途上国の貧困削減などの目標を定めた国連ミレニアム開発目標(MDGs)は、2015年までに妊産婦死亡率を1990年比で4分の3削減するよう求めている。しかし、世界保健機関(WHO)などが今年9月に発表した報告書によると、ザンビアの妊産婦死亡率は出生10万件あたり470人で、日本(6人)の約80倍。90年の390人から逆に19%増加した。保健当局に報告されない事例も多く、実際の死亡率はさらに高いと見られている。
妊産婦死亡率の改善が難しいのは、妊産婦と医療ケアの間に埋めがたい「距離」があるためだ。そこには、交通手段の欠如や医療従事者の不足に加え、女性の地位の低さや地域の風習など社会・経済・文化的な要因が横たわる。ザンビアの農村部では、妊産婦の72%が医師や助産師の介助を受けずに自宅などで出産。このため、母体に異変が起きても治療を受けられず、多くの妊産婦が感染症や出血多量で命を落としている。
診療所に行けない過疎地の女性の多くは、医療資格を持たない村の「産婆さん」(伝統的助産師)に頼ってきた。しかし、近年は多くのアフリカ諸国がWHOの指導に基づき、医療施設での出産を奨励するため、伝統的助産師による出産介助を禁じている。これに伴い、かつて伝統的助産師を対象に行われていた安全で衛生的な出産介助のための訓練もストップしてしまった。
しかし、「出産間際に呼ばれたら、介助せざるを得ない」とある伝統的助産師は漏らす。陣痛の始まった妊産婦を診療所に連れて行く道中、赤ちゃんが産まれてしまうこともある。カルウェオ診療所の助産師ルプルウェさんも「今でも出産の大半は伝統的助産師によって介助されている」とあきらめ顔だ。訓練を受けた伝統的助産師が減りつつある中、過疎地域の女性のお産をめぐる状況が一層悪化することも懸念されている。
特集・新着
旬のトピックス