【A】
なしのつぶて なしのつぶて
あなたをまつ あばら小屋
まちは荒れ だれも逃げ
それでもまつ 九月蚊帳
【B】
一念に身をけずり だまされ屋
嘘はつかぬと云ったから
まだ来ないまだ来ない 如何にぞや
家は焼けた
【S】
荒れ野にまつ女ひとり
帰る処をこしらえて
土も灰も蕩かせない
声だけでも 逢いにきて
【A】
通りゃんせ 通りゃんせ
草をかきわけ こわがり屋
思いだせ 思いだせ
女はまつ ありがたや
【B】
だきしめてひきずって 心ばや
やっと繋がれ 泣いたのは
つのるつのる思い 一昼夜
果たす わたし
【S】
荒れ野にまつ女ひとり
男のうでにいだかれて
いくさも火も奪えない
このときをきっとまっていた
(身のうさは人しも告じあふ坂の夕づけ鳥よ秋も暮ぬと)
(さりともと思う心にはかられて世にもけふまで生ける命か)
【S】
荒れ野の夜はあけて
家は消えていた 草枕
すべては儚い まぼろし
だけど
女はまっていた ずっと
帰る処をこしらえて
土も灰も蕩かせない
残る思い されこうべ
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