為替相場の理と奔流~時に「暴走」する市場~

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先進国から転落

 円高の危機感は庶民の生活からは実感しづらいが、仮に1ドル=100円から1ドル=50円の円高になれば、同じ物を1ドルの同じ値段でアメリカで売ると円換算の売上額は100円から50円に半減してしまう。販売価格を倍に出来ればいいが、米国の消費者はそんなに甘くはない。

 では、日本の人件費や材料費などを半分にできるかといえば、できるはずもなく、手をこまねいていれば会社は立ち行かなくなってしまう。このため、多くの企業が急激な円高に見舞われた1980年代後半から東南アジアや中国に生産をシフトしてコストを下げてきた。

 実際、発展途上国でも生産できる商品を日本で作り続けるのは、人件費が違いすぎることもあって困難になっている。大企業で構成する日本経団連、中小企業の利益を代表する日本商工会議所は、産業空洞化や失業増加の懸念、さらには国際競争力を維持するため、円高是正を政府・日銀に求めるだけでなく、賃金抑制の必要性を訴え始めている。

 グローバル化の進展で国境の垣根が低くなり、企業はどの国にでも生産拠点を移すことが可能。日本で働いているという理由だけで日本人の人件費を高く維持し続けるのは難しくなるだろう。そうは言っても、発展途上国と同じレベルまで日本の労働者の賃金を下げて完全に同じにすれば、日本が発展途上国に後戻りする事態を意味し、先進国から転落する。

 賃金レベルを下げる選択ではなく、今の賃金を維持できる経営を追求するのがあるべき企業トップの姿のはず。新製品や新技術を開発、新たな生産方法も模索して高付加価値の製品を安く世に送り出し、円相場が高くても利益を出せる体質を作りだせない経営者は、失格。これは見落としてはならない大切な視座だ。

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