えません。
でも、SMバーで自分のことを話しても、受け入れてもらえないことがありました。
普通の生活の中で言えないことが、SMの界隈でも言えない。
それが、すごく寂しくて辛かったんです。
犯罪性さえなければ、異常性癖でも否定されない場所があれば。
私みたいな人も、ほっとできると思うんです。
Sって、意外とメンヘラな人も多いんですよ。
頭のネジが飛んでいないと、SMをしようなんて思わないですし。
寂しがり屋さんも多いです。
Sっていう肩書が、見栄を張らせてくれることもある。
でも、本当は誰かに話したいこともあると思うんです。
だから、そういう場所を私が作れたらいいなって思っています。
『夢子』というお名前には、何か由来があるのでしょうか?
『賭ケグルイ』という作品からいただきました。
主人公の夢子の、ギャンブルに対するひたむきさや、まっすぐさが素敵だなと思って。
SMって、一種の夢だと思っているんです。
私にとっても夢だし、マゾたちにとっても夢。
夢を見られる場所がSMなんです。
意外と言われる趣味はありますか?
すごいインドアです。
読書がすごく好きなんですよ。
読んだあとに、重く鬱な気分になる小説が好きです。
櫛木理宇さんの作品は必ず読みます。
読み終わったあとの余韻というか。
『はあ……。』って沈み込む時間が好きなんです。
人間としていきること
最後に、NUKITIMESで皆さんへお聞きしている質問をしました。
夢子さんにとって、快楽とは何でしょうか?
夢子さんは少し考えてから、答えてくださいました。
生きることです。
人間として生きること。
快楽に対する興味は、本能だと思うんです。
快楽を与えることも、与えられることも、人間としての証。
私は、人間フェチだからこそ、強く生きていると感じます。
インタビューの冒頭で、夢子さんはこう話していました。
「私、人間フェチなんですよ。」
最初は、その言葉の意味がわかりませんでした。
ですが、お話を伺ううちに、その言葉は少しずつ違って聞こえるようになりました。
夢子さんが何度も口にしていた「人間」という言葉。
そこには、対等な関係でありたいという思いも、自分の異常性も相手の異常性も受け入れたうえで向き合いたいという思いも込められていました。
人間を愛し、人間を傷つける。
一見すると相反するようにも思える二つの言葉ですが、夢子さんにとっては、どちらも「人間を知りたい」という思いにつながっています。
取材の最初に聞いた「人間フェチ」という言葉が、帰る頃には少し違って聞こえていました。
蛇ノ目 夢子公式SNS
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