42歳母たちの「保活」

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高齢は入園に不利?

 結局、最終的に何が大きな要素になったかといえば、「収入」ではないかと思う。同市は、指数、順位ともにまったく同じ場合、「前年度市民税所得割額の低い世帯から選考する」と選考基準に明記している。すなわち、条件が同じなら、収入が少ない家庭を優先するということだ。

 保育園は、あくまでも福祉施設。まずは、生活に窮している人から入園させるというのは道理である。しかし、高齢出産した立場で、少しだけ意見を言わせてもらえるなら、これは高年齢者に不利なシステムだ。実際の収入がどの程度であるかは別とし、20代、30代、40代の平均年収を比べれば、やはり40代が一番高くなるだろう。

 確かに、20代の若いカップルより、われわれのように40代まで子どもを持たずにきた家庭の方が、現時点では経済的に余裕があるかもしれない。しかし、この先、長くは働けないのだ。もしかすると、年金生活者として、息子の学費を支払わなければならないかもしれない。

 出産の高年齢化の背景には、いろいろな事情がある。長く不妊に悩み、40歳を超えてやっと子どもを授かった人も少なくないだろう。一方で、高齢出産につきまとうのは、将来への大きな不安だ。会社でいつまで働けるか分からない。その上、現在は、さらなる年金支給開始年齢の引き上げも議論されている。子どもが育ち盛りの時期に、無収入という事態も十分にあり得るのだ。働けるときに、働いておきたいという切実さがある。

 こうして、しばらく「不承諾」を嘆いていたのだが、筆者の「保活」は、意外な結末を迎えた。3月下旬の三次選考で、第一希望の認可園への入園を承諾されたのだ。

 同市では、一次選考の後、転勤などの理由で入園辞退があった園に限り、2月下旬に二次選考、3月下旬に三次選考をそれぞれ実施するとしていた。ほぼ期待はしていなかったが、手続きが間に合わず記載できていなかった「父・単身赴任」の一節を書き加え、一次選考後、申込書を再提出。同市の場合、父か母が単身赴任だと「4点」という極めて高い加点が付く。そこに、第一希望の園で1人欠員が出て、点数の高い筆者が当選したという次第だ。第一希望の0歳児枠はたった5人で、市全体でも、三次選考での入園はごくわずかだったというから、運がよかったという以外にない。

 そして職場復帰した2014年6月。どうしても、選考基準に対する疑問が気になり、同市役所に取材に行った。

 高齢出産が選考基準上、不利なのではないかという質問に対し、住谷安夫保育課長は、「おっしゃっている一面はあろうかと思う」と認めた。しかし、住谷課長らも、悩んでいるのだ。選考基準は、透明性の高いものでなくてはならないため、収入という人の主観に左右されない数字を採用した。そしてこれを判断基準にする以上、「児童福祉施設という観点から、前年度の所得の低い方から拾い上げて行くという形を取っている」。もっと別の基準などで、申込者の状況を総合的に判断できる方法があれば採用したいが、「客観的」と「総合的」を両立させるのは、非常に難しい。

 聞けば、選考基準については、いろいろな意見が落選者から寄せられているという。収入に関して以外にも、「なぜ祖父母と同居していると不利になるのか」などなど。全員が入園できない以上、どんな選考基準を採用しても、落とされた人間からは不満の声が出る。同市の例ではないが、同点だった場合の基準があいまいな自治体では、「コネが利くのではないか」という古典的疑心暗鬼から、「保育課にお手紙を書けば有利になるらしい」といった都市伝説らしきものまで、さまざまなうわさも飛び交っているらしい。

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