為替相場の理と奔流~時に「暴走」する市場~

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禁じ手

 円高の素地が市場に認識され始めた16年3月、イエレン米連邦準備制度理事会(FRB)議長が講演で、利上げは緩やかに進める可能性を示唆。円安要因だった日米金利差拡大への期待も薄れたことで、為替相場が円高に大きく傾く要因となった。

 こうした中、米紙とのインタビューで安倍首相が「恣意(しい)的な為替介入は控えるべきだ」と発言。日本の通貨当局は円売り・ドル買いの市場介入に慎重だとの見方が広がった。

 追い打ちをかける形で、米財務省が為替政策の「監視リスト」に日本を初めて指定。「伊勢志摩サミット(主要国首脳会議)が近づく中、政府・日銀の市場介入は簡単ではない」(鈴木健吾・みずほ証券チーフFXストラテジスト)との見方から円高が急速に進んだ。

 日本経済は円高に苦しんだ、かつて来た道を再び歩むのか。それとも、金融緩和という現実が改めて認識され円安に戻るのか。

 いわゆるアベノミクスはここ数年の為替市場や株式市場の動向を大きく左右してきた。マイナス金利という経験したことがない領域にまで踏み込んだだけに、今後、強い副作用が出る可能性も否定できない。そんな大胆な政策を余儀なくされたのはなぜか。遠因は、バブル経済の崩壊にある。

 1990年代初頭のバブル崩壊を受けて日本は、「失われた20年」とも言われる長期間の経済低迷に苦しんだ。

 特に、2000年前後からは物価がほぼ一貫して下落。物価下落が消費の手控えを招き、さらには生産が縮小するという「負のスパイラル」に陥っていた。

 こうした状況に終止符を打つために日銀総裁に指名されたのが、アジア開発銀行総裁だった黒田東彦氏だ。

 黒田氏は総裁に就任すると間髪を入れず、長期国債の保有残高が年間約50兆円増加するペースで購入することを柱とした金融緩和策を打ち出した。物価下落に歯止めをかけ、年率2%の物価上昇を実現するのが目的で、これが実現するまで金融緩和を継続する方針を表明した。

 しかし、50兆円といえば年間の新規国債発行額に匹敵する額で、禁じ手とされる国債の日銀引き受けを市場を通じて行う措置と言えなくもない。

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