悪質タックル問題 関東学生アメフット連盟による調査結果

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「ハマって」しまった選手

悪質タックル問題の処分について記者会見する関東学生アメフット連盟の柿沢優二理事長(右奥から2人目)ら=2018年5月29日、東京都中央区【時事通信社】

悪質タックル問題の処分について記者会見する関東学生アメフット連盟の柿沢優二理事長(右奥から2人目)ら=2018年5月29日、東京都中央区【時事通信社】

 当該選手は2年時も試合出場機会はあったが、だんだんアメフットが楽しいものではなくなっていった。高校時代に好きだった井上コーチは内田監督の影響でどんどん厳しい、親しみも感じられないコーチに変わっていき、当該選手は寂しさを覚えていった。そんな中、6月に中国で開催される世界大学アメフット選手権のトライアウト(代表選考会)が3月から4月にかけて行われた。当該選手は最終選考を通り、4月25日の最終発表で日本代表に選ばれた。家族や友人にも祝ってもらい、とても誇らしい気持ちになれ、忘れかけていたアメフットの楽しさを思い出すことができたと語っている。

 内田監督は有望な選手を精神的に追い込んで、さらに頑張らせ、もう一歩上のレベルまで向上させるという指導スタイルを好んだ。見込んだ選手、活躍しそうな選手をとらえて全員の前で名指しで酷評し、「結果を出さなければ干すぞ(レギュラーから外して出さないという意味)」と圧力をかけ、ひたすら厳しい練習を課し、時に理不尽とも言える要求をして精神的にも圧力をかける。これが対象者を変えて何度も繰り返されていた。選手たちの間では運悪くこの対象者になってしまうことを「ハマる」と呼んでいた。ハマった時に受ける精神的重圧は相当なものであり、経験した者たちは異口同音に「もう辞めようかと思った」「地獄だった」と思い出している。ハマっても耐え抜いて結果を出した選手の中には「今となってはあれもいい経験だった。強くしてもらった」と内田監督を尊敬する選手もいた。

 18年の春シーズンで対象者に選ばれてしまったのが当該選手だった。ディフェンスコーチへのヒアリングによれば、当該選手は精神的に弱い―これは穏やかで優しいという意味―ので、チームを引っ張る最上級生になる前に鍛えておく必要があるとのことだった。ハマってしまった当該選手はレギュラー陣が行う練習から外され、ただグラウンドを走らされたり声を出させられたりした。練習終了後のハドルで全員の前で名指しで叱責されることもあり、チームメートの目から見てもつらそうな日が続いた。

 ところが、現役時代のポジションも同じディフェンスラインで、一番親密そうに見えた井上コーチはこのハマってしまった当該選手を監督のいじめから守ろうとはせず、むしろそれに輪を掛けて当該選手をより厳しく指導するようになった。こうした精神的重圧から、当該選手は顔つきまで変わってしまったと言う選手もいる。チーム内にはあれはちょっとやり過ぎではないかと思う者もあったそうだ。しかし、内田監督やその意に沿って動いている井上コーチにそんなことを言えるはずもなかった。

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