プラス・マイナス様々な影響が出る為替相場だが、時に国家そのものを揺さぶることさえある。
1992年9月、英国の中央銀行であるイングランド銀行は為替市場への介入で大幅な損失を出して事実上、破産。当時進めていた欧州共通通貨「ユーロ」への参加も見送るという事態に追い込まれている。
当時、英国は欧州各国ともにユーロ導入に向けて為替レートを一定の範囲内に固定する政策を取っていたが、東西ドイツの統合で旧東ドイツへの投資が増える一方、イギリスは低成長にあえいでいた。そんな状況の中で英ポンドが実力以上に高い為替レートで固定されていると考えた投資家ジョージ・ソロス氏は、大規模なポンド売り・マルク買いをしておいて、将来的に安くなったポンドを買い戻せば大きな利益が得られると確信し、実行した。
これに対抗してイングランド銀行は固定相場を維持するため大規模なポンドの買い支えを実施。9月16日にはポンドの魅力を高めて通貨価値を維持しようとの目的で公定歩合を1日で10%から12%、さらに15%にまで引き上げた。それでも為替市場でのポンド売りが収まらない。イングランド銀行は資金が底を突いたため買い支えができなくなり、固定相場を放棄。将来のユーロ参加も見送らざるを得なくなった。
9月16日は先進国の中央銀行が市場に敗れた日として記憶され、ブラック・ウエンズデー(暗黒の水曜日)と後に呼ばれるようになる。
為替レートは常に経済実態を反映するわけでなく、時に全く実情に合致しないレベルまで急激に変動する。経済統計や政治家の不用意な発言などに多くの為替ディーラーが反応して同じ売買注文を一斉に出したりするためだが、長い目で見ればその国の実力に合ったレートに収れんしていくとされる。
政府・中央銀行による市場介入で為替レートを意図的に誘導するのが一時的には可能だとしても、長期間に渡って実態に合わないレートを維持するのが困難なのは、ブラック・ウエンズデーが証明している。
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