【科学】人々の好奇心を育てる“海部流”プロジェクト 「ガリレオ望遠鏡の普及」と「3万年前の航海再現」

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人類起源の謎追う 親譲りのリーダーシップ

 話変わって、7月18日、国立科学博物館は東京・内幸町の日本記者クラブで「3万年前の航海 徹底再現プロジェクト」の成果を発表した。日本人の祖先がどのように南の海を渡って日本列島に住むようになったのか、その謎を解くために、台湾から日本の最西端の与那国島に丸木舟をこいで渡った検証実験の「成功」報告である。

 梅雨の晴れ間を見て、男女5人が黒潮を越えて45時間10分をかけて7月9日に到着した航海だった。現代の気象予報やナビゲーションの技術、動力機関や帆も登場していない3万8000年前ごろの後期旧石器時代に、祖先たちはどういう方法で挑戦したか。メディアでも注目されているプロジェクトだが、その謎が完全に解けたわけではない。

 これも国立の博物館として初のクラウドファンディングで2回の応援を求め、6000万円近くの資金を獲得した。賛同者を巻き込む努力は並みでない。人類史研究者とカヤックのこぎ手の探検家との共同。草舟、竹舟での失敗や石斧(せきふ)での丸木舟づくりの挑戦を含め、研究のプロセスを積極的に公開する。そして、体験によって初めて理解でき、謎を解明していく方法を一般の人と共有する「オープンサイエンス」に共感者を増やしたのだろう。

 このプロジェクトのリーダーは人類進化学者の海部陽介さん(50歳)。亡くなった海部宣男さんの長男である。親子は分野も異なる独立した研究者であるが、二つのプロジェクトとも宇宙や人類の起源など、科学を支える根源的な好奇心に基づく国際プロジェクトであり、一般の人々にその意義を伝え、理解を得ることに積極的である点は共通している。「親子とも、基礎科学についてロマンを持ってアプローチし、社会に目を向けて、社会とともに歩む。社会に対して旗を掲げていく研究者のリーダーです」。こう語る国立天文台の縣さんの見解に、筆者もまったく同感する。“海部流”が日本の科学研究プロジェクトの潮流になってほしいと願う。

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【佐藤 年緒(さとう・としお)】環境・科学ジャーナリスト 時事通信編集委員、科学技術振興機構(JST)の科学教育誌『Science Window』編集長などを歴任。環境、水、災害、科学コミュニケーションなどをカバーする。日本科学技術ジャーナリスト会議会長。著書は『つながるいのち-生物多様性からのメッセージ』、『科学を伝える-失敗に学ぶ科学ジャーナリズム』(いずれも共著)など。

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