マーケターが主導するAIの組織利用
2024年、生成AIの進化は加速の一途を辿っています。個人として使うことはもはや当たり前。しかし本当の意味で、大きな進化メリットを得るためには「組織レベルでの生成AI活用」が鍵になることは間違いありません。
この進化を先導するのは、他ならぬマーケターではないかという仮説と確信があり、当社では実際にマーケティング部門を主軸に生成AIの組織的な活用を進めています。
なぜマーケターがAI組織導入の先導者になれるのか? その理由としては、最前線でAIを駆使する存在であること、その力を肌で感じ取っていること、そして顧客インサイトの分析やコンテンツ作成、プロモーションの最適化など、AIは既にマーケティングオペレーションの一部となりつつある(またはポテンシャルがある)ことが挙げられます。さらには、組織浸透における戦略策定を担える可能性を持ち、また顧客に提供する価値創造(商品・サービス創出)においても、その役割を発揮できる可能性があると考えるからです。
一方で、「生成AIを組織利用する」ことについては、企業や組織はどの程度取り組めているでしょうか?取り組めているとしたら、それは本質的な組織利用になっているでしょうか?
この連載では、「マーケター主導で進める生成AIの組織利用」という仮説をテーマに、生成AIの組織利用がもたらす圧倒的なメリットと、マーケターがどのようにしてこの変革を主導できるかを、具体的な事例とともに紹介していきたいと思います。
第1回となる今回は、「組織利用するメリット」について、具体的な事例を交えながら解説していきます。2回以降は下記の内容で進めていきます。
第2回「組織利用の課題と解決の鍵」
第3回「利用促進のための戦略と実践例」
第4回「実際の生成AI活用例 - マーケティング業務全般への応用」
それでは早速始めていきましょう。
生成AIの組織利用 個の進化からチーム進化へ
まず、生成AIの組織活用を「生成AI活用計画を組織として遂行している状態」と定義したいと思います。組織にたまたま生成AIを使っている人がいる状態ではなく、明確な目的や計画を持って、組織として利用している状態を指します。
一度想像してみてください。あるオフィスの中で、あなた1人が生成AIを使いこなしている状況と、チーム全員が生成AI活用に取り組んでいる状況を。前者は周囲に話が合う人がおらず、魅力を語っても賛同が得られず、孤独な戦いになります。後者は、何より生成AIを活用することが賛同されている状態で、また圧倒的な知の集積量になっていきます。
下記の図の通り、生成AIを個人だけで使っている場合、1個人のスキルが高い状態で、周りとのギャップが生じている状態です。一方で、組織として利用している状態は、相互に教え合い、知見を高め合い、業務の流れ自体に組み込み、組織全体の知見が高まっていく環境が形成されます。
ここかからは組織でAIを利用する具体的な事例とともに3つのメリットを整理したいと思います。
メリット1:社内データの最大活用
個人利用と組織利用の大きな違いは、プライベートで持っているデータの量と組織で活用可能なデータの量が大きく異なることです。また、組織の中でたまたま生成AIを業務使いしているだけの状態では、セキュリティの問題から会社データを生成AIにいれて活用するにはハードルが生じます。社内データを分析したり、整理したり、加工・生成したりすることから得られるメリットは非常に大きいと言えます。
当社では組織利用の生成AI環境を用意することで、AIに会社データや調査データ等を入れ込んで問題無い環境を構築しました。
事例①「顧客の声」分析、アウトプットまでの時間を8時間から5分に
従来、顧客の声をテキスト化したデータの定性分析には、分析能力を持った社員が整理・分析・発見・まとめを行っていました。業務に8時間程度かかっていたものが、AI活用後は5分で同等以上の分析が可能になっています。
また、データ全体を複数のグループに分類して、グループごとの名称をつけたり、グループごとの生声を抽出したりと、定性データを自由に後から集計することができました。
事例②施策の予実データから報告コメントを半自動で生成
スプレッドシート上で常に更新されるマーケティング施策の結果データを基に、報告用のサマリーコメントへ生成し、ファクトの整理と課題候補抽出を自動で実施しています。従来は30分程度かかっていた作業を1分ほどの自動作業と10分ほどの思考時間に短縮しました。雑務の時間を削減し、思考の入り口を創ることで考える効率も向上しています。