【科学】人々の好奇心を育てる“海部流”プロジェクト 「ガリレオ望遠鏡の普及」と「3万年前の航海再現」

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アマチュア天文家をサポート

 もともとこのプロジェクトは、元国立天文台長の海部宣男さんがIAUの会長就任(2012~2015年)に先立つ2008年に「一台10ドルでガリレオが使ったような小型望遠鏡を普及させよう」と縣さんに開発を指示したのが始まりだった。海部さんは「子どもたちに天体望遠鏡を届ける会」の代表に、縣さんは副会長に就任して、開発と普及に向けてアマチュア天文家や教育関係者などをつなぐ活動を進めてきた。

 今年4月11~12日、IAU創立ゆかりの場所、ベルギー・ブリュッセルのアカデミー宮殿で、IAU100年記念式典が開催され、日本から渡部潤一IAU副会長(国立天文台副台長)や縣さんらが参加した。会場のホールには国立天文台の開発したこの望遠鏡キットも展示、お披露目された。がんを患っていた海部さんは欠席し、ビデオ映像でスクリーンに登壇したが、翌13日、IAUとアマチュア天文家との交流イベントがあったその日に、息を引き取ったとの悲報が現地に伝わった。75歳だった。

 「国立天文台三鷹本部の6mミリ波望遠鏡をはじめ、国立天文台・野辺山宇宙電波観測所(長野県南牧村)の45m望遠鏡、ハワイのすばる望遠鏡をそれぞれ建設した中心人物で、チリのALMA計画の承認などにも力を尽くし、世界中の天文学者から信頼され愛された人物でした。天文学のアウトリーチや教育にも力を注ぎ、世界中のアマチュア天文家をサポートし鼓舞してきた方でした」と哀悼する縣さん。

 最初の望遠鏡は「10ドル」ではできなかったが、さらに量産できればそれに近づくことはできると縣さんは確信する。IAUは、海部さんの遺志を継いで、途上国の学校にこの天体望遠鏡を無償配布する事業を急きょ進めることを決め、1200台に続く2回目の製造に向けて資金集めを続けている。

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