為替相場の理と奔流~時に「暴走」する市場~

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喜ばしい円高

 1990年代前半、バブルが崩壊する一方で急激に円高が進んでいた最中、時の日銀総裁は行きつけの居酒屋で酒を飲みながら「今日もまた、日本の評価が上がった」とほくそ笑んでいたという。しかし、公の場では決して本当の気持ちを表に出さなかった。その理由は今も昔も変わらない。「円高不況」に襲われて経営が立ち行かなくなると多くの企業が悲鳴を上げ、巷が騒然としていたからだ。

 米ドルと日本円をいくらで交換するのか。これが言わずと知れた円ドル相場だ。では、ニュースでも日々伝えられる円相場はどうやって決まるのか。為替ディーラーと呼ばれる専門家が市場で円やドルを売買し、取引が成立した値が為替レートとなるのだが、その取引は、各国の政治動向や経済情勢、景気指標など無数の情報を瞬時にディーラーが判断しながら行っている。

 例えば、世界中の誰もが乗りたいと思う車を日本のメーカーが作れば円の交換レートも少しは連動して上がり、品質が落ちて見向きもされなくなれば、下がる。車だけではなく、農産物や観光資源などお金を使って買ったり、楽しんだりする、広い意味での商品すべてが評価の対象。そんな物やサービスなどを外国人がどれくらい欲しがっているか、また日本が海外の国々から何を買いたいか。これらが総合的に判断されて決まるのが、為替レートの本来的な姿で、国の実力を端的に表している。

 北朝鮮の通貨ウォンを誰も欲しがらない理由を考えれば、強い通貨「円」を持つ日本のありがたさが分かるというもので、通貨価値の上昇は本来的には喜ばしいことだ。

 しかし、この相場が円高に振れると経済界から「利益が吹っ飛び、会社が立ちゆかない。産業の空洞化が起きる。円高是正を!」といった悲鳴が必ず聞こえてくる。日本を代表する企業トヨタ自動車は2012年の年明けごろの経営環境だと、1円の円高ドル安で営業利益が320億円吹き飛ぶ計算という。影響度の差はあるが、輸出企業の多くは同じような構図で経営が圧迫されると聞けば、円高に危機感を募らせる層が増える。

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