福岡・親不孝通りにあるフェティッシュバー「Bar エルドラド」。
2026年、Bar エルドラドは新たな歩みを始めました。
その新オーナーが、33年前に縄と出会い、それ以来、緊縛師として活動を続けてきた武田亨龍さん。
イベントで何度かお見かけしたことはありましたが、こうしてゆっくりお話を伺うのは今回が初めてでした。
どこか寡黙で、クールな方。
そんな印象を持っていたのですが、お話を伺ううちに、そのイメージは少しずつ変わっていきます。
穏やかな口調で、一つひとつの言葉を丁寧に選びながら話す亨龍さん。
優しくあたたかい人柄に触れられたことが、今回の取材で特に印象に残りました。
取材中、亨龍さんが何度も口にされていた言葉があります。
「信頼」
緊縛のお話をしていても。
エルドラドのお話をしていても。
その言葉は、ごく自然に何度も出てきました。
今回お話を伺ったのは、緊縛師としての歩みだけではありません。
エルドラドという居場所を受け継いだ、一人の人間の物語です。
「この場所をなくしたくなかった」
エルドラドのオーナーになられたきっかけを教えてください。
前オーナーの安奈さんとは、昔からの友人なんです。
エルドラドはバーですが、ただお酒を飲むだけの場所じゃありません。
みんなにとって、帰って来られる居場所なんです。
もちろん、お客様にとってもそうですが、スタッフにとっても居場所なんですよ。
もしこの場所がなくなってしまったら、お客様だけじゃなく、スタッフの居場所までなくなってしまう。
少し言葉を選ぶように間を置いてから、亨龍さんは続けます。
安奈さんが長年、大切に育み、守り続けてきた場所なんです。
それがなくなるのが辛かった。
だったら、自分がやってみよう。
その一言が、エルドラドを受け継ぐ決断につながりました。
今までは緊縛師をやりながら、サラリーマンをしていました。
お店をやるなんて初めてです。
もちろん、不安はありました。
でも、お店がなくなるのはもったいない。
嫌だったんです。
不安よりも、守りたい気持ちの方が強かったですね。
オーナーになって約1か月。
『亨龍さんが続けてくれてよかった。』と言ってくださるお客様もいて。
お客様の笑顔を見ていると、『この選択は間違っていなかったな』と思います。
「緊縛は、一人ではできません」
緊縛を始められたきっかけを教えてください。
緊縛を始めたのは33年前です。
縄という文化に触れて、興味を持ちました。最初は我流でした。
ショーやイベントへ足を運び、いろいろな緊縛師さんを見る機会があったんです。
その中で、この人だったら腕の一本、二本をくれてやるっていう受け手さんがいる緊縛師さんをたくさん見ました。
もちろん、本当に腕をどうこうという話ではありません。
それくらい信頼されているということなんです。
そこまで築かれた信頼関係に、本当に心を動かされました。
縛るだけじゃないんです。
受け手さんがいるからこそできる。
相手を尊重すること。
緊縛って、そういうことなんだと気付きました。
一人ではできません。
受け手さんがいて初めて成り立つ世界なんです。
その経験が、「もっときちんと学びたい」という気持ちにつながったそうです。
それで、緊縛という文化をちゃんと学ぼうと思って、師匠の門を叩きました。
師匠から名前を受け継ぎ、現在は「武田亨龍」として活動されています。
「歴」よりも、「場数」だと思っています
33年間活動されているのはすごいですね!
よく『緊縛歴は何年ですか?』と聞かれることがあります。
少し笑いながら、こう続けます。
もちろん、歴も大切です。
でも、それ以上に大切なのは、どれだけ場数を踏んできたかだと思っています。
そして、こんな例え話をしてくださいました。
パイロットも同じです。
いつパイロットになったかより、どれだけ飛行時間を積み重ねてきたかで技術を判断するじゃないですか。
緊縛も、それに近い世界だと思っています。
33年という年月だけではなく、その間に積み重ねてきた経験。
一つひとつの現場や受け手との時間が、今の亨龍さんを形づくってきたのだと感じました。
「もう一度、『信頼』を見つめ直してほしい」
ここ数年で、緊縛に興味を持つ方も増えている印象があります。
何度目かの縄ブームが来ていると思います。
YouTubeや縄会などの広がりもあって、緊縛ができる人口は以前より増えているんじゃないでしょうか。
緊縛に興味を持つ人が増え、学べる環境も広がっています。
その一方で、亨龍さんが大切にしてほしいと話すことがありました。
だからこそ、自分がひとりよがりになっていないか、一度見つめ直してほしいんです。
緊縛は、一人ではできません。
相手がいて、初めて成り立つものです。
原点に戻って、もう一度『信頼』について考えてみる。
そうすると、その人にとって、新しい緊縛の世界が広がるかもしれません。
「だから、気軽に聞きに来てほしい」
これから、エルドラドをどんな場所にしていきたいと考えていますか。
同じ縄の道を歩んでいる方も、ぜひ気軽に来てほしいですね。
私は場数は踏んできています。
だから、先輩としていろいろ聞いてもらえたら嬉しいです。
技術だけではなく、これまで経験してきたことも含めて、気軽に話せる場所にしたい。
そんな思いが伝わってきました。
エルドラドらしさがあるから、みんなが帰って来てくれる。
その空気は、これからも大切にしていきたいですね。
新しいエルドラドとして迎える「フェチ天」
今後、楽しみにされていることはありますか。
毎年開催している『フェチ天』ですね。
2027年2月21日に開催予定です。
これまで亨龍さんは、緊縛ブースで緊縛師として参加されてきました。
今回は、新しい立場で当日を迎えます。
今回は、運営スタッフとして参加します。
新しいエルドラドのメンバーで迎える、初めてのフェチ天です。
みんなで作り上げるフェチ天になると思います。
ステージには魔物がいますからね。
当日、何が起こるかは分かりません。
来年のフェチ天は、亨龍さんにとっても新しい挑戦になりそうです。
「自分が自分のままでいられる時間」
亨龍さんにとって、「快楽」とは何でしょうか。
私にとって快楽とは、自分が自分のままでいられる時間です。
少し考えてから、言葉を続けます。
今は、エルドラドに来てくださるお客様が、また帰って来てくれること。
一緒に会話ができることが快楽ですね。
緊縛師として感じる快楽についても教えてくださいました。
ひと縛りしたあとの時間です。
イベントでは、お客様や受け手さんと同じ空間で時間を過ごします。
それが終わったとき、『楽しんで帰ってもらえたな』という満足感があります。
相手を尊重して、自分も満足できる。
二人とも笑顔で終われる。
その時間、その空間が好きなんです。
取材の最初から何度も耳にしてきた「信頼」という言葉。
その意味が、この答えにすべて込められているように感じました。
「実は、人見知りなんです」
取材の終盤、少し意外なお話も聞かせてくださいました。
実は、私自身すごく人見知りなんです。
思わず驚いてしまいました。
イベントでは何度かお見かけしていましたが、クールで無口な方という印象が強かったからです。
人の名前を覚えることがあまり得意ではなく、同じ方に何度か名前を聞いてしまうこともあるそうです。
だからこそ、失礼がないようにと、人との接し方にはいつも気を配っているのだとか。
だからこそ、今回ゆっくりお話を伺い、優しくあたたかい一面に触れられたことが、とても嬉しく感じました。
お酒が入ると、よくしゃべるんですよ。
そう言って笑います。
実際、この日も取材が始まる前に「人見知りを解放するため」と笑いながらジンを飲まれていました。
取材が終わる頃には、お客様と一緒にテキーラやビールを楽しむ姿も。
お酒が大好きなのがみていても伝わります。
バーのオーナーらしく、お酒は「これが一番好き」というより、お客様に合わせて一緒に飲むことが多いそうです。
どのお酒も好きですよ。
カクテルも今勉強中なんです。
リクエストをいただけたら、一生懸命作ります。
取材が始まった頃の少し緊張した空気は、いつの間にかすっかりなくなっていました。
助け合える場所でありたい
最後に、これからのエルドラドについて伺いました。
これからも助け合いながら、エルドラドを続けていきたいです。
私も、お客様とお話しする中で助けていただいています。
だから、私も誰かを助けたい。
そんなエルドラドを作っていきたいと思っています。
相手を尊重すること。
相手を信じること。
そして、お互いに支え合うこと。
武田亨龍さんが受け継いだのは、お店の名前だけではありません。
そこに集う人たちの時間と、「また帰って来たい」と思える居場所でした。
武田亨龍さんSNS
武田亨龍さん公式X:https://x.com/takedakouryu
武田亨龍さんがオーナーを務めるBar エルドラド公式X:https://x.com/dorado_bar
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